頭文字D▲2025年10月20日発売のカーセンサー12月号。「頭文字D購入催促伝説」と題して、名だたる作中車たちの中古車の今を紹介中!

頭文字Dファンたちよ、ガチで作中車を手に入れてみたくはないか!?

日本のみならず、世界中の車好きに絶大な影響を与え続けている公道バトル漫画『頭文字D』。

2025年は原作漫画の連載開始から30周年という節目の年。カーセンサー本誌ではこれを記念し、作中に登場した多彩な名車を紹介している。

ただし、主人公・藤原拓海の愛車AE86をはじめ、“イニD”で活躍した一部の1980年代から1990年代にかけてのスポーツ車種は、主に海外で熱狂的な人気となっている日本車文化の「JDM」や「ヤングタイマー」といった観点からも人気が高く、容易に手が出せないほど価格が高騰しているのが実情だ。

AE86▲“ハチロク”は今や超お宝級の車となり、悲しいことに現実的に走って遊べる車ではなくなっている……

作中では、若者たちがこれらの車を思いきり走らせているが、連載当時の現実もそれに近かった。(思いっきり余談になってしまうが筆者も18歳でEF3型シビックに乗っていたし、周囲の友達もAE86、S13シルビア、180SX、FCサバンナRX-7といった車を安く買っては乗り回していた。さすがにGT-Rは別格ではあったが、今ほど珍しい存在ではなかった)

そんな当時の空気を知る世代にとっては、現在の価格高騰はノスタルジーだけでは乗り越えられない高い壁であり、相当の思い入れがないと手は出せないだろう。もちろん、当時を知らない若者にとっても絶対的に高価であることに変わりはない。

そこで本稿では、作品登場車の中でも比較的現実的な価格で入手できる5モデルに焦点を当てて紹介する。

拓海のAE86や高橋兄弟のRX-7ほどの象徴性はないかもしれないが、スポーツカー本来の「走る楽しさ」をローコストで気兼ねなく味わえるという点で、現代においては、むしろこれらの車種こそ当時の「ハチロク」の立ち位置に近い存在といえるかもしれない。

頭文字Dの世界を感じられる作中車に、今こそ乗ってみるべきではないだろうか!?

 

買える作中車① 庶民の味方|マツダ ロードスター(NB型)

はじめに紹介するのは、プロジェクトDの前に立ちはだかった「チーム246」のリーダー、大宮の愛車、2代目マツダ ロードスター(NB型)だ。

ロードスター▲いつの時代も庶民の味方、ロードスターもイニDに出演していた

「運転を楽しむための車」、すなわちスポーツカーとは、乗用車のパワートレインを軽量な2座オープンボディに載せた、手頃な価格の車として英国で誕生したものだ。

マツダ ロードスターは、モータリゼーションの発展とともに華美で高価になっていったスポーツカーの本質を見つめ直し、「大衆のためのスポーツカー」として1989年に登場。若者を中心に爆発的なヒットを記録した。

ロードスター▲こちらは限定販売の「MVリミテッド」の内装。スポーツカーといえど、ファッション感覚でも楽しめそうなデザインが特徴

『頭文字D』作中でもそうした背景がうまく取り入れられている。大宮は、ランニングコストが安く、リーズナブルに維持できるという理由から、大排気量ターボ車ではなく、自然吸気(NA)エンジン搭載のFR車、NB型ロードスターを愛車にしている設定なのだ。

ロードスターの魅力のひとつは、新車販売台数の多さに裏打ちされた中古車市場での豊富な流通台数。生産終了からすでに20年近くたつ現在でも170台以上が流通し、価格も安定傾向。

部品供給も同年代の他のモデルと比べてはるかに良好だ。流通量が多いということは、そこに市場があるということ。したがってサードパーティー製の代替部品もエンジンの内部部品から幌まで、数多く販売されている。

難点といえば他人と「かぶる」ぐらいのものだが、ロードスターの真価は人と車が一体になって走る楽しさにある。もちろんMTであれば、その魅力はより堪能できるだろう

エンジンは1.6Lと1.8Lがあるが、年式的にはすでに旧車の域。買うときはグレードより状態を重視

ロードスター▲こちらは1.6L DOHCエンジン 「NR-A」

モデルの特性上、マフラーや車高調などチューニング済みの個体が多いのは仕方ないが、優れたバランスが身上のピュアスポーツカーなので、なるべくノーマルに近い個体を選びたい

▼検索条件

マツダ ロードスター(2代目)
 

買える作中車② 現実的な軽快ミッドシップ|トヨタ MR-S

MR-S▲軽快な走りときびきびとした小回りの良さが魅力的な1台だ

幼少期からカートレースによる英才教育を受けて育った小柏カイが、プロレーサーとして再び拓海と対峙した際に駆っていたのが、このトヨタ MR‐Sだ。

作中での印象は、初登場時に彼が乗っていたMR2の方が強いかもしれない。しかし、いま中古車を入手するなら、2007年まで生産されていた後継モデルのMR‐Sの方が手を出しやすい。

いちおう説明しておくと、MR‐Sが採用するミッドシップレイアウトは、車体の中央付近に重量のあるエンジンを配置することで、優れた旋回性能と高いトラクション(ひいては加速性能)を実現する。

その一方で、限界域での挙動がナーバスになりやすいという弱点もあるが、レーシングカートでミッドシップ特有の挙動を知り尽くしている小柏カイは、抜群のマシンコントロールでその特性を武器にし、拓海を追い詰めた。

MR‐Sは1.8Lの自然吸気エンジンを搭載し、車重を約1tに抑えた小型軽量なオープン2シーター。その軽快なハンドリングは街中のカーブをひとつ曲がるだけでも体感できる。

MR-S▲シートはサポート性が高いスポーツシート。屋根を開けた際のイメージはこんな感じ

運転の楽しさをとことん追求した純粋なスポーツカーの中古車がいまも150台以上の登録台数を誇り、100万円以下から選べるというのは、世界的に見ても極めて恵まれた状況といえる。手に入れたいと思うなら早めの決断が賢明だ。

2ペダルMT(当時)仕様は壊れると高くつくものの、全体的にMTより相場が安いのでここは考え方次第。ひとつ注意したいのは、MR‐Sにはまともな荷室がほとんどない点。

先に紹介したNB型ロードスターには、2人分の小旅行程度の荷物を収められるトランクスペースがあるため、使い方やライフスタイルによってはこの違いが大きなネックになるかもしれない。

MR-S▲こちらが荷室として使用できるスペース。スペアタイヤ1本分が収まり、小さめのバッグであれば収納可能

▼検索条件

トヨタ MR-S(初代)
 

買える作中車③ まだ手が伸ばせる高性能スポーツ|日産 フェアレディZ(Z33)

フェアレディZ▲フェアレディZといったら同時期に同じ雑誌で連載されていたライバル作品のイメージもあるが、頭文字Dでも活躍した

頭文字DでのフェアレディZを愛車とするのは、箱根を本拠地にする「チーム・スパイラル」のリーダー、池田竜次。このZ33が渋い役どころを演じている。

実家がお寺という異色のバックグラウンドをもち、「よくできた車は意思をもっていてドライバーに何をすべきか教えてくれる。したがって感情を“無”にして車の意思のとおりに走らせることが肝要」という独自のドライビング哲学「ゼロ理論」を唱える人物だ。

フェアレディZ▲ちなみに、フェアレディZのトランクルームは2人分の小旅行分くらいであれば積載可能なスペースがある

もちろん、その理論の提唱者である池田のZも、意思を宿した車であるに違いない。高橋啓介とヒルクライムステージでバトルを繰り広げたことからも分かるようにZ33は自然吸気の3.5ℓ V6エンジンによるトルクフルな走りがもち味のFRスポーツ。

タマ数は240台オーバーと豊富で価格がこなれており、MTだけに絞っても100台以上の売り物がある。ただし相場はATの方がかなり安く、チューニングされた個体も少ない。

わずかだが1年保証付きのディーラー認定中古車も100万円そこそこで販売されているなど狙い目だ。なお、池田と同じレッドの車体色のMTは今では希少な仕様になっている。

フェアレディZ

▼検索条件

日産 フェアレディZ(Z33)
 

買える作中車④ 走らせて楽しいお手頃スポーツ|スズキ カプチーノ

カプチーノ▲今回ご紹介する中では唯一の軽自動車、カプチーノ。小回りと俊敏さはバッチリだ

作中で「坂本」という苗字だけで登場したキャラクターの愛車ながら、強烈な印象を残したのが、スズキ カプチーノ。

卓越したコーナリングスピードを誇る拓海を峠で打ち破るには、より小型で軽量なマシンで挑むしかない――そんな発想から投入されたスペシャルウェポンだった。

実際、このカプチーノは軽自動車の枠を超えた本格的なFRスポーツカーだ。完全専用設計のボディに同時代のアルトワークス用に開発された3気筒DOHCインタクーラー付きターボエンジンを縦置きに搭載。

足回りには前後ダブルウィッシュボーンサスペンションを奢るという、スズキの本気がみなぎる構成だった。

ちなみに、これは1998年の軽自動車規格改定前のモデルで、後に登場するホンダ S660と比べてもひと回りコンパクトで、しかも100kg以上も軽い。まさに現代では二度と作れない車といえる存在だ。

カプチーノ▲ボディサイズは全長3295mm×全幅1395mm×全高1185mm。車重はわずか700kgと超軽量だ。

ただし、生産終了からすでに約30年が経過した古い軽自動車であり、しかも高出力ターボを搭載しているだけに、ここで紹介しているモデルの中では中古車選びが最もリスキーといっていい。現在でも100台以上の流通があるが、穴が開くような腐食がないかはよくチェックしたいところ。

走行距離は多くて当然なので気にせず、現車のコンディションやチューニング内容を優先したい。現代の車のように乗りっぱなしで維持することはまずできないはずなので、本車に精通したショップもチェックしておこう。

▼検索条件

スズキ カプチーノ(初代)
 

買える作中車⑤ ちょっと予算を背伸びして! |ホンダ S2000

S2000▲予算に少し余裕がありつつ、現実的なモデルを攻めるなら……この車で決まり!

ワンハンドでステアリングを操る独自の走法から「ゴッドアーム」の異名をとる中年ドライバー、城島俊也。彼が駆る愛車がホンダ S2000だ。筑波山をホームとするチーム「パープルシャドウ」のリーダーであり、『頭文字D』全編を通しても屈指の強豪ドライバーとして強い印象を残した。

S2000は、ホンダとしてはS800以来となるFRスポーツであり、自然吸気ながら最高出力250ps/8300rpmを発揮。

S2000

しかも9000rpmまで常用できる超高回転型エンジン(2005年式までの2.0Lモデル)を搭載していた。さらに、当時のクローズドボディを凌駕する高剛性を実現した「ハイXボーンフレーム構造」を採用するなど、ホンダ創立50周年記念モデルにふさわしい技術の粋が注がれている。

一方で、デザインはやや無個性と評され、オープンボディでありながらMT専用という硬派な仕様も相まって、当時の新車販売は伸び悩んだ。しかし、中古車市場では登録台数は200台以上と比較的多いにもかかわらず、平均価格は当時の新車価格を上回るほどに高騰している。

作中に登場したのと同じ2.0Lエンジンを搭載するAP1型で、ブルーパールのボディカラーとなると、現在市場に流通しているのはわずか5~6台程度となる。

▼検索条件

ホンダ S2000(初代)
文/佐藤旅宇 写真/日産、トヨタ、マツダ、スズキ、ホンダ
佐藤旅宇

インタビュアー

佐藤旅宇

オートバイ専門誌や自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30と日産ラルゴ・ハイウェイスターの他、バイク2台とたくさんの自転車。この2年で5台の車を購入する中古車マニア。