T-WEST▲多くの車好きの憧れであるフェラーリ。価格もさることながら、維持費も気になるところ。そこで、フェラーリを「現実的なコスト」で維持していけるのか? について、フェラーリ専門店「T-WEST」の代表、小塚義巳さんに聞いた

個体差はあるものの要所を押さえたメンテナンス次第

「自動車を愛好するすべての者」と書くと主語が大きすぎになってしまうが、自動車を愛好する「多くの者」にとっての憧れではある、フェラーリという車。しかしフェラーリは同時に、「その維持費はいくらぐらいになのか?」という部分が大いに気になってしまう存在でもある。

フェラーリの各モデルを「現実的なコスト」にて養っていくことは、果たして可能なのだろうか? フェラーリ用部品の卸会社としてスタートし、いつしか中部エリア最大級のフェラーリ専門店および専門ファクトリーとなっていった「T-WEST」の代表、小塚義巳さんに聞いた。
 

T-WEST▲中部エリア最大級のフェラーリ専門店および専門ファクトリーの「T-WEST」。今回は代表の小塚氏にフェラーリを無理なく楽しむためのリアルな視点を語ってもらった

「『フェラーリの維持コストは実際のところ、いくらぐらいなのか?』というご質問はしばしば頂戴します。しかしそれにお答えするのは、あまりにもケースバイケースゆえに難しいというのが正直なところです」と、小塚さんは言う。

「例えば1990年代のモデルであっても、つまりF355や512TRなどであっても、整備の手がしっかり入っている個体であれば、せいぜいエンジンオイルとフィルターを定期交換するぐらいで普通に維持できてしまうケースもあります。しかしまったく手が入っていなかった個体の場合は、それこそ莫大な金額がかかってしまうこともある。それゆえ『いくらぐらい』という金額を、一般論として明示するのは困難なのです」

とはいえ、フェラーリのような車は「壊れるのはだいたいココ」と、おおむね決まっている。そのため、そういった箇所の部品が前オーナーによってしっかり交換されている個体であれば、その後どこか別の箇所が経年劣化で壊れるとしても、次回車検までの2年間ででかかるコストは「50万~100万円ぐらいで済むイメージでしょう」とも小塚さんは言う。

またT-WESTの場合はそもそも部品の卸会社であるため、フェラーリのメンテナンスを行う際の部品代は、一般価格と比べて2~3割は確実に安く済むとも言う。

そして488GTBなどの新しい世代については、「初期に発生したほとんどのトラブルは、正規ディーラーにてクレームとしてすでに解決されています。そのためあと5年ぐらいは、つまり2030年ぐらいまでは、さほどのお金をかけずに維持できることでしょう。もっとも、2030年以降については少々心配ですが」とのこと。
 

T-WEST▲2025年7月に一新されたショールームとファクトリー。現行からクラシックモデルまで幅広く対応する
T-WEST▲T-WESTは部品の卸会社でもあるため、豊富なフェラーリ専用パーツを在庫している

2年間で50万~100万円程度の整備費用は必要だが……

つまり結論としてはこういうことだ。

F355や512TRなどの1990年代系名車の場合は、整備の手がしっかり入ってきた個体だけを狙うようにする。そうでなければ458イタリアや488GTBなどの、比較的新しい世代を狙う。そうすればフェラーリであっても、いわゆる莫大な整備費用がかかることはほとんどない。しかしその場合でも2年間で50万~100万円ほどの整備費用は、どうしたって用意しておく必要がある――というのが、新旧フェラーリの維持費に関する実相であるようだ。

一般的なブランドの一般的なセダンやSUVなどを購入した場合、その個体が新車か、あるいはマトモな中古車であったならば、2年間で50万~100万円ものメンテナンス費用がかかる可能性はきわめて低い。その意味で、フェラーリの維持費は「やっぱり高い」ということになるのだろう。

しかしその一方で、一般的なブランドの一般的なセダンやSUVなどが、たかだか2~3年間ほどで100万円、200万円とリセール価格を大きく目減りさせていく場合も多いのに対し、フェラーリのそれはほぼ目減りしない。もちろんこれもケースバイケースではあるのだが、フェラーリという車は、購入価格とさほど変わらない価格で売却できることが多いものだ(時には、買った金額以上で売れる場合もある)。

そこを加味して考えるのであれば、コンディションの良いネオクラシック系または新しめな年式のフェラーリの維持費は「意外と安い」というか、「トータルコストは一般的な車種とおおむね同程度」と見ることもできるのだろう。
 

フェラーリ F355▲3.5L V8エンジンを搭載した、1994年発表の2シーターミッドシップスポーツ「F355」。ピニンファリーナがデザインを担当した。1997年にはセミATのF1マチックも設定されている

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フェラーリ F355
フェラーリ 512TR▲テスタロッサの発展型として1992年に発表された、5L V12エンジンをリアミッドに搭載するフラッグシップスポーツ「512TR」

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フェラーリ 512TR
フェラーリ 458イタリア▲F430の後継として2009年に発表された、フェラーリでV8自然吸気エンジンを搭載する最後の2シーターミッドシップスポーツ「458イタリア」

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フェラーリ 458イタリア
フェラーリ 488GTB▲3.9L V8ターボエンジンを搭載する、2015年発表の2シーターミッドシップ「488GTB」。フェラーリ スタイリングセンターがデザインを手がけたエクステリアは空力が大幅に向上している

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フェラーリ 488GTB
文/伊達軍曹、写真/タナカヒデヒロ、フェラーリ