【試乗】新型ホンダ NSX|日本メーカーが生んだ稀有なスポーツカーの完全成熟モデル
2022/09/11
細かなアップデートを繰り返し行う
日本の自動車メーカーにおいて、本気で作られたスーパーカーは数えるほどしかない。私の考えるスーパーカーは、シャシーから専用に設計されたモデルだ。
そうなると、あてはまるのはレクサス LFAとホンダ NSXということになる。
LFAは量産という位置づけだが、実質ハンドメイドによる生産限定である。一方のNSXは、専用工場を作って年間1500台の生産をしている。
残念ながら2022年をもって生産が終了してしまうが、生産規模、パフォーマンス、デザインを考えればイノベーションあるスーパーカーを生産していたことになる。
2代目NSXには日本で発売された年に神奈川県・箱根周辺で試乗したが、その後、着実に改良が加えられていた。
今回、この米国で生産されていたが和製スーパーカーを試乗するのも最後かと思い、数日お借りしてドライビングの真髄を確かめたく500kmほど試乗したのでお伝えしたい。
心揺さぶるエンジン音
今回試乗したモデルは2019年にアップデートした仕様であることをご了承願いたい。NSXは3.5L V型6気筒ツインターボを搭載して、3つのモーターによりトルクベクタリングされてロードホールディングするシステムを採用しているのはご存じであろう。
しかも、このV6ユニットのシリンダーヘッドとブロックの生産と設計の一部は、レーシングエンジンで有名な名門コスワース製である。ターボを搭載する観点から、素材や燃焼室、鋳造のノウハウに長けているコスワースに依頼したのだと想像がつく。
また、加工精度が高いのは言うまでもないが、切削加工のCNCは日本製であることは誇りを感じる部分であろう。
話はそれてしまったが、発売当時よりも2019年以降のモデルはロール剛性を向上させ、ブッシュ類も20%以上剛性を向上させて、路面とのコンタクトをより確実なものにしているという。
乗り込むと、この低い目線は紛れもなくスーパーカーである。見切りが非常に良く我が家の広いとは言えないガレージにもすんなりと出入りできる。
そして何よりもいいのがチューニングされたエンジンの音色だ。バランスが取れた燃焼室から奏でるハーモニックな音はV型6気筒であっても素晴らしい音色である。これは日産 GT-Rにも共通して言えることかもしれない。
環状8号線を走り第三京浜に向かう。路面の追従性が非常によくバランスが取れている。乗り心地もいい。
あいにくの雨であるが、アクセルに足を乗せて負荷をかけていれば高速でのわだちの水たまりでも安定性を崩さない。それだけ緻密なコントロールをしているということであろう。
目的地は山梨県の小淵沢である。少し長く乗りたいので第三京浜から首都高速K7を走り東名高速、圏央道、中央道を走るルートだ。
モーターとの共演する素晴らしいエンジンの音色と加速が、異次元の演出を一層引き立たせる。
ロードをかけながら回る高速コーナーのコンタクトは抜群だ。しかも上り勾配でもフロントの接地感に迷いがないコンタクトで、安心感はアップデート前よりも増している。
出力の特性も違うようで、よりグランツーリスモ感がある。中央道の路面はお世辞にもいいとは言えないが、細かなアンジュレーションでもサスペンションはしなやかでいて剛性が高い。小淵沢のワインディングは地をはうにふさわしいパフォーマンスだ。
シビックe-HEVの試乗会が現地で行われていたのだが、それを終えてNSXで東京に向かうタッチ&ゴーの過密スケジュールでも一切疲れを感じさせない。発売当時よりも厚みをもった乗り味へと進化した。
最後に燃費を見て驚いた。トータルで10.8㎞/Lである。スーパーカーとしてのパフォーマンスを考えれば素晴らしい燃費である。市街地から始まりワインディング、高速と走らせた結果である。
今後どういう形でホンダの新たなNSXができるかはわからない。しかし、築いたノウハウは決して絶やすことはないと願っている。そして、新たなNSXの異次元のアプローチを期待する。
【試乗車 諸元・スペック表】
●3.5 4WD
型式 | CAA-NC1 | 最小回転半径 | 5.9m |
---|---|---|---|
駆動方式 | 4WD | 全長×全幅×全高 | 4.49m×1.94m×1.22m |
ドア数 | 2 | ホイールベース | 2.63m |
ミッション | 9AT | 前トレッド/後トレッド | 1.66m/1.62m |
AI-SHIFT | - | 室内(全長×全幅×全高) | 0.97m×1.53m×1.05m |
4WS | - | 車両重量 | 1800kg |
シート列数 | 1 | 最大積載量 | -kg |
乗車定員 | 2名 | 車両総重量 | -kg |
ミッション位置 | コラム | 最低地上高 | 0.11m |
マニュアルモード | ◯ | ||
標準色 |
クルバレッド、ベルリナブラック、130Rホワイト、サーマルオレンジ・パール |
||
オプション色 |
ソースシルバー・メタリック、カジノホワイト・パール、バレンシアレッド・パール、ヌーベルブルー・パール |
||
掲載コメント |
- |
エンジン型式 | JNC |
---|---|
種類 | V型6気筒DOHC |
過給器 | ターボ |
可変気筒装置 | - |
総排気量 | 3492cc |
最高出力 | 507ps |
最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
550(56.1)/6000 |
環境対策エンジン | H17年基準 ☆☆☆ |
使用燃料 | ハイオク |
燃料タンク容量 | 59リットル |
燃費(JC08モード) | 12.4km/L |
燃費(WLTCモード) | -km/L |
燃費基準達成 | H27年度燃費基準 +10%達成車 |
エンジン型式 | JNC | 環境対策エンジン | H17年基準 ☆☆☆ |
---|---|---|---|
種類 | V型6気筒DOHC | 使用燃料 | ハイオク |
過給器 | ターボ | 燃料タンク容量 | 59リットル |
可変気筒装置 | - | 燃費(JC08モード) | 12.4km/L |
総排気量 | 3492cc | 燃費(WLTCモード) | - |
燃費基準達成 | H27年度燃費基準 +10%達成車 |
||
最高出力 | 507ps | 最大トルク/回転数 n・m(kg・m)/rpm |
550(56.1)/6000 |
エンジン型式 | JNC |
---|---|
種類 | V型6気筒DOHC |
過給器 | ターボ |
可変気筒装置 | - |
総排気量 | 3492cc |
最高出力 | 507ps |
最大トルク/ 回転数n・m(kg・m)/rpm |
550(56.1)/6000 |
環境対策エンジン | H17年基準 ☆☆☆ |
使用燃料 | ハイオク |
燃料タンク容量 | 59リットル |
燃費(JC08モード) | 12.4km/L |
燃費(WLTCモード) | -km/L |
燃費基準達成 | H27年度燃費基準 +10%達成車 |
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。