トヨタ ランドクルーザー300(現行型)▲大迫力のボディはランクルがもつ魅力のひとつではあるが、日常使いするにはさすがに不便。もう少しコンパクトだったなら……

最新型ランクル300は魅力的だけど、さすがにデカすぎる?

私が自動車業界に足を踏み入れた頃、「いつかはランクル」というフレーズがあった。今どんな車に乗っていたとしても、いつかはランドクルーザーに乗ってみたいよね、という意味だ。

ランドクルーザーはそれほど非の打ちどころがなく、完成された車だった。悪路走破性の高さはもとより、四角いボディから醸し出される迫力、内装の高級感に至るまで、まさに完璧。そうした特徴は当時も今も変わっていない。その分、他の四駆に比べて価格もずば抜けて高かった(その点でも変わっていない)が、当時はバブルの残り香がまだあり、いつかランクルを買えるだろう、と本気で思っていた。

それからン十年。いまだランクルを所有したことは一度もない……。価格はもちろん大きな理由のひとつなのだが(ちなみに最新型の新車価格は510万~800万円)、それ以上にボディサイズの問題が大きい。もちろん、ランドクルーザーは80系の時代からすでに十分大きかったが、それでも全幅1800mm前後のナローボディが残されていて、まだどうにかなった。

100系以降ではさらに巨大化し、現行型の300にいたっては全長5m、全幅2mに迫るビッグボディ。こうなると狭い路地裏の通行に難儀するし、自宅の駐車場にも入らない。同様の理由でランクルを諦めた人は少なくないだろう。

そこで今回は「ランクルには憧れるけれど、さすがに大きすぎる」という人に向けて、もう少し小さいサイズ、具体的には全長4800mm×全幅1900mm以下くらいで、ランクル300にも負けない満足感を得られそうなモデルを探してみることにしよう。

ランクルと全く同じ価値、というわけにはいかないかもしれないが、「視点を変えて、こんなチョイスもありかも」と思ってもらえたら幸いだ。

トヨタ ランドクルーザー300(現行型) ▲ランクル最大の長所と言えば、悪路走破性の高さだ。その点では肩を並べるモデルも……
 

代替案1|レクサス NX(2代目・現行型)
ボディサイズ:全長4660mm×全幅1865mm×全高1660−1675mm

ランクル300はその高級感も魅力のひとつだが、車に高級感やおもてなし感を求めるなら、レクサスという選択肢もありでは? NXはレクサスのクロスオーバーSUVの中で、ボディサイズ的にも価格的にも中間に位置するモデルだ。

その特徴は流麗なスタイルと「Tazuna Concept(タヅナ・コンセプト)」と題されたドライバーオリエンテッドな車内空間、高級感あふれる内装、クーペライクな走りにある。

レクサス NX(現行型) ▲ボディサイズでは兄貴分のRXよりもかなりコンパクト。それでも高級感はさすがのレクサス・クオリティだ

ハンズフリーで開閉できるバックドア、電動可倒式リアシートなど利便性の高い装備も充実。このあたりはさすがのランクル300もかなわないところだろう。

2.5Lガソリンの「250」、2.4Lガソリンターボの「350」、ハイブリッドの「350h」、プラグインハイブリッドの「450h+」とパワーユニットのバリエーションが豊富なのも特徴のひとつ。

シティ感が強いNXだが、ランクルのようなアウトドア感を求めるなら、2024年に追加された「オーバートレイル」を狙うのもあり。オフロードに適した18インチオールテレインタイヤと、標準仕様より高い最低地上高により、悪路走破性が高まっている。

ちなみに、NXの新車は2025年6月で生産終了されることが公表されている。フルモデルチェンジから4年経たずして……というのは、ちょっとタイミングが早すぎる気も。
 

レクサス NX(現行型) ▲こちらはアウトドアテイストが強められたオーバートレイル

もちろん、中古車なら何の心配もいらない。中古車市場には400台を超えるNXが流通している。中古車平均価格は600万円強だ。

パワーユニット別ではハイブリッドの「350h」が圧倒的に多く、中でもスポーティなサスセッティングとなる「Fスポーツ」の割合が高い。

例えば2023年式・走行距離0.7万kmの「350h Fスポーツ」なら総額618万円。ランクル300を検討していた人にとってはリーズナブルな価格と言えるかも!?
 

レクサス NX(現行型) ▲ドライバーを包み込むようにデザインされたスポーティなインテリア

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代替案2|ジャガー Eペイス(初代・現行型)
ボディサイズ:全長4410mm×全幅1900mm×全高1650mm

同じく、ランクル300の高級感に魅力を感じるなら、ジャガー Eペイス(初代)はいかがだろう? 高級スポーツカー&サルーンカーのブランドであるジャガーのクロスオーバーSUVだ。

ボディサイズは全長4410mm×全幅1900mmのショート&ワイドなスタイル。車重は2t近くあるが、その走りは全く重さを感じさせず、スポーツカーに極めて近い。オフロード性能についてはほぼ考慮されていないが、その一方でランクルとは全く異なる刺激的なスポーツドライビングを堪能できることは間違いない。
 

ジャガー Eペイス(現行型) ▲外観はジャガーのスポーツカーそのままのイメージとなるEペイス。全幅は広めだが、全長が短いことで小回りも利く

搭載されるパワーユニットは2L ガソリンターボと2Lディーゼルターボで、ガソリンエンジンには最高出力249ps版と200ps版がある。Eペイス(初代)がデビューしたのは2018年2月で外観は大きく変わっていないが、実は2021年2月の変更でプラットフォームが刷新されており、中身は別ものとなっている。

また、その変更でディーゼルがマイルドハイブリッド化するとともに、プラグインハイブリッド・モデルが追加された。そうした先進性もまた魅力のひとつだ。
 

ジャガー Eペイス(現行型) ▲荷室容量などは競合車種と比較しても優秀。意外に実用性も高い

Eペイス(初代)の新車価格帯は498万~752万円と、意外にもランクル300と近い。その一方で、ランクル300の中古車平均価格が1000万円を超えているのに対して、Eペイス(初代)のそれは290万円台。

デビューした時期が早く、中古車市場での物件がデビュー直後の年式に集中している影響はあるが、それにしてもお買い得感が高い。

中古車市場での流通量はおよそ90台で、ガソリンとディーゼルの割合は半々というところ。例えば2019年式・走行距離2.5万kmの「D180(ディーゼルターボ)」なら総額260.1万円。後期型でも総額360万円前後から狙える。
 

ジャガー Eペイス(現行型) ▲シフトノブにはクリケットのボールを模したステッチが施されるなど、随所に英国風味が感じられる

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代替案3|ランドローバー ディフェンダー(2代目)
ボディサイズ:全長4570mm×全幅1790mm×全高2070mm

悪路走破性の高さにおいて、東の横綱がランクル300なら、西の横綱はディフェンダーだろう。といってもモダンになった現行型ではなく、トラディショナルな設計をもつ先代モデルのこと。

基本設計や外観は「ディフェンダー」を名乗る前の1983年「ランドローバー90/110」の登場から2015年の生産終了まで、ほとんど変わらなかった。エンジンや装備内容は時代ごとに変化していったが、対地障害角の大きなボディやストローク量の長いサスペンションといったオフロード車として肝心要なところは、すべてのモデルに共通している。
 

ランドローバー ディフェンダー(2代目) ▲積み木を重ねたような真四角のフォルムこそディフェンダーの個性だ

ほとんど直線と真円のみで構成されたインパネの景色などは作業車そのもの。シート生地や内装にはラグジュアリー感の欠片もない。背が高いボディ、柔らかいサスペンションのためにコーナーで上屋が大きく揺れる乗り心地、しっかりした踏み応えのあるクラッチペダルなど、オンロードでの乗り味は洗練されたランクル300のそれと比べようもない。だからこそディフェンダーは尊いとも言えよう。
 

ランドローバー ディフェンダー(2代目) ▲悪路走破性の高さは随一。ショートの90とロングの110、ピックアップもあった

30年以上にわたったモデルライフの中で、日本に正規輸入されたのはほんの数回、しかもすべて台数限定だった。よって現在の中古車市場に流通している物件数もごくわずかだ。

ただ、現在ならまだ走行距離10万km未満の物件も、ちらほら見つかる。年式がちょっと古めの物件を丁寧にメンテナンスしながら乗り続けるのも、楽しいカーライフだろう。

ランドローバー ディフェンダー(2代目) ▲現代のランドローバーからは想像もつかない、質素で実用的なインテリア

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代替案4|DSオートモビル DS3クロスバック(初代)
ボディサイズ:全長4120mm×全幅1790mm×全高1550mm

そのサイズや先進的デザインから、街中で注目を集めることも多いランクル300。決してメジャーな車ではないが、その珍しさゆえに「注目を集める」という点で、こんな車はいかがだろう? フランスのDSオートモビルが製造するクロスオーバーSUV、DS3クロスバック(初代)だ。

有機的なフォルムは人目を引きつけること間違いナシ。ドアハンドルを格納式としたり、ゴムのウエザーストリップを見えないように隠したり、フランス車の“美”へのこだわりには執念のようなものすら感じられる。
 

 DSオートモビル DS3クロスバック(初代) ▲マトリクスLEDビジョンは前方の状況によってヘッドライトの照射範囲を変えるハイテク装備

菱形をモチーフとしたインパネ、高級時計の文字盤によく見られるギョシェ彫りを採り入れたスイッチベースといったインテリアも個性的。半自動運転を実現するADASに代表されるハイテク装備も満載だ。

全長4120mm×全幅1790mmとボディサイズがコンパクトだけに、後席スペースやラゲージルームの容量は相応のもの。多少大柄でも良いから、もう少し車内空間に余裕が欲しいという人には、ワンクラス上となるDS7クロスバックという選択肢がある。
 

 DSオートモビル DS3クロスバック(初代) ▲リアビューの佇まいもエレガント。SUV風のルックスだが、駆動方式はFFのみとなる

「DS3クロスバック」は2023年5月の変更で「DS3」へと車名変更されたが、内容は変わっていない。ということで、「DS3クロスバック」と電気自動車版の「DS3クロスバック E-TENSE」、「DS3」を合わせた中古車市場流通量はおよそ60台。

その約半数が、デビュー年である2019年式となっている。価格の一例を挙げると、2021年式・走行距離0.6万kmの「リヴォリ 1.2Lターボ(ガソリン)」で総額309万円。当時の新車価格が402.4万~466万円だったことを考えると、かなりお値頃だ。
 

 DSオートモビル DS3クロスバック(初代) ▲これでもかというほど煌びやかなインテリア。クラスを大きく超える豪華さだ

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代替案5|スズキ ジムニーシエラ(3代目・現行型)
ボディサイズ:全長3550mm×全幅1645mm×全高1730mm

ボディの大きさや高級装備には全くコダワリらない、とにかくランクル300の魅力は悪路走破性の高さだ! という人には、こんな選択肢もある。ジムニーシエラは1.5Lガソリンエンジンを搭載する、ジムニーの小型車版だ。

660ccガソリンターボエンジンのジムニーに比べると、シエラのエンジンはトルクフルで自然なフィーリングが特徴。ワイドトレッドになるため、走りにもプラスアルファの安定感がある。
 

スズキ ジムニーシエラ(現行型) ▲岩場などを走っても転倒しそうな恐怖感が少ないのはジムニーとの大きな違い

悪路走破性能は、間違いなく世界トップレベル。ランクルの武器がパワフルなエンジンと豊かなサスストロークなら、ジムニーシエラの武器はコンパクトさと軽さだ。その点においては小型車版になっても全くスポイルされていない。
 

スズキ ジムニーシエラ(現行型) ▲車体はジムニーと共通なので、居住空間や荷室の大きさもそのまま

中古車市場での人気についてもランクルと肩を並べるところ。中古車流通台数は1500台前後と豊富だが、新車価格が176万~218.4万円であるところ、中古車平均価格は260万円前後となっている。

それでも中には走行距離少なめで、新車価格より安い物件も。リセールの高さには期待できるところだが、適切なメンテナンスをしていれば長く乗ることができ、いつまで乗っても飽きないのがジムニーシエラの良いところ。その点もランクルとの共通点だろう。
 

スズキ ジムニーシエラ(現行型) ▲4速ATの他、5速MTの設定があるのもジムニーシエラの楽しいところ

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※記事内の情報は2025年3月4日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/トヨタ、尾形和美、ジャガー、レクサス、ランドローバー、DSオートモビル、スズキ
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。

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