ボルボ XC40 ▲ボルボ初のコンパクトSUVとして2018年に登場し、今なお大人気となっている「ボルボ XC40」ですが、その中古車平均価格がこの1年で40万円以上ダウンしています。果たしてXC40に何があったのか? そしてお手頃価格になったXC40の中古車は「買い」なのか? 検討してみましょう!

お安くなったボルボ XC40は「買ってもOK」なSUVなのか

日本では2018年の初頭に販売が開始されたボルボのコンパクトSUV「XC40」。いかにも新世代ボルボらしいハイセンスな内外装デザインとシュアな走り、そして各種の充実した安全装備により人気を博している1台ですが、その中古車平均価格がこの1年で約40万円も下がっています。

下のグラフをご覧ください。
 

ボルボ XC40グラフ

2021年から2022年までは「おおむね横ばい」といえる価格状況だったボルボ XC40ですが、2023年の春になるとその価格レンジは明確に1段階低くなり、直近である2023年8月の中古車平均価格は、前年同月と比べて40万円以上安い383.4万円になっています。

人気モデルの平均価格が下がって買いやすくなること自体は大歓迎ですが、世の中「安いモノにはワケがある」という場合も多いものです。そのため、「ボルボ XC40の平均価格が大きく下がりました→だからお買い得です!」という簡単な話で済ませるわけにもいかないでしょう。

平均価格が大きく下がったボルボ XC40の中古車は、果たして「買っても大丈夫」な代物なのか? そしてもしも買うとしたら、何年式のどんなグレードを選ぶのが得策なのか?

次章以降、チェックしてみることにしましょう。

ボルボ XC40▲都市部でも扱いやすいサイズ感であるボルボ XC40。お安く入手できるならぜひ1台欲しいところだが?

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【モデル概要】様々なパワーユニットを搭載した北欧製コンパクトSUV

まずはボルボ XC40というSUVのモデル概要をざっとおさらいしておきましょう。

ボルボ XC40は、「ファーストエディション」という導入記念モデルが2018年1月に受注スタートとなり、通常モデルは同年3月に販売開始となったボルボ初のコンパクトSUV。

プラットフォームは、新開発の小型車専用車台「CMA」で、ボルボいわく「都市のライフスタイルにマッチする個性的なデザイン」というボディのサイズは全長4425mm×全幅1875mm×全高1660mmです。

エクステリアデザインは、新世代ボルボ共通のアイコンであるLEDヘッドライトなどを用いたクリーンでカジュアルなニュアンスですが、210mmの最低地上高や大径ホイール&タイヤなどにより「SUVらしいタフなイメージ」も強調されています。

インテリアデザインも「北欧らしい洗練」と「高い実用性」が高次元で両立されており、インパネ中央には直感的に操作できるインフォテインメントシステムを搭載。9インチのセンターディスプレイには赤外線方式のタッチスクリーンを採用。こちらは北欧生まれの車らしく、手袋を着用したままでも操作可能です。
 

ボルボ XC40▲ボディサイズは全長4425mm×全幅1875mm×全高1660mm。「ショートだが、車幅的にはワイド」という、なかなかユニークなディメンションだ
ボルボ XC40▲特徴的なテールライトデザインにより、ひと目で「ボルボ」であるとわかるリアビュー。Cピラーのデザインと太さも、XC40というSUVの大きな特徴のひとつ
ボルボ XC40▲派手さはないが「そこが逆にいい!」と感じられる、北欧ならではの落ち着きが際立つ運転席まわり
ボルボ XC40▲5人乗車時の荷室容量は、アウディ Q3と同じ460L。荷室床下にはサブトランクも用意されている

搭載されるパワーユニットは、ボルボの世界戦略に合わせる形でけっこうめまぐるしく変更されました。

上陸当初のXC40が搭載したのは2種類の2L直4ガソリンターボエンジンで、「T4」は最高出力190ps、「T5」は同252psを発生。トランスミッションはいずれも8速ATで、駆動方式は4WDを基本としつつ、一部のグレードでは2WDも用意されました。

しかし2020年8月には純ガソリンエンジンは廃止され、代わりに2L直4ターボエンジンに48Vハイブリッドシステムを組み込んだ「B4」と「B5」をラインナップ。そしてこのとき、「リチャージプラグインハイブリッドT5インスクリプション」という長い名前のプラグインハイブリッド車も追加されました。それぞれの簡単なスペックは下記のとおりです。

●B4:2L直4ターボ(最高出力197ps)+モーター(同13.6ps)
●B5:2L直4ターボ(最高出力250ps)+モーター(同13.6ps)
●プラグインハイブリッド:1.5L直3ターボ(最高出力180ps)+モーター(同82ps)

2021年11月には、B4パワートレインと同じく2L直4ターボ+モーターでありながら低燃費な「B3パワートレイン」が追加され、こちらのトランスミッションには7速DCTが採用されました。そして同タイミングでB4パワーユニット搭載車のトランスミッションも、8速ATから7速DCTに変更されています。ちょっとややこしいですね。

そして2022年5月にはピュアEVである「XC40リチャージ」が追加され、同年7月には全車のエクステリアデザインを手直しするとともにグレード構成を変更。さらに2023年3月には、それまではFWD(前輪駆動)と4WDが選択できたXC40リチャージの駆動方式をRWD(後輪駆動)のみに変更した――というのが、さしあたってボルボ XC40のヒストリーとなります。
 

ボルボ XC40▲こちらはEVである「XC40リチャージ」の2023年モデル
 

【中古車状況】大幅下落の要因に「負の側面」は特になし

それではお次に「ボルボ XC40の中古車平均価格がこの1年で40万円以上も下落した理由は何なのか?」という点について考えてみましょう。つまり「買うとマズい要因(ボロい、走らない、壊れる等々)があったから投げ売りされ、平均価格が大きく下がったのではないか?」という話です。

結論から申し上げると、ボルボ XC40の中古車にそういったネガ要因(ボロい、走らない、壊れる等々)は特になく、単純に「デビューから年月がたったから」というのが、2023年上半期に記録した下落の主な原因であると考えられます。
 

ボルボ XC40▲何らかのネガティブ要因が露見したから平均価格が下がったというわけではなく、単に「初度登録から3年または5年が経過した個体が増えたから」というのが、下落の理由であると推察される

XC40の中古車平均価格が大きく下がった2023年春頃というのは、ちょうど「最初期ガソリンエンジン車が2回目の車検を迎えるタイミング」で、さらには「2020年夏に登場した48Vハイブリッド車が最初の車検を迎えるちょっと前のタイミング」でもありました。

この2つのタイミングが重なったことで「そろそろ次のボルボ(または他ブランドの車)に乗り替えようかな……」と考える人が増え、まずは初期のガソリンターボ車と、48Vハイブリッド車世代の初期モデルの平均価格が下落。

そしてさらには、2023年5月の一部仕様変更&ラインナップ変更に伴って大量の「ディーラー試乗車」が中古車市場に流れ込んだことで、ボルボ XC40というモデル全体の中古車平均価格が大きく下がった――というのが、おそらくは正解に近い推論でしょう。

少なくとも「ボルボ XC40は性能も低いし、買ってもすぐにぶっ壊れる輸入車なので、中古車の平均価格が大きく下がった」などということはまったくありません。

そのため「丁寧に扱われてきた、素性の良い物件を選ぶように心がける」という条件付きで言っても良いのであれば、ボルボ XC40の中古車は「買ってもぜんぜん大丈夫な中古車である」と断言していいでしょう。

では、今中古のボルボ XC40を狙うならどんなものが良いのでしょうか? 検討してみることにしましょう。

 

中古車のオススメその1|「安さ重視」で行くならガソリンターボのT4系

もちろん「できるだけいいモノを」と考えつつも、そのうえで「しかし安さ重視でボルボ XC40を探したい!」というのであれば、狙うべきは初期の純ガソリンターボエンジン搭載グレードである「T4」系の一択になります。
 

ボルボ XC40▲最高出力190psの2Lガソリンターボエンジンを搭載するXC40 T4モメンタム(写真は本国モデル)

EVとプラグインハイブリッド車はまだ高額で、中期型といえる48Vハイブリッド車もまだ比較的高額――ということで「初期の純ガソリンターボ車」が狙い目となるわけですが、初期の純ガソリンターボ車には最高出力190psとなるT4だけでなく、同252psの「T5」も存在しています。

で、強力なパワーを堪能できるT5を狙いたくなる気持ちも湧くわけですが、残念ながらT5は中古車の流通量が少なめで、支払総額も320万円以上となってしまうケースが大半。しかしT4系であれば総額250万~300万円ほどの予算でも、まずまず好条件な1台を見つけることができるのです。

ボルボ XC40のT4系は、その中にもいくつかのグレードが存在していますが、一番安い「T4」というFF車はほとんど流通していません。しかし、中間グレードである「T4モメンタム(AWDと2WD)」と上級グレードの「T4 AWD インスクリプション」、そしてスポーティな意匠を伴った「T4 AWD Rデザイン」は、総額250万~300万円のゾーンでもそれなりの数の走行5万km以下車が流通しています。

その中でも中間グレードである「T4 モメンタム」または「T4 AWD モメンタム」であれば特に、総額200万円台後半の予算でも比較的見つけやすいでしょう。

T4 AWD モメンタムは、T4 AWD インスクリプションと比べて「本革シートではない(テキスタイル・コンビネーション)」「足元が19インチホイールではなく、18インチの5スポークになる」などの違いはあります。しかし、その他の装備にさほど大きな差があるわけではなく、安全装備にも違いはありません。
 

ボルボ XC40▲T4モメンタムおよびT4 AWD モメンタムのシート表皮は、本革ではなく「テキスタイル・コンビネーション」が標準だが、ややカジュアルなXC40にはむしろテキスタイル・コンビネーションの方が似合うかも?

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ボルボ XC40(初代・現行型) ×T4系グレード× 全国
 

中古車のオススメその2|「48Vハイブリッド」は予算と嗜好に応じて

2020年8月以降の48Vハイブリッドシステムが加わったボルボ XC40が欲しいという場合は、選び方がやや難しくなります。いや、難しいというよりは「悩ましい」と言う方が正しいでしょうか。

48Vハイブリッドシステムを採用するボルボ XC40のパワートレインは、大まかには下記のように分類できます。

●2021年10月までのB4系:2Lターボ(197ps)+モーター+8速AT
●2021年10月までのB5:2Lターボ(250ps)+モーター+8速AT
●2021年11月以降のB4系:2Lターボ(197ps)+モーター+7速DCT
●2021年11月登場のB3系:2Lターボ(163ps)+モーター+7速DCT

それぞれのパワーや年式の違いに応じて、もちろん平均価格の高低はあるのですが、パワーユニット別の価格差はさほど大きくはありません。それに加えて「どのパワートレインも、それぞれ素晴らしい(それぞれ特有の美点がある)」という状況であるため、どれか一つを“オススメ”として挙げるのは困難であるというか、悩ましいわけです。

となれば、ここはもう「こういう場合はコレ!」みたいな感じで、ニーズや予算別のオススメを複数挙げるほかないでしょう。

ボルボ XC40のハイブリッド車に「パワーとスポーティなイメージ」を求めたいのであれば、狙うべきは「B5 AWD Rデザイン」で決まりです。250psのエンジンパワー+13.6psのモーターという組み合わせは非常にパワフルで、見た目とサスペンションもスポーティですが、決して「スポーティすぎる(派手すぎる、硬すぎる)」ということもありません。流通量はやや少なめですが、総額370万~430万円ぐらいのゾーンで、かなりいい感じの1台が見つかるでしょう。

ボルボ XC40▲こちらはスポーティな意匠や足回りと高出力なパワーユニットが特徴となる「B5 AWD Rデザイン」

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ボルボ XC40(初代・現行型) ×B5 AWD Rデザイン× 全国

程よい予算感で、つまり総額300万~360万円ぐらいのゾーンでボルボ XC40のハイブリッド車を狙いたいのであれば、2021年10月までの8速AT搭載のB4系がいいでしょう。前述した価格帯で、走行1万km台から2万km台の良質物件を見つけることができます。

この世代のB4系は「素のB4」と「B4モメンタム(2WDとAWD)」「B4 AWD Rデザイン」に分かれますが、どれを選ぶかは「お好みとご縁」で決めればよろしいかと思います。ただ、素のB4はほとんど流通していませんが。
 

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ボルボ XC40(初代・現行型) ×2018年3月~2021年10月生産×B4系グレード×全国

もう少し予算を増やしてもいいのであれば、すなわち総額370万~400万円ほどのゾーンで探すのであれば、燃費の良いB3パワートレインを搭載する「B3モメンタム」を見つけることができます。

B3モメンタムは2Lターボエンジンの最高出力がB4のそれよりも34ps低い163psであるため、「動力性能的に物足りないのでは?」と思うかもしれません。しかし実際乗ってみれば、杞憂にすぎないことがわかるはず。普通にパワフルですので、よほどの飛ばし屋さんでない限りは何の問題もないはずですし、7速DCTも非常に滑らかです。

7速DCTに変更された2021年11月以降のB4 AWD系を選んでもいいのですが、そちらはまだ中古車価格が少し高めであるため、よりコスパが高いと感じられるのはやはり「B3モメンタム」でしょう。総額380万円前後で低走行な物件も見つかります。
 

ボルボ XC40▲出力をやや抑えた2Lターボエンジンにモーターなどを組み合わせた「B3モメンタム」

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ボルボ XC40(初代・現行型) ×B3モメンタム×全国
 

予算と住居次第では「プラグインハイブリッド車」もあり

ちなみにボルボ XC40のハイブリッド車には、48Vハイブリッドシステム搭載車の他にプラグインハイブリッド車も存在していました。

2020年8月に登場したのが、最高出力180ps/最大トルク265N・mの1.5L直3ターボエンジンに同82ps/同160N・mのモーターを組み合わせ、45.6kmのEV走行ができる「リチャージプラグインハイブリッドT5インスクリプション」。そしてその装備を簡素化し、車両価格を抑えたのが「リチャージプラグインハイブリッドT5インスクリプション エクスプレッション」です。
 

ボルボ XC40▲ボルボ XC40のプラグインハイブリッド車である「リチャージプラグインハイブリッドT5インスクリプション エクスプレッション」

廉価版であるエクスプレッションの方は2023年10月中旬現在、中古車の流通台数は0台ですが、通常版の方は約30台が総額400万~520万円ほどのゾーンで流通しています。

総額430万円前後で走行1万km台ぐらいの物件が探せますので、予算に余裕があり、なおかつご自宅に充電設備がある場合には「悪くない選択である」ということになるでしょう。
 

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ボルボ XC40(初代・現行型) ×プラグインハイブリッド系グレード×全国

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ボルボ XC40(初代・現行型) ×全国
文/伊達軍曹 写真/尾形和美、ボルボ・カーズ

※記事内の情報は2023年10月10日時点のものです。

伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。