クラウン ▲このたび登場した新型トヨタ クラウン セダンはかなり魅力的な仕上がりですが、新車の車両価格は「最低でも730万円」というレベルまでジャンプアップしてしまいました。そこで、その半額程度で狙える「新型クラウン セダンの代わりになれそうだモデル」を探してみることにしましょう!

「支払総額760万円ぐらい」はさすがに少々キツい?

2023年11月に満を持して登場した新型トヨタ クラウン セダンは、かなり魅力的な仕上がりとなっている。2.5LハイブリッドとFCEV(水素を使う燃料電池)という2種類のパワーユニットはいずれも素晴らしい力感とマナーを備えており、乗り味も極上といっていいレベル。そして伸びやかなフォルムもきわめて素敵である。

だがそんな「素敵さ」の代償として(?)、新型クラウン セダンの車両価格は「安い方のZ(ハイブリッド車)であっても730万円」ということになってしまった。

先代のクラウンであれば「RS」の車両本体価格が509万9000円(※2020年11月~)、先んじて発売されたクラウンクロスオーバーなら同435万円~(2022年9月~)だったのだが、今回のクラウンは最安でも車両730万円、支払総額でいうと760万円ぐらいにはなる計算だ。

しかも、公式サイトではハイブリッド車の納期について「詳しくは販売店にお問い合わせください」となっており、中古車も新車価格より高いプライスでしか流通していない。

総額760万円はさすがにちょっとキツい……ということで絶望し、すべてをあきらめてしまいたくもなるが、あきらめるのはまだ早い。なぜならば、もしかしたら「新型クラウンの半額ぐらいで、つまり総額380万円前後で、新型クラウンに近いぐらい満足できてしまう中古車」も、世の中には存在しているかもしれないからだ。

だが本当にそんな中古車は存在しているのだろうか?

わからないが、真剣に探してみることにしよう。
 

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トヨタ クラウン(12代目) × 全国
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候補1|先代トヨタ クラウン(11代目)の最上級グレード
予算目安:総額330万~390万円

現行型となる12代目クラウンのZ(ハイブリッド車)が搭載するパワーユニットは、最高出力185psの2.5L直4エンジンをベースとするマルチステージハイブリッドシステム。これはこれで前述のとおり素晴らしい力感とマナーを備えるユニットだが、「あのクラウンが2.5L直4である」という部分に、ほんの若干の疑念があることも事実だ。

そんな疑念につけ込んで(?)先代トヨタ クラウンの最上級グレード、すなわちレクサスのLSやLCと基本的には同じ3.5L V6エンジンをベースとするマルチステージハイブリッドを採用した「3.5 S」「3.5 G エグゼクティブ」「3.5 RS アドバンス」を選べば、現行型の半額で「かなりの満足」を得られる可能性は高い。
 

クラウン▲こちらが先代トヨタ クラウン。写真のグレードは「RSアドバンス」
クラウン▲先代トヨタ クラウン RSアドバンスの運転席まわり

このV6ハイブリッドはシステム出力359psときわめてパワフルで、10段階にステップが区切られたCVTもかなりスポーティな性格。ハンドリング性能も、さすがに新型と直接比較すれば若干劣るかもしれないが、普通に乗る分には、先代であっても「歴代最高!」と称賛されたハンドリングを存分に堪能できる。そしてクラウンの上級グレードだけあって、豪華装備の類にも何ら不満はない。

そんな3.5L V6ハイブリッドを採用する先代トヨタ クラウンの走行距離1万km台までの低走行物件は今、おおむね下記の予算感で狙うことができる。

●3.5 S:総額350万円前後
●3.5 G エグゼクティブ:総額330万~390万円
●3.5 RS アドバンス:総額330万~400万円

比較的ベーシックな「3.5 S」はそもそも物件数が希少なので除外して考えるとして、ゴージャスな「3.5 G エグゼクティブ」またはスポーティな「3.5 RS アドバンス」のどちらかを好みに応じて購入すれば、新型クラウン以上かどうかはさておき、それにある程度近い愉悦を、総額300万円台後半の予算にて味わえるだろう。
 

クラウン▲新型が登場して“旧型”となった今も、たたずまいの良さや存在感は十分以上かと

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トヨタ クラウン(11代目) × 3.5S × ハイブリッド 3.5 G エグゼクティブ × ハイブリッド 3.5 RS アドバンス × 全国
 

候補2|レクサス ES(初代)
予算目安:総額340万~400万円

先代クラウンの最上級グレードという選択肢はなかなか悪くないと思うが、「同じクラウンの1世代前である」という部分が、引け目のようなものを発生させてしまうという考え方もあるだろう。

であるならば、クラウン以上のブランドである「レクサス」を選んでみるのはどうか? すなわち2018年10月に発売されたレクサス ESの低走行物件を選んでみるのである。
 

ES▲こちらがレクサス ESの前期型
ES▲レクサス ESのインテリアはおおむねこのような世界観。写真のグレードは300h バージョンL

レクサス ESは、北米を中心に大ヒット作となったミドルサイズのプレミアムFFサルーン。現在販売されているESは通算7代目(日本では初代)で、ボディサイズは全長4975mm × 全幅1865mm × 全高1445mm。新型クラウンよりは少しだけ小ぶりだが、存在感は十分以上であり、こちらの方が日本ではむしろ扱いやすいともいえる。

パワーユニットは、最高出力178psの2.5L 直4エンジンに同120psのモーターを組み合わせたハイブリッドシステムで、システム最高出力は218ps。当時「世界トップレベルの先進安全技術」とうたわれた予防安全パッケージ「レクサスセーフティシステム+」も全車標準装備だ。

そんなESの走行距離2万km台までの低走行物件は現在、おおむね下記の予算感で狙うことができる。

●300h:総額340万~410万円
●300h バージョンL:総額380万~420万円
●300h Fスポーツ:総額370万~440万円

バージョンLとFスポーツでは「新型クラウンの半額」という予算を超えてしまう場合も多いが、ベーシックな300hでも(レクサス車ゆえに当然ながら)基本的な豪華装備は普通以上に充実している。そのため、特に不満を覚えることはないはずだ。
 

ES▲サスペンションには、ボディの微小な動きに対しても減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を初採用。乗り心地はきわめてフラットかつしなやかだ

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レクサス ES(初代) × 全国
 

候補3|BMW M5(5代目)
予算目安:総額330万~410万円

レクサス ESという選択肢はなかなか悪くないと思うものの、「FRではなくFFである」「新型クラウンの半値で買えるのはマイナーチェンジ前の前期型である」という部分に、若干の引っかかりを覚える人もいるだろう。

であるならば、いっそBMWのM5はどうだろうか?
 

クラウン▲こちらが2011年から2017年まで販売された先代BMW M5
クラウン▲先代M5の運転席まわり。シフトレバーの根元を囲んで並ぶボタンにより、パワーステアリングの重さとダンパーの強さ、アクセルレスポンスをそれぞれ別個に調整できる

ご承知のとおりBMWのMモデルとは、BMWのモータースポーツ用車両の開発と生産をしていたBMW M社が手がけた超高性能スポーツモデル。ここでご紹介する5代目M5は、F10こと先代BMW 5シリーズをベースに作られたMモデルだ。

搭載されるパワーユニットは、高回転型4.4L V8にツインスクロール式のツインターボを組み合わせた「Mツインパワーターボエンジン」。その最高出力は560psで、F10型M5の車両重量は1870kgであるため、パワーウェイトレシオはわずか3.3kg/psということになる。

組み合わされるトランスミッションは「M DCTドライブロジック」で、シャシーには、M5専用サスペンションに加えて専用チューンのDDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール)やMサーボトロニック等々を採用。

アクセルペダルを深く踏み込むと「……野獣か?」と思えるほどの超絶加速を披露するM5ではあるが、タウンスピードでも決して不快ではない。もちろん現行型トヨタ クラウンのような極上の乗り心地は望むべくもないが、ボディが超絶堅牢であるため、乗り味が硬めでも“不快”ではないのだ。

また、Mモデルにありがちな派手な空力パーツは付いていない「羊の皮を被った狼」的なたたずまいも、大人のドライバーには好印象であろう。

そんな先代M5の中古車は、総額330万~410万円付近のレンジで走行距離4万km台の物件を検討可能。トヨタ クラウンとはキャラもブランドもまったく被らない1台だけに、新型クラウンのことは完全に忘れて「これはこれ」というニュアンスで大いに満足できるはずだ。
 

M5▲最高出力560psの4.4L V8ツインターボは相当強烈で、新型クラウン セダンとは世界線が異なる魅力にあふれている

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BMW M5(5代目) × 全国
 

候補4|メルセデス・ベンツ Sクラス(6代目)のS400系グレード
予算目安:総額310万~460万円

鬼のように速い先代BMW M5という選択肢はなかなか悪くないと思うものの、あくまで新型クラウン セダンの代わりとして考えるなら、その乗り心地の硬さに対して「……さすがにちょっとどうなんだ?」と感じてしまう人も多いだろう。

ならば、クラウンと同様に乗り心地がきわめて良好なメルセデス・ベンツ Sクラスでどうか?
 

Sクラス▲W222こと1世代前のメルセデス・ベンツ Sクラス
Sクラス▲グレードによって細部は異なるが、先代Sクラスのインテリアはおおむねこのようなデザイン

言うまでもなくSクラスとは、メルセデス・ベンツのトップグレードとして長らく君臨してきた超プレミアムなLサイズサルーン。ここでターゲットとしたい先代のSクラスは、2013年から2020年まで販売された「W222」と呼ばれる世代だ。

ボディサイズは全長5116mm × 全幅1899mm × 全高1493mmという、現行型クラウン以上の寸法ゆえ、存在感は十分以上。とはいえアルミニウムの使用率を50%以上とした「アルミニウムハイブリッドボディシェル」を採用したため、車両重量は従来型比で約100kgの軽量化に成功している。

デビュー時のベースグレードであるS400 ハイブリッド(※2015年8月からはS400 hというグレード名に変更)のパワーユニットは、最高出力306psの3.5L V6+同27psのモーターとリチウムイオンバッテリーという組み合わせ。条件によっては35km/hまで電気モーターのみの走行が可能で、高速巡航時には、パワープラントを切り離して燃費向上を図る「セーリング機能」も発動される。

現行型クラウンと同様にきわめて静粛性と乗り心地が良好で、そしてきわめてパワフルでもあるというのが、先代SクラスのS400 ハイブリッドまたはS400 hという車だ。

ちなみにより上級な「エクスクルーシブ」であれば、フロントシートのバックレストに14個のエアクッションを内蔵し、温熱効果で心地よさとリラクゼーションを高める「ホットストーン式マッサージ機能」を含めた6種類のマッサージプログラムも標準装備されている。

そんなS400系各グレードの走行距離3万km台までの中古車は、おおむね下記の予算感で検討可能だ。

●S400 ハイブリッド:総額310万~410万円
●S400 ハイブリッド エクスクルーシブ:総額340万~440万円
●S400 h:総額350万~460万円
●S400 h エクスクルーシブ:総額400万~520万円
 

クラウン▲乗り心地のよさは世界的に見てもトップクラス。風切り音もきわめて低く抑えられている

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メルセデス・ベンツ Sクラス(6代目) × S400系 × 全国
 

候補5|ランドローバー レンジローバー スポーツ(2代目)
予算目安:総額350万~450万円

ここまで先代クラウンの最上級グレードや先代M5など「少しだけ古い高級セダン」の数々を、現行型クラウンの約半値で買える代替品として提案してきた。

それらはすべて悪くない選択肢であると確信しているが、逆をいえば「悪くない程度」でしかない可能性もある。同じ高級セダンというカテゴリーであるだけに、年式や設計、あるいはデザインセンスの古さなどがどうしても際立ってしまい、購入後は「やっぱり現行型クラウンが欲しかったよな……」的な後悔を覚えてしまうリスクも伴っているわけだ。

であるならば、もう「高級セダン」という枠組みにこだわるのはやめて、何らかの「まったく別なタイプの高級な乗り物」を選ぶべきなのではないか? そうした方が――直接的な比較対象にはなりにくいゆえに、設計やデザインの古さがほぼ気にならなくなり、まったく別種の歓びと満足を感じる結果になるのではないだろうか?

……そう考えた場合の有力な選択肢は「プレミアムSUVを選ぶ」ということになるだろう。日本を代表するショーファーカーであるトヨタ センチュリーがSUVタイプへの進化というか変化を果たしたのだから、「現行型クラウンの代わり」がSUVになったっていいじゃないか――という理屈である。

そうなったとき、本来は「砂漠のロールスロイス」とも呼ばれた英国のランドローバー レンジローバーこそが、現行型クラウンとは“格”が釣り合う存在だろう。とはいえレンジローバーの比較的高年式なモデルは、残念ながら総額380万円前後だと若干キツい。

しかし、レンジローバーよりもほんの少々小ぶりで、レンジローバーよりはいくぶんスポーティな味付けとなっているレンジローバー スポーツの先代モデルであれば、総額380万円前後の予算でなかなか良きモノを選ぶことができるのだ。
 

レンジローバースポーツ▲こちらが先代ランドローバー レンジローバー スポーツ
レンジローバースポーツ▲水平と垂直のラインで構成されるインパネまわりのデザインはレンジローバーの伝統。「上質な無骨さ」とでもいうべき世界観だ

先代レンジローバー スポーツは、日本では2013年11月に発売されたランドローバー社のプレミアムSUV。ボディサイズは全長4855mm × 全幅1985mm × 全高1800mmと、全長こそ同時期のレンジローバーより150mm短く、また現行型クラウンより175mm短いが、幅広な全幅にもとづく“恰幅の良さ”は十分以上に感じることができる。

そして内外装の仕立ても、現行型クラウンのような新しさこそないが、上質感や品位といった部分においては現行型クラウンに負けてないといっていいだろう。

総額300万円台でも狙える年式の先代レンジローバー スポーツが搭載したパワーユニットは、「SE」と「HSE」が最高出力340psの3L V6スーパーチャージドで、最上級グレードだった「オートバイオグラフィ ダイナミック」は同510psの5L V8スーパーチャージドを搭載。トランスミッションはいずれも8速ATで、オートバイオグラフィ ダイナミックは0-100km/h加速を5.3秒でこなす俊足ぶりである。

そしてそれぞれの中古車価格は2024年3月上旬現在、おおむね下記のとおり。

●SE:総額350万~440万円
●HSE:総額360万~440万円
●オートバイオグラフィ ダイナミック:総額360万~450万円

5L V8スーパーチャージドの「オートバイオグラフィ ダイナミック」はこの価格帯だと流通量少なめだが、3L V6スーパーチャージドの「SE」または「HSE」であれば、まずまずの数が流通している。より上級な仕様である「HSE」の方が豪華装備は充実しているが、レンジローバースポーツの中ではベーシックなグレードに相当する「SE」であっても、装備内容は十分以上。

これに乗れば、大柄なプレミアムSUVならでは高いアイポイントから、現行型クラウンに乗る場合とはまた別種の、しかしおおむね同量の“満足”を、日々感じることができるはず。セダンであることにこだわる必要がない人は、ぜひ総額380万円前後の先代レンジローバー スポーツにご注目いただきたいと思う。
 

クラウン▲新型クラウン セダンも素敵だが、アクティブなSUVであるレンジローバー スポーツを選べば、「これまでとは違う自分」に出会えるかも?

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ランドローバー レンジローバースポーツ(2代目) × 全国
文/伊達軍曹 写真/トヨタ、BMW、メルセデス・ベンツ、ジャガー・ランドローバー
※掲載されている情報は2024年3月5日現在のものです。
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。