メルセデス・ベンツ GLB ▲ここ1年で中古車平均価格が150万円以上も下落した3列7人乗りの輸入SUV、「メルセデス・ベンツ GLB」。買いやすくなったプライスは気になるところですが、大幅に安くなったということは、何か“訳あり”だったりもするのでしょうか? そのあたりも含め、メルセデス・ベンツ GLBの中古車事情を集中研究してみましょう!

「1年で150万円以上!」というなかなかレアな下落幅

ちょっとGクラスを思わせるスクエアなフォルムと取り回しのしやすいサイズ、そして「3列7人乗りである」ということから高い人気を博している、メルセデス・ベンツ GLB。その中古車平均価格が今、けっこうな勢いで下がっています。

まずは下のグラフをご覧ください。

GLBグラフ

昨年5月には739.9万円というなかなかの高値圏にあったメルセデス・ベンツ GLBですが、1年後である2023年5月の中古車平均価格は587.4万円。実に150万円以上もの大幅下落を記録したわけです。

そんなメルセデス・ベンツ GLBの中古車は“買い”なのか、それとも、意外とそうでもないのか? 次章以降、じっくり検討してみたいと思います。
 

GLB▲ちょっと無骨なフォルムが魅力のメルセデス・ベンツ GLBは今、買いや否や? 考えてみましょう!

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【モデル概要】Gクラス的スクエアフォルムの3列7人乗りSUV

まずはメルセデス・ベンツ GLBのプロフィールをざっとおさらいしておきましょう。

メルセデス・ベンツ GLBは、2020年6月に上陸した3列シート・7人乗りのSUV。

エクステリアデザインは、立ち気味のAピラーとテールゲートが特徴的な2ボックススタイルで、このスクエアなニュアンスは大人気のSUV「メルセデス・ベンツ Gクラス」からインスピレーションを得たものです。

Gクラス▲言わずとしれた人気モデルのGクラス。GLBは、このGクラスからインスピレーションを得たモデルだという

ボディサイズは全長4650mm×全幅1845mm×全高1700mmという、最近のSUVとしてはやや小ぶりといえるもので、その中に最大7名の乗車が可能な3列のシートを備えています。といっても3列目は「身長168cmまでが対象」とメーカーが言っているとおり、さほど広大なスペースではありません。基本的には「たまに使うシート」と考えるべきでしょう。ちなみに3列目シートをフラットにたたんでおけば、荷室容量は500Lというなかなかのモノになります。
 

GLB▲こちらがメルセデス・ベンツ GLB
GLB▲近年のSUVとしては珍しいほど、テールゲートとAピラーが切り立ったスクエアフォルムだが、エッジ部分には適度な丸みを持たせているのが今風ではある
GLB▲運転席まわりはおおむねこのようなデザイン
GLB▲3列目に座る人員は「身長168cmまで」とされている。それ以上の身長の人間も座れるし、座ったところで違法なわけでもないが、やはり広くはない。普段はたたんでおき、荷室を広く使うのが得策だろう
 

発売当初のラインナップは2種類。FF車である「GLB200d」には最高出力150ps/最大トルク320N・mの2L直4ディーゼルターボが搭載され、4WD車の「GLB250 4マチックスポーツ」には同224ps/同350N・mの2L直4ガソリンターボが採用されました。いずれもトランスミッションには新開発のデュアルクラッチ式8速ATです。

2021年4月には、GLB200dに代わるベーシックグレードとして「GLB180」が登場。こちらのエンジンは最高出力136ps/最大トルク200N・mの1.3L直4ガソリンターボで、デュアルクラッチ式ATは7速タイプです。

そしてこのとき、2Lディーゼルターボエンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせた「GLB200d 4マチック」が新たに導入され、同年9月の小変更時までにGLB250 4マチックスポーツは販売終了となりました。

運転支援システム/予防安全システムが充実しているというのもGLBの特徴で、メルセデス・ベンツはGLBのそれを「Sクラスと同等」とうたっています。

具体的には「レーダーセーフティパッケージ」は最初期から全車標準装備で、その中のアダプティブクルーズコントロールは、高速道路上では30秒以内、一般道では3秒以内の停車であれば前走車の発進に続いて自動で再発進を行う「自動再発進機能」を採用。その他「アクティブレーンチェンジングアシスト」や「緊急回避補助システム」「アクティブブラインドスポットアシスト」等々、運転支援システム/予防安全システムに関しては「ほぼ全部盛り」と言っていいでしょう。
 

GLB▲レーダーセーフティパッケージの他、MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)と10.25インチワイドディスプレイも全車標準装備
 

【考察】大幅下落の要因は「初回車検前の乗り替え多発」か

中古車の平均価格が1年間で150万円以上も下がったというのは、喜ばしいことであるのと同時に「ちょっと不安なポイント」でもあります。大きく値下がりした理由は、何かしら大きな弱点や欠点のようなものが露呈したからではないか……? とも考えられるからです。

しかし結論から申し上げると、その種の心配はおおむね無用です。もちろん機械製品ですので「絶対に壊れない!」なんてことはいえませんし、一部ではマイナートラブルも発生しているでしょう。しかしGLBは「○○が必ず壊れる!」「□□という部品が非常に弱い!」みたいなことは特にないSUVです。

ではなぜ、1年で150万円以上もの大幅下落を記録したかというと――基本的には「初回車検に伴って手放す人が増え=中古車の流通量が増加し、ダウントレンドに転じた」というだけのことだと推察されます。

下のグラフをご覧ください。

GLB

2020年6月に発売されたメルセデス・ベンツ GLBは2022年に入ってから中古車流通量が増え始め、2022年12月から2023年1月にかけてピークを迎えています。このピークのタイミングは、最初期に納車されたGLBが最初の車検を受けるおおむね半年前にあたります。

で、GLBに限らず最近の中堅輸入新車は「残価設定ローン」を利用して購入するユーザーが多く、残価設定ローンというのは、3年なら3年の契約期間が終わる4ヵ月ほど前までに「契約終了のタイミングで車を返却するか、もしくは現金または再ローンで買い取るか」をユーザー自身が決める必要があります。

つまりGLBの新車を最初期に(残価設定ローンで)購入したユーザーの多くが初回車検の半年ほど前に「……3年間フルに乗るのではなく、まだ高値が付く今のうちにGLBは返却して、また別の車に乗り替えるか」という意思決定を行ったことが、このグラフからは明確に見て取れます。残価設定ローンでの購入が増えている近年は、「初回車検月」ではなく「その半年ぐらい前」に、中古車の流通量がドッと増えたりもするのです。

長々と書きましたが、つまりは「特に問題のない安値である」ということです。
 

GLB▲何らかの「深刻なネガ」のせいで平均価格が大きく下がったわけではない

では、今GLBの中古車を検討するなら、どういった物件が狙い目になるのでしょうか? 以下、ニーズごとに考えてみることにしましょう。

 

とにかく安いものが欲しいなら「2021~2021年式の200d」

メルセデス・ベンツ GLBの中古車は、年式で分けると「2020年式/2021年式/2022年式/2023年式」の4種類があり、グレード別に超ざっくり分けると「FFディーゼルの200d」「4WDディーゼルの200d 4マチック」「2Lガソリン4WDの250 4マチック スポーツ」「1.3LガソリンFFの180」という4つに分類されます。

そしてこれらは困ったことに(?)、年式別に見てもグレード別で考えても、さほど大きな価格差はありません。

もちろん「新しい方が高い」「排気量が大きい方が高い」「FFより4WDの方が高い」という基本的な傾向はありますが、しかし、どれを選んだとしても「総額500万~700万円ぐらい」というレンジにだいたい収まってしまうのです。

そのため、もしも「なるべく安く買いたい」と考えるのであれば、グレードや年式うんぬんを考える前に「さしあたり総額500万円ぐらいで買えるGLBは何か?」ということをチェックしてみるのが手っ取り早いやり方です。

そして今、総額500万円前後の予算で買えるのは「走行2万~4万kmぐらいの2020~2021年式GLB200d」、つまりFFの2Lディーゼルターボエンジン搭載車です。
 

GLB▲比較的ベーシックなグレードではある200dだが、パワー&トルクは普通に十分以上で、足もしなやか
 

居住エリアなどの関係で「どうしても4WDが必要だ」という人には不向きですが、普通に使う分にはFFでも何ら問題ないですし、ちょっとエンジン音がカラカラとうるさめなきらいはありますが、とってもよく走るいい車です。そして走行距離もまだまだ短めですので、コンディション的にも問題ない物件が多いはず。「総額500万円前後」という予算感を問題としないのであれば、なかなかナイスな選択肢だといえます。

総額500万円前後の2020~2021年式GLB200dを探す場合は、「内外装やエンジン、足回りなどのコンディションをチェックする」という中古車選びの基本行為を行うのは当然ですが、それに加えて「オプション装備の有無」もチェックした方がいいでしょう。

前述のとおり「レーダーセーフティパッケージ」全車標準装備ですが、その他の「GLB200dに付いていたらうれしいオプション装備」は下記のとおりです。

●ナビゲーションパッケージ(2020年新車時価格18万9000円)
ナビゲーション/Mercrdes me connectナビゲーションサービス/VICS-FM多重放送、テレビ機能/他

●AMGライン(2020年新車時価格28万円)
AMGスタイリングパッケージ/Mercedes-Bnezロゴ付きブレーキキャリパー/ステンレスアクセル&ブレーキペダル/本革巻マルチファンクションスポーツステアリング(パドルシフト付き)/レザーDINAMICAシート/19インチAMG5ツインスポークアルミホイール/マルチビームLEDヘッドライト/他

●AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(2020年新車時価格19万4000円)
本革シート(ツートーン)

●レザーエクスクルーシブパッケージ(2020年新車時価格26万3000円)
本革シート/アンビエントライト(64色)/ブラウンウォールナットウッドインテリアトリム

●アドバンスドパッケージ(2020年新車時価格16万8000円)
ヘッドアップディスプレイ/アドバンスドサウンドシステム(スピーカー数:10)

●パノラミックスライディングルーフ(2020年新車時価格16万8000円)

ちなみに上記の詳細は2020年モデルの内容を基に記していますが、メルセデス・ベンツ GLBの装備内容は2021年4月と2021年9月、そして2022年6月の各タイミングでこまごま変更されています。それぞれの変更内容は、それまであったモノがなくなったり、その後また復活したりという、けっこうややこしいものです。そのため上記はあくまで“参考”とし、具体的な装備の有無は、恐縮ですが販売店にて直接ご確認ください。
 

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メルセデス・ベンツ GLB(現行型) × 2021~2021年式×200d×全国
 

硬めの足がお好みなら「250 4マチック スポーツ」

総額500万円前後の予算ゾーンでは、流通量は少なめですが「GLB250 4マチック スポーツ」を探すこともできます。同車は最高出力224psのパワフルな2L直4ガソリンターボエンジンを搭載する、2021年途中まで販売されていた4WDグレードです
 

GLB▲スポーツサスペンションに20インチの大径ホイールを組み合わせたGLB250 4マチック スポーツ
 

GLB250 4マチック スポーツは端的にいって速いですし、装備もGLB200d以上に充実しています。しかしその半面、「スポーツサスペンション+20インチホイール」という組み合わせであるため、乗り心地はかなり硬めです。

個人的には「コンフォートサスペンション+18インチまたは19インチホイール」となるGLB200dがオススメなのですが、世の中には「硬い乗り味の方が好き!」という人もいらっしゃるはず。そういった人であれば、総額500万円界隈のGLB250 4マチック スポーツを探してみるのも悪くない話です。総額500万~530万円付近で、走行短めの1台が見つかることでしょう。
 

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メルセデス・ベンツ GLB(現行型) ×「250 4マチック スポーツ」×全国
 

四駆が必須なら「2021年以降の200d 4マチック」

総額500万円前後で走行2万~3万km台ぐらいのGLB200dでも、十分以上の満足を得られるとは思います。しかし「いや、自分はもっと“新車に近いGLB”が欲しいし、そもそもFFではなく4WDが欲しいのだ」という人もいらっしゃるでしょう。

そんな場合には総額550万~650万円付近の、2021年4月に追加された「GLB200d 4マチック」がオススメとなります。
 

GLB▲写真は諸事情によりGLB 200d 4マチックとは異なるグレードだが、カタチは同一
 

GLB200d 4マチックの4WDシステムはいわゆる生活ヨンクではなく、FFをベースに、クラッチを介して後軸に駆動力を伝達するもの。前後駆動力配分は、ドライブモードが「エコ/コンフォート」の場合は80:20で、「スポーツ」の場合は70:30。「オフロード」の場合はクラッチがセンターデフロックのように働き、前後均等の50:50になります。

さらにオフロードモード作動時には、ABS制御なども変更して悪路走行を支援。そしてマルチビームLEDヘッドライトも、自車の直前部を広く明るく照らすモードに切り替わります。

購入時は「内外装やエンジン、足回りなどのコンディションをチェックする」という中古車選びの基本さえまっとうすれば、特に問題なくステキな1台を見つけることができるでしょう。ただしGLB200d 4マチックも時期によって装備内容がややこしく異なるため、そこだけは若干気を使う必要があります。

具体的には、2021年9月からは、それまでオプション扱いだったナビゲーションシステムが標準となり、AMGラインに含まれていた「アンビエントライト(64色)」も標準装備になりました。しかしこのタイミングで、それまでは標準装備だったプライバシーガラスが「AMGラインの装備」に変わっていたりするのがややこしいところです。

また2022年6月以降の「MP202202」と表記されている世代も、総額600万円前後で狙えるナイスなものではあるのですが、この世代は「メモリ機能付きパワーシート」が廃止されているのが若干残念なポイントではあります。
 

GLB▲MP202202という世代は「メモリ機能付きパワーシート」が廃止されたが、それまではメルセデスAMGのGLB35 4マチックでしか選べかなった「パタゴニアレッド」が全車で選べるようになった

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メルセデス・ベンツ GLB(現行型) ×2021年式以降×「200d 4マチック」×全国

とはいえ中古車というのは、上に記したような個別の装備うんぬんだけでなく「トータルで見た場合のバランス」こそが重要だったりもします。そのため、上記のこまごまとした話はいちおう参考にしていただきつつも、最終的には「予算とトータルバランスの兼ね合い」を都度判断しながら、ご自身にとっての「これだ!」という1台を見つけるようにしてください。

幸いにしてメルセデス・ベンツ GLBの流通量はまずまず豊富ですし、どのグレードも便利に使えるSUVであることは間違いありません。そのため、「これだ!」という1台を見つけ出すのは、さほど難しい作業にはならないでしょう。
 

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文/伊達軍曹 写真/メルセデス・ベンツ、尾形和美
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。