磨耗タイヤの危険性
JAF(一般社団法人日本自動車連盟 会長 小栗七生)ではこのたび、ゲリラ豪雨や梅雨、台風といった降雨シーズンを目前に、「磨耗タイヤの危険性」をテーマとするユーザーテストを実施。その検証動画を5月15日(金)よりJAFのWebサイトにて公開し、ドライバーに注意を呼びかけています。

4タイプのタイヤ

今回のテストでは、同じサイズの4タイプのタイヤを使用(右図)。ノーマルタイヤは①新品(溝の深さ・約7.6mm) ②5分山タイヤ(同・約4.7mm) ③2分山タイヤ(同・約3.1mm)の3種類で、いずれも法律で定められたタイヤの使用限度(溝1.6mm)に至っていない3種類を用意。さらに、冬用タイヤの使用限度を示すプラットホームは出ているものの、夏用としては使用可とされる④5分山スタッドレスタイヤ(同・約4.5mm)を対象に加え、ドライ・ウェットの両路面においてテストしました。

まず実施した「直線ブレーキテスト」では、時速60km(一般道を想定)と時速100km(高速道路を想定)の速度で、それぞれ異なるタイヤ/路面状態における制動距離(ブレーキが利き始めてから車が停止するまでの距離)の変化がどのように出るか、測定・検証しました。

■ 「使用可」であっても、要注意!!「速度」と「雨」がさらに高める「磨耗タイヤの危険性」
磨耗タイヤの危険性

その結果、①新品ノーマルタイヤおよび②5分山ノーマルタイヤで時速60km走行した場合では、ドライ・ウェット路面ともに、制動距離に大きな差は見られませんでした。しかし、③2分山ノーマルタイヤと、夏用として使用可とされる④5分山スタッドレスタイヤでは、制動距離は大きく変化。特に、時速100kmのウェット路面でテストした場合、③2分山ノーマルタイヤはドライ路面のテスト結果の約1.7倍、④5分山スタッドレスタイヤでは約1.4倍の制動距離を測定しました(左図)。


同様に、時速60kmで半径20m円に進入、カーブに沿ってハンドルを切りながらブレーキを踏む「旋回ブレーキテスト」でも、ウェット路面においては③2分山ノーマルタイヤと④5分山スタッドレスタイヤには、制動距離と右側への膨らみ量が大きく見られました。

このことから、法律で基準値内とされる磨耗度であっても、雨天時の路面では、速度が上がるにつれてハイドロプレーニング現象(*下注参照)が発生しやすくなると考えられます。

普段、市街地などの一般道のみ走行しているドライバーの場合、なかなかこのような磨耗タイヤの危険性に気付けない可能性もあるので、注意が必要です。


一方、スタッドレスタイヤの場合、路面のドライ・ウェットな状態にかかわらず、ノーマルタイヤよりも制動距離が長いというテスト結果が出ました。これは、スタッドレスタイヤの特性であるゴムの柔らかさが影響しているものと考えられます。
「スタッドレスタイヤの履きつぶし」が増え、その安全性も問われています。夏用として使用可とされるスタッドレスタイヤであっても、タイヤの特性などをよく理解した上で、速度を抑えたり、早めのブレーキ操作を心がけたりするなど、天候・気温・路面状況に応じた安全な運転を心がけてください。

JAFでは今回の結果を踏まえて、タイヤチェックの重要性と、磨耗タイヤの危険性、スタッドレスタイヤの乾燥路面での注意点を広く周知するとともに、今後も、社会のニーズに即したテーマでユーザーテストを実施し、情報提供を行ってまいります。


◆ 今回のユーザーテストの動画および詳しい結果・資料は、JAFのWebサイト「交通安全とエコ」「JAFユーザーテスト」(URL下記)からご覧いただけます!!


JAF「ユーザーテスト」

●動画編:http://ch.jafevent.jp/detail.php?id=347
●資料編:http://www.jaf.or.jp/eco-safety/safety/usertest/baldtire/detail1.htm


* ハイドロプレーニング現象とは・・・
タイヤと路面の間に水が入り込み、タイヤが路面に接触しなくなることで、車が水の上を滑り、ブレーキやハンドル操作が利かなくなる現象。スピンなどを起こす危険性が高い。