もっと安心できる中古車業界に! 支払総額表示義務化にかけるJU 中販連の思いを聞いてきた
2023/12/01
中古車は「支払総額」表示に! 自動車公正競争規約・同施行規則が改正
2023年10月、自動車公正競争規約・同施行規則の改正が施行され、中古車販売価格の「支払総額」表示が義務化。一部の中古車販売店による不当な価格表示を是正するため、支払総額を表示せず車両本体価格のみを表示することを禁止した。
さらに、「中古車の支払総額とは車両本体価格と諸費用を足した金額」と定義し、支払総額に含まれるべき費用も明確化。これによって、商談時に不明瞭な諸費用などを請求する不適切な販売行為を未然に防止でき、今まで以上に中古車を安心して購入できるようになった。
自動車公正競争規約・同施行規則の改正は、自動車公正取引協議会(以下、公取協)の主導で行われた。しかし、支払総額表示の実現にはJU中販連(日本中古自動車販売協会連合会)も大きく関わっていたのだ。
JU中販連は公取協の会員団体だが、両団体は中古車業界の健全化・活性化において重要な役割をそれぞれ担っている。具体的には、自公協が自動車販売のルールを策定。JU中販連が環境整備を推進し、販売店にルールの周知と遵守を促してきた。
走行距離の改ざんや修復歴の表示問題などの是正をはじめ、ユーザーが安心して中古車を購入できる基盤を築いたJU中販連。支払総額表示の義務化にも「中古車業界を健全に発展させる」という理念に基づき取り組む。その活動内容や思いについて、JU中販連の海津博会長・理事長に伺った。
支払総額表示の徹底に向き合うJU中販連
「業界の健全な発展が私たちの使命」
そもそも支払総額表示の義務化は、公取協に中古車販売価格の表示ルール改正を要請したことが事の発端でした。
私たちは1971年9月に設立されて以来、自動車公正競争規約の周知・遵守を推進してきました。しかし、一部の販売店による不適切な販売行為が目立つようになってきた。例えば、実際の購入価格より低い金額を広告に表示し、商談時に高額な保証や諸費用を請求するなど、ユーザーとのトラブルが以前より相談されるようになったのです。
私たちJU中販連は会員販売店とともに、不適切な販売行為を問題視。不適切な販売行為の是正には中古車販売での支払総額の表示義務化が有効だと考え、公取協に自動車公正競争規約の改正を求めました。
そうして2020年度から自動車業界全体の合意を求め、公取協を中心に議論が開始されました。規約・規則の改正案の検討・作成に関してもJU中販連のメンバーが参加。支払総額に含まれる諸費用の考え方から「不適切な諸費用とは何か」といった細かいところまで徹底的に議論いたしました。
検討の過程では、公取協による事業者やユーザーへのアンケート調査も実施。ユーザーの約9割が「支払総額を表示した方が良い」と回答し、改めて規約改正の必要性が確認されています。
規約改正によってユーザーは支払総額表示で購入の是非を判断することができるようになり、商談時に後から不明瞭な諸費用や強制オプションを請求されることを未然に防止できる。
そのような過程を経て改正規約は完成しましたが、大切なのは中古車販売店への周知徹底。JU中販連は会員販売店に対する周知徹底を担い、施行されるまでの移行期間に様々な活動を行いました。
例えば、事業者によって認識が異なることがないように、全国各地で規約改正に関する研修会を開催。販売店の反応は様々でしたが、支払総額の意義を伝えることで納得していただきました。
また、中古車1台1台に掲げるプライスボードも支払総額表示への切り替えが必要となるため、展示台数が多い販売店では非常に手間がかかる。そこで、プライスボードの移行が円滑に行えるようなサポートもしました。
新聞広告や動画投稿など、ユーザーへの周知活動に注力しています。まずは、中古車販売価格の表示ルールが変更されたことを知ってもらうことが重要。特に現在は、販売店を訪れたユーザーに認識してもらうことが大切です。
これまで車両価格を表示していた販売店の場合、支払総額に表示を切り替えたことで「価格が上がった」と誤解を招く恐れがあるからです。その対策として、JU中販連では支払総額への表示変更を伝える「のぼり」を作成し、会員販売店の店頭で掲げてもらえるように展開しました。
さらに、今後はユーザーに対する支払総額表示への認知拡大を推進していきたいと考えています。今回の改正によって価格の表示は統一されましたが、売り方まで統一されたわけではない。つまり、ユーザー自身が支払総額に含まれる費用を確認する必要があるのです。
そのためには「保証が付いているのか? 点検整備は含まれているのか?」など、ユーザーが確認をしなければならないポイントをきちんと伝えていかなければなりません。私たちJU中販連の使命は、公平公正な競争環境の構築とユーザーの利益保護を通じた「業界の健全な発展」。支払総額の表示義務化は、その一環なのです。
引き続きユーザーが安心して中古車を購入できる環境づくりに邁進していきますが、今後は高度化する自動車への対応が必要となってくるでしょう。
すでに新型車では衝突被害軽減ブレーキが義務化され、先進運転支援システムを搭載する中古車はますます増加。同システムの点検・整備は必須で、実際2024年10月から自動運転技術などの電子装置の不具合を調べる「OBD車検」も開始されます。
ユーザーのOBD検査に対する関心が高まっていくことが想像される一方で、中古車の点検・整備の高度化も求められる。ただ、中古車業界ではすべての販売店が整備を行っているわけではありません。だからこそ、販売店が車を売る側の責任を果たせるよう、JU中販連はユーザーの「安全」を守るための取り組みを続けていきたいと思っています。
中古車を安心して購入できる取り組みを実施!
「中古車=不安」と決めつけないで
中古車販売店に対する、ネガティブな評判や事例やウワサはゼロではない。しかし、中古車業界にはJU中販連のように「ユーザーがカーライフを安心して送れるようにしたい」と日々活動する団体がいるのも、また事実だ。
加えて、昨今では自動車自体の機能向上も相まって、流通する中古車の品質も良くなっている。もし中古車に興味を持ちながらも不安を感じて二の足を踏んでいるなら、総額表示の義務化によって安心感が増した今こそ、購入に向けて一歩踏み出してみてはいかがだろうか。