三菱 ランサーエボリューションⅦ、Ⅷ、Ⅸの中古車価格ってどれくらい高騰してるの? オススメの買い方って?【ランエボ第3世代の現在地】
2022/08/13
2000年代に登場した第3世代のランサーエボリューションたち
三菱がラリーで勝つために進化を続けてきたランサーエボリューションは、その名のとおり小型セダンであるランサーをベースとしたエボリューションモデル。
そのベースとなったランサーが2000年5月にフルモデルチェンジを果たして6代目へと進化すると、ランサーエボリューションも3世代目へと生まれ変わり、より高いポテンシャルをもつモデルへと進化を果たしました。
この6代目ランサーをベースとしたランサーエボリューションは、Ⅶ~Ⅸまでの3モデルが存在していますが、どの世代もハイパフォーマンススポーツセダンとして高い人気を誇っています。
近年の国産スポーツモデルへの注目度の高まりもあってか、以前お伝えした第2世代(Ⅳ~Ⅵ)同様に価格もすべてのモデルで右肩上がりとなっています。
そこで今回は、第3世代のランサーエボリューションの特徴を振り返るとともに、現在のランサーエボリューションⅦ~Ⅸの中古車の現状をチェックしていきたいと思います。
第3世代のランサーエボリューションをおさらい!
■ランサーエボリューションⅦ
ランサーが6代目へとフルモデルチェンジを果たした翌年の2001年2月に登場したのが、ランサーエボリューションⅦです。
ベース車が一新されたこともあり、先代のランエボⅥ比で1.5倍の曲げ剛性を実現した高剛性ボディが特徴となっており、従来車にも採用されていたAYCに加えて、前後輪の差動制限を電子制御するACD(Active Center Differential=電子制御可変多板クラッチ機構)を新規採用したことで、操舵応答性と駆動性能を向上させるとともに高次元で両立することを実現。
このACDは「ターマック」、「グラベル」、「スノー」の3つのモードが用意されており、路面状況に応じた制御を最適化したのもポイントとなっていました。
搭載されるエンジンは先代型から引き続き、直列4気筒2Lターボの4G63型を搭載。最高出力は当時の自主規制値である280psであるものの、最大トルクは+1.0kg・mの39.0kg・mを発生し、5速MTと組み合わされています。
グレード体系は普段乗りも考慮して快適装備も備えた「GSR」と、モータースポーツベース車として装備を厳選した「RS」は不変でしたが、2002年2月には新たなグレードとして「GT-A」を追加設定。
この「GT-A」はランエボ史上初のAT車となっており、スポーツモード付き5速ATをトランスミッションに採用したモデルとなっていました。
トランスミッションがATとなったことで、エンジン出力を中低回転域のトルクを重視した結果最大出力は272psとなり、外観もワイドボディはそのままにボンネットのエアアウトレットを廃したり、大型リアウイングをオプションとするなど、大人のスポーツセダンとして新たな顧客開拓にチャレンジした1台だったのです。
■ランサーエボリューションⅧ
2003年1月に登場したランサーエボリューションⅧは、当時の三菱のデザインアイデンティティを盛り込んだフロントグリルを採用したデザインとなり、そのデザインは賛否分かれるものとなりましたが、バンパー中央の開口部面積を10%拡大することでインタークーラーの冷却効率をアップ。
また、新形状のフロントバンパーやアンダーカバーの採用の他、量産4ドアセダンとしては初となるCFRP(カーボン繊維強化樹脂)製リアスポイラーを装着したことで空力性能を向上させていました。
4G63型エンジンはさらにトルクアップを果たして40.0kg・mの大台に乗り、AYCはスーパーAYCへと正常進化を果たすなど、性能面も大幅アップ。マニュアルトランスミッションも6速化がなされ(RSには従来の5速MTも設定)絶え間なく進化していることが分かります。
そして、2004年2月にはランサーエボリューションⅧの熟成モデルである「MR」が登場。「MR」とは「Mitsubishi Racing」の略であり、過去のスポーツモデルのトップグレードに与えられてきた伝統ある称号となっていました。
この「MR」ではビルシュタイン社と共同開発したショックアブソーバーに加え、国産量産モデルとしては初となるアルミ製ルーフパネルの採用やドア内部のインパクトバーをアルミ化することで軽量化を実現。
エンジンのトルクアップ(40.8kg・m)やACD+スーパーAYCの制御の見直しなどもなされたことでさらなるポテンシャルアップを果たし、一部では「ランエボ8.5」と呼ばれるほどの進化となっていたのでした。
■ランサーエボリューションⅨ
第3世代のランサーエボリューション最後のモデルとなったランサーエボリューションⅨでは、4G63型エンジンに連続可変バルブタイミング機構MIVECを採用し、高回転域で高い性能を確保しながら燃費を向上させたのが大きなトピック。
また、「GSR」と同様の遮音性能を向上させた快適なボディ仕様に、「RS」と同様のターボチャージャーと駆動系システムを採用した中間グレードに当たる「GT」をラインナップした点も特徴となっていました。
そして2006年8月には、ランエボⅧにも設定された「MR」が再び登場。オンロードでのスポーツドライビングに特化させた第3世代の集大成モデルという位置づけであり、ビルシュタイン社製のショックアブソーバーにアイバッハ社製のスプリングを組み合わせて(RSはオプション)ローダウンが実施されていました。
また、名機と称されてきた4G63型2Lエンジンを搭載する最終モデルということは当時からアナウンスされており、4G63型エンジンを搭載するランサーエボリューションの集大成とも言える1台ということで、当時から高い注目を集めたモデルでもあったのです。
それぞれの掲載台数と平均価格の推移は?
第2世代のランサーエボリューションに比べて高年式ということもあって、比較的台数は多めとなっている第3世代のランサーエボリューション。
しかし、どのモデルを見ても100台を下回る掲載台数が続いており、希望の仕様を見つけるには根気が必要と言えそうな状態は変わりありません。
掲載台数はランエボⅦがやや多く、ⅧとⅨは同じくらいの台数となっていますが、これは第3世代のランサーエボリューションの中でⅦが最も台数が売れたモデルであることも影響していそうです。
一方の平均価格は、年式の古いⅦが最も安く、次いでⅧ、そしてⅨは一気に高値安定となっていることが一目で分かります。
また、どのモデルもほぼ右肩上がりで平均価格が上がってきており、今後もこの状態は続いていくと思われるので、良さげな物件が見つかったら即行動に移した方が良さそうです。
では、以下より現時点での中古車事情をモデルごとに見てみましょう。
Ⅶの中古車事情:ATのGT-A狙いの人はまだ買いやすい
Ⅶの現時点での流通台数は47台。総額98万~350万円となっています。グレードの大半をRSとATのGT-Aで占めており、RSはわずか数台と希少な存在となっています。
安価に狙うことができる物件は、ⅦのGT-A一択となっており、ほとんどが総額200万円以下という状態であり、ATでもOKという人にはまだ買いやすい状況でオススメです。
MTの安価な物件となると、走行距離は当然のように10万kmを超えていて修復歴ありが中心となりますが、それでも総額200万円以上は必要というのが現状となっています。
もし、MTが欲しくて程度を重視するのであれば、走行距離10万km以下と条件を付けたいところです。そうなると総額300万円程度は覚悟した方が良いでしょう。
▼検索条件
三菱 ランサーエボリューションⅦ×全国Ⅷの中古車事情:Ⅶ狙いの人も同時検討を!
Ⅷの現時点での流通台数は47台。総額233.9万~469万円となっています。グレードについてはGSRとMRがほとんどで、Ⅶと同じくRSは1台のみと希少な存在です。
ボリュームゾーンは総額300万~400万円程度といったところで、これ以下だと走行距離10万km超で修復歴アリ車、これ以上だと程度の良いフルノーマル車やガッツリチューニングが施されたものが射程に入ってきます。
もし、あまり手の加えられていない程度の良いノーマル個体を欲している場合は、総額300万円前後あたりから探すのがオススメです。
もしⅦのMTを視野に入れていて、なかなか良い個体に巡り合わない。そんな場合は、そもそも台数が少ないため、こちらのⅧと同時検討すると良いかもしれません。
また、走行距離が10万kmを超えていても大切に扱われてきたと思われる物件では新車価格を超える350万円超という車両本体価格のものも珍しくない状態となっています。
▼検索条件
三菱 ランサーエボリューションⅧ×全国Ⅸの中古車事情:MRは超レア&超高価グレード
Ⅸの現時点での流通台数は39台。総額287万~960.2万円となっており、前述のとおりⅦ、Ⅷよりかは高価になります。グレードについてはコチラもGSRとMRがほとんど。RSとGTに関しては1台ずつとなっています。
中でも高値となっているのはMRとなっており、執筆時点で2万km台の物件が総額960.2万円と、新車価格を軽く凌駕しています。MRに関しては最安でも総額485.8万円となるので、MR狙いの方は相当な予算を用意する必要があるでしょう。
また、フルノーマルまたはライトなチューニングを施された個体が目立つ印象です。最終モデルのためか、大切に乗られてきた個体が多いからとも言えます。
▼検索条件
三菱 ランサーエボリューションⅨ×全国もともとスポーツモデルということもあり、今から第3世代のランサーエボリューションを狙うのであれば、年式や走行距離といった一般的な中古車の尺度ではなく、どのくらいメンテナンスをされてきたのか、いつどんなカスタマイズがなされたのかなど、履歴がハッキリした物件を狙うのがオススメと言えそうです。
▼検索条件
三菱 ランサーエボリューション(3世代目) ×全国自動車ライター
小鮒康一(フナタン)
スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車は日産 リーフ、初代パルサー、NAロードスター。