スズキ アルト(旧型)▲2460mmというロングホイールベースで室内を広く取りながら、最小回転半径4.2mと小回りが利く。ちなみに同じホイールベースの現行型は4.4mだから、現行型よりも小さく回ることができる

お手頃な軽自動車の代名詞的存在

「過不足のない装備をできるだけ安く」というのが、1979年の登場以来のアルトの使命。

2014年12月に登場した旧型(8代目。カーセンサーでは6代目と表記)も、84万7800円からという手頃な価格が設定されヒットした。

そんな旧型アルトも登場から7年以上が経過したこともあり中古車価格は順調に下落し、原稿執筆時点の中古車平均価格は70.8万円で、支払総額30万円でも十分狙えるお手頃な中古車も。

しかし、一方で現在は下落が一服して横ばいに推移する、いわゆる踊り場局面に入っている。

その理由を確かめながら、旧型アルトのベスト・バイを探っていこう。

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スズキ アルト(旧型)×全国
 

高年式車が多数流通しており、現在の平均価格は踊り場局面に

過去3年間を見てみると、旧型アルトの中古車台数は増え続けてきた。2020年後半に4000台を突破し、2021年は4000台以上をキープ。

需要と供給のバランスで価格が決まる中古車は、台数が多いほど価格が下がるのが一般的だが、その例に漏れず、旧型アルトも緩やかながら平均価格を下げてきた。

2021年12月の平均価格は70.5万円と70万円を切る寸前に。1年前と比べれば確かに安くなっているし、いつ70万円を切ってもおかしくないのだが、実は2021年7月以降、70万円を切りそうで切らない足踏み状態が続いている。

スズキ アルトの平均価格推移グラフ▲2021年秋ごろまでは順調に値下がりを続けてきたが、直近は足踏み状態が続いている

その原因のひとつに、高年式車が多いことが挙げられる。

原稿執筆時点で年式別に見ると、2015~2016年式と比べて2020~2021年式の高年式の物件が約2倍もあるのだ。

そのため、平均走行距離も約2.3万kmと少ないどころか、1万km未満が全体の半数以上を占めている。

その一方で、走行距離15万km超のものもあるなど、台数が多いため他のモデルよりも走行距離も年式も幅広く分布しているのが旧型アルトの中古車試乗の特徴。

つまり、今なら走行距離1万km未満の高年式車といった、新車の香りさえ残っていそうな良コンディション車から、支払総額30万円のお手頃の旧型アルトまで「かなり自由に狙える」というわけ。

そんな状況の旧型アルトで何を選ぶべきか。モデル変遷も確認して狙うべき中古車を絞り込んでいこう。

 

37.0km/Lと低燃費で、衝突被害軽減ブレーキ付きも選べた

スズキ アルト(旧型)▲全高を1500mm程度に抑えた軽自動車の王道ハッチバックスタイル。同スタイルの軽自動車の中ではトップクラスとなる2040mの室内長が確保されるなど、ハイト系などにはかなわないものの、意外と室内は広い

2014年12月にデビューした旧型アルト。今どきは軽自動車も200万円以上するのが当たり前のようになってきたが、84万7800円(乗用車タイプ)からという低価格で登場した。

新開発されたプラットフォームが採用され、軽量化も図られたこともあり、当時のガソリン車としては最も低燃費となるJC08モード燃費37.0km/L(ノンターボ・エネチャージ×CVTの2WD)を達成している。

さらに、全車に衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などが備わる「レーダーブレーキサポート装着車」が設定されていたことも魅力のひとつだ。

デビュー時のパワートレインは「ノンターボ×5速MT」「ノンターボ×5速AGS(2ペダルMT)」「ノンターボ・エネチャージ×CVT」の3種類。

エネチャージとは小型モーターが発進時などにエンジンをサポートし、燃費を向上させるという同社独自の技術だ。

また商用ニーズもあるため、装備が簡略化された商用車のバンも用意されていた。

スズキ アルト(旧型)▲ESP(車両姿勢制御システム)は全車に標準装備。坂道での後退を防ぐヒルホールドコントロールはグレード「F」の5速MT車を除き標準装備されている
スズキ アルト(旧型)▲インテリアはシンプルで飽きにくいデザイン。CVTとAGSのシフトノブはインパネに備わる
スズキ アルト(旧型)▲ライトブルーを基調としたシート。500mlの紙パックも置けるフロントコンソールのドリンクホルダー(5MT車は除く)や、助手席シートバックのコンビニフック(バンを除く)など収納力や使い勝手も十分

上記のとおりメインはノンターボ車だが、スポーティモデルのみターボエンジンが搭載された。ひとつは2015年3月に追加された「ターボRS」、もうひとつは同年12月には追加された「ワークス」だ。

スズキ アルト(旧型)▲ターボRSをベースに、さらに走りを楽しめるようチューニングされたワークス。こちらはパドルシフト付き5速AGSの他、5速MTも選べた

上記ターボ車の追加以外、フルモデルチェンジまでに大きな変更点はなかった旧型アルト。唯一選ぶ際のポイントとして、2018年12月に安全性の向上が図られたことが挙げられる。

具体的には従来の「レーダーブレーキサポート」から、レーダー+カメラを使用する「デュアルセンサーブレーキサポート」機能や後退時も衝突被害軽減ブレーキが利く機能を用意。

加えて、車線逸脱警報機能やハイ/ロービーム自動切替機能、オートライトシステム機能などをまとめて「スズキセーフティサポート」として「S」「X」「ワークス(5AGS車)」に標準装備、「F(5AGS車)」「L」にオプション設定された。

この手の先進安全運転支援技術の進歩は著しいので、安全性を重視するなら「スズキセーフティサポート」装着車がいいだろう。

以上を踏まえて、予算別にオススメの旧型アルトを紹介しよう。

 

手頃な価格の総額50万円以下のオススメ
エネチャージ搭載の「L」

この価格帯でオススメなのは、中核グレードとなる「L」だ。

総額50万円以下の物件の3割以上を占め最も台数が多いグレードだから、欲しい色や装備などで選びやすい。

原稿執筆時点で約80台見つかり、その半数以上が修復歴なし・走行距離5万km未満だ。

Lは1つ下のグレードFに対して、エネチャージが備わるので燃費が良いのが最大の違い。Lが37.0km/Lに対して、Fは27.2km/Lとなる(いずれもデビュー時のJC08モード燃費)。

一方で装備面では大きな差はなく、ともにマニュアルエアコンになる他、Lには前席シートヒーターが付く程度。もしオートエアコンが欲しいなら、ノンターボ車で最上級となる「X」だが、そもそもX自体の台数が少なく、この価格帯でも10台ほどしかみつからなかった。

なお、衝突被害軽減ブレーキの備わるLレーダーレーザーサポート装着車も、50万円以下で狙えるが、素の「L」と比べて台数が少ない。

となると、やはりこの価格帯でのオススメは走行距離5万km以下の「L」となる。

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スズキ アルト(旧型)×総額50万円以下×走行距離5万km以下×「660 L」×全国
 

平均価格前後の総額50万~80万円のオススメ
安全装備満載の「Lスズキセーフティサポート装着車」

予算を総額格80万円まで上げられるなら、オススメは「Lスズキセーフティサポート装着車」だ。

50万~80万円の価格帯でも引き続き素の「L」の方が台数は多いが、それでも50台以上見つかった。そのほとんどが修復歴なし・走行距離5万km未満だ。

レーダーレーザーサポート装着車ではなく、その進化版といえるスズキセーフティサポート装着車が魅力なのは、衝突被害軽減ブレーキの他に後退時も衝突被害軽減ブレーキが利くことだ。

他にも車線逸脱警報機能、ハイ/ロービーム自動切替機能、オートライトシステム機能といった安全装備が備わる。

ちなみに、Lレーダーレーザーサポート装着車はLスズキセーフティサポート装着車より圧倒的に台数が少ない。より安全で、走行距離が少なくて良コンディションの中古車も選びやすいのだから、イチオシだ。

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スズキ アルト(旧型)×総額50万~80万円以下×走行距離5万km以下×「660 Lスズキセーフティサポート装着車」×全国
 

長く乗る前提の総額100万円以下のオススメ
快適性に加え動力性能も高い「ターボRS」

スズキ アルト(旧型)▲ターボRSはターボエンジンにパドルシフト付きの5速AGSが組み合わされ、足回りなどに専用チューニングが施されたモデル

総額100万円以上の旧型アルトはかなり少ないため、この価格帯なら旧型アルトのほとんどの中古車が狙える。

だから基本的には好きなグレードを選び放題なのだが、その中でもオススメは「ターボRS」

スペシャルモデルの「ワークス」を除くと、デビュー時最も価格の高かったモデルだ。

ターボだから動力性能に余裕があるだけでなく、衝突被害軽減ブレーキが標準装備されていし、さらにオートエアコンも備わるので快適性も高いのだ。

この価格帯での原稿執筆時点での台数は約40台と決して多くはないが、積極的に探してみる価値のある1台ではないだろうか。

なお、同価格帯で最も台数が多いのは「Lスズキセーフティサポート装着車」だが、ボリュームゾーンは50万~80万円の価格帯。同車を狙うなら、上記のとおり80万円までの価格帯を中心に探した方がいいだろう。

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スズキ アルト(旧型)×総額80万~100万円以下×「660 ターボRS」×全国

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スズキアルト(旧型)×全国
文/ぴえいる、写真/スズキ、篠原晃一

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。