フォルクスワーゲン ザ・ビートル ▲ニュービートル、ザ・ビートルの成功は世界中にリバイバル・ブームを巻き起こした

フォルクスワーゲン ニュービートル/ザ・ビートルの中古車は今

第2次世界大戦勃発前、かのフェルディナント・ポルシェによって設計され、戦後、世界中の国で愛されたフォルクスワーゲン タイプⅠ。

“ビートル”、日本では“カブトムシ”という愛称でも親しまれた特徴的なルックスを現代の技術で再現したのが、フォルクスワーゲン ニュービートルと、その後継モデルであるザ・ビートルだ。

エンジンをキャビン後部に搭載し、後輪を駆動していたタイプⅠとは構造こそ全く違うが、大きく円弧を描くルーフライン、同じく円弧で構成される前後のフェンダーなどは、まさにタイプⅠをほうふつとさせる。

ニュービートル、その後のザ・ビートルともに大ヒットとなり、欧州パイクカー・ブームの先駆けともなったが、2019年をもって生産が終了し、今では中古車でしか手に入らないモデルとなっている。

生産期間が10年以上と長かったニュービートルは、中古車の流通量が250台以上と豊富で、総額100万円以下で購入できる物件も多い。

そのニュービートルのオープンモデルであるニュービートルカブリオレは、流通量こそ少ないが中古車価格がこなれてきており、お得感が高い。

後継車のザ・ビートルは、復刻版ビートル最後のモデルということで、年式の新しい物件や低走行車はますます価値が高まっている。

オープンモデルであるザ・ビートル・カブリオレは生産期間がさらに短く、流通量も極端に少ないため、理想的な物件が出るまで気長に探すのがいいだろう。

ここではニュービートルとニュービートルカブリオレ、ザ・ビートルとザ・ビートル・カブリオレの特徴、中古車を選ぶ際のポイントや現在の中古車相場について解説していく。

 

ニュービートルの特徴と中古車相場

■ニュービートル DATA
生産期間:1999年9月~2010年12月
中古車流通量:約260台
中古車価格帯:10万~140万円
 

フォルクスワーゲン ニュービートル ▲フォルクスワーゲン・タイプⅠのデザインを現代的にアレンジして登場したニュービートル

■ニュービートルの特徴
1998年に製造開始、日本には1999年から導入されたニュービートル。

外観はタイプⅠをモチーフとしたものだったが、エンジンは一般的なコンパクトカー同様、前方に横置きされ、前輪を駆動する設計となった。

ベースとなったのは4代目ゴルフのプラットフォームだ。“ビートル”らしいフォルムを実現するため後部座席のヘッドスペースなどは犠牲となったが、平凡なパッケージが多くなっていた小型車界において、その潔さが高く評価された。

搭載されたエンジンは2L 水冷直列4気筒シングルカム・ガソリンのみ、トランスミッションは4速ATのみで、グレードもベーシックな「ニュービートル」と、レザーインテリアやチルト機構付き電動サンルーフ、アルミホイールなどが標準装備される「ニュービートル プラス」の2種類のみだった。

だが、人気とともにバリエーションが拡充されていき、2001年には3.2L V型6気筒ガソリンエンジンと、6速トランスミッション、90mmワイド化されたボディなどを備える本格派のスポーツモデル「RSi」を世界限定250台として投入。

さらに、2003~2005年には1.8L ターボモデルがレギュラーグレードに仲間入りした。2004年には1.6L 直列4気筒ガソリンエンジンを搭載するエントリーモデル「EZ」を追加、「プラス」が廃止されたが、2005年に再びレザーインテリアなどを装備するトップグレード「LZ」がグレード追加されている。

2008年に追加された「ヴィンテージ」は、ブラック or シルバーのボディカラーとボルドーレッドの内装を組み合わせ、クラシカルなイメージとした個性的なグレードである。

フォルクスワーゲン ニュービートル ▲前後シンメトリーのようにも見えるユニークな外観。リアウインドウが円弧を描いているため後席の頭上空間は狭め

ニュービートルのモデルライフにおいて、最も大きな変更があったのは2005年9月のマイナーチェンジだ。

ホイールアーチラインが強調され、フロントバンパーのエアインテークを3分割に変更。ヘッドライトやテールランプも形状が変更されるなど、外観が大きく変わった。また、内装においてもリアシートが分割可倒式となり、利便性が向上している。この時期を境に前期型、後期型と呼ぶのが一般的だ。

2008年3月のマイナーチェンジも注目すべきところで、トランスミッションが4速ATからティプトロニック付き6速ATに変更された。

なお、2009年9月から生産終了までのモデルではエントリーモデルの「EZ」と、豪華版の「LZ」というシンプルなグレード構成となっていた。

フォルクスワーゲン ニュービートル ▲外観だけでなくインテリアも個性的だ。タイプⅠの装備で特徴的だった一輪挿しも再現された

■ニュービートルの中古車相場
新車時の車両本体価格は、スポーツモデルの「RSi」を除くと239万~325万円ほどだったニュービートルだが、現在の中古車平均価格は40万円強というお買い得な水準になっている。

マイナーチェンジ前後で見てみると、2005年9月以前の前期型は全体の3分の1ほどで、流通量が多いのは後期型の方だ。

年式別では、ビッグマイナーチェンジ直後の2006年式がボリュームの多いゾーン。基本設計はゴルフと共通ゆえに信頼性は高いが、最終年式であっても生産からすでに10年以上経過しているため、多少のトラブルは覚悟したいところ。購入予算には、その後の整備費用も見越しておこう。

オススメしたいのは、2008年3月以降のATが6速化されたモデルだ。走りの洗練度がそれ以前の仕様とは全く違う。

グレードではレザーインテリアの「ヴィンテージ」や「LZ」が魅力的だが、一方でレザーは経年変化しやすい材質でもある。ニュービートルは明るい塗色が多いだけに外板の色あせも気になるので、できるだけ丁寧に乗られていた物件を見つけよう。
 

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ニュービートルカブリオレの特徴と中古車相場

■ニュービートルカブリオレ DATA
生産期間:2003年6月~2010年12月
中古車流通量:約40台
中古車価格帯:40万~170万円

フォルクスワーゲン ニュービートルカブリオレ ▲西海岸の風を感じさせるニュービートルカブリオレ。このクラスで5人乗りのオープン仕様は希少だ

■ニュービートルカブリオレの特徴
本家タイプⅠの明るく開放的なイメージを決定づけたのは、カブリオレ(コンバーチブル)の影響が少なくなかった。そのスタイルをニュービートルで再現すべく2003年に登場したのが、ニュービートルカブリオレだ。

ニュービートルの特徴的なデザインはそのままに、わずか13秒で開閉可能な電動ソフトトップを装備。高い防水性と断熱、防音効果のある3層構造のトップ、熱線入りでクリアな視界を実現するガラス製リアウインドウが採用された。

エンジンはニュービートルと共通の2L 直列4気筒だが、トランスミッションは2003年のデビュー時からティプトロニック付き6速ATを搭載(ニュービートルでは2008年からの採用)。

さらに、ヒーター内蔵レザーシートを標準装備するなど、高級グレードとしての性格も与えられていた。

また、衝撃を感知するとリアシート背面から2本のアルミ製ロールオーバーバーが0.25秒で出現する機構を採用するなど、安全性についても抜かりない。

デビュー翌年の2004年にはファブリックシートを採用する「ベースグレード」を追加設定。2005年9月にはベースモデルのニュービートル同様、バンパーやヘッドライトなどのデザインが変更されている。

フォルクスワーゲン ニュービートル・カブリオレ ▲電動ソフトトップを閉じたときのスタイルも美しい。静粛性や気密性の高さも自慢

■ニュービートルカブリオレの中古車相場
中古車平均価格は74.2万円と、通常グレードより30万円ほど高くなっているが、新車当時の価格差よりずっと小さい(2003年時点で、ニュービートルの新車価格が239万円、カブリオレ・ベースグレードが333万円)。

カブリオレであることの価値に加えて、装備内容の差を考えてもかなりオトクと言えるだろう。

もっとも流通量は少なく、流通台数は50台に満たない。

おおむね走行距離は5万~8万kmといったところ。総額80万円以下でも見つけることができるが、走行距離は10万kmに近いものになってしまう。

そのため、もしも状態の良い物件が見つかったなら、即決することをオススメしたい。ただ、こちらもハードトップのニュービートル同様に年式がたっているため、ソフトトップの修理や交換費用などは予算に入れておいた方が賢明だろう。
 

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ザ・ビートルの特徴と中古車相場

■ザ・ビートル DATA
生産期間:2012年4月~2019年7月
中古車流通量:約580台
中古車価格帯:50万~430万円

フォルクスワーゲン ザ・ビートル ▲ザ・ビートルでは外観に丸味を残しつつもスポーツカーのようなシルエットに変化。1.2L ターボエンジン搭載で走りもスポーティだ

■ザ・ビートルの特徴
フォルクスワーゲン タイプⅠのデザインを現代的にアレンジしたモデルの第2弾。

車名は「ニュービートル」から「ザ・ビートル」へと改名された。プラットフォームもジェッタと共通のものへと格上げされ、初代に対して全長は140mm、全幅は80mm拡大。

一方で、全高は初代より抑えられ、ロー&ワイドなフォルムとなっているのが特徴だ。「ニュービートル」はかわいらしいルックスが印象的だったが、「ザ・ビートル」のデザインは先代同様に円弧を基調としながら、精悍さをより強調したものへと変わった。

外観だけでなく、走りの性能でも評価してもらえる車にしようという、フォルクスワーゲンの思想が見て取れる。

搭載するエンジンは1.2L 直列4気筒SOHCインタークーラー付きターボ・ガソリンへとダウンサイジング。ただし、最大トルクやアクセルレスポンスは先代の2L NA(自然吸気)ガソリンエンジンを大きく上回っている。

トランスミッションには新たに7速DSGが採用され、スムーズでスポーティな走りを実現。さらに、燃費も17.6km/Lと大きく向上している。

フォルクスワーゲン ザ・ビートル ▲質感の高いインパネ。一部グレードでは内装色がボディ同色となるなど、インテリアのバリエーションも豊富だった(写真は海外仕様)

2012年から2019年というモデルライフの中で、多種多様な特別仕様車が登場したのもザ・ビートルにおける特徴のひとつだ。

ギターメーカーのフェンダーとコラボしたモデルをはじめ、バレンタインをテーマに内外装を彩った「チョコ」「ミルク」「ビター」、スポーツタイプの「レーサー」、クラシカルな雰囲気の「スペシャル・バグ」など、いずれも個性的な特別仕様車ばかりだった。

ベースグレードはその分シンプルで、デビュー当初は「デザイン」と「デザインレザーパッケージ」の2種のみだった。

その後、2013年に2L 直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ・ガソリンエンジンを搭載する「ターボ」(2016年に「2.0 Rライン」へと改名)が、2015年にはシンプル装備の「ベース」が、2016年に1.4L 直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ・ガソリンエンジンの「Rライン」が追加されている。

ボディカラーの追加、変更、車内AV機器のリニューアルなどはイヤーモデルごとに随時行われたが、最も大きなマイナーチェンジとなったのは2016年9月だ。前後バンパーデザインが変更され、よりスポーティな外観へと変わっている。

また、インテリアにおいても新デザインが採用された他、「デザイン」では一部内装色がボディ同色となった。

さらに安全面も改良され、新たにドライバー疲労検知システム「Fatigue Detection System」を全車に標準装備。「ブラインドスポットディテクション(後方死角検知機能)」や「リアトラフィックアラート(後退時警告・衝突軽減ブレーキ機能)」が追加装備(「Rライン」に標準、「ベース」、「デザイン」にオプション)されている。

フォルクスワーゲン ザ・ビートル ▲ザ・ビートルの精悍なフォルムには、リアスポイラーがよく似合う。後期モデルではさらにスポーティな印象へと変わった

■ザ・ビートルの中古車相場
ザ・ビートル全体での中古車平均価格は約185万円。2012年デビューのモデルであることを考えると若干高めに感じるが、これはモデル後期の物件が多めで、しかもそれらが新車に近い価格帯にあるためだ。

総額100万円以下の物件も見つけることはできるが、走行距離10万km前後の多走行車が中心になる。

コンディションと価格のバランスがいいのは、総額120万~150万円のゾーン。走行距離5万km前後の物件の選択肢が豊富だ。

ザ・ビートルはグレードこそシンプルだったが、搭載されたエンジンは3種類あり、装備内容、新車価格もグレードによって大きく異なっていたため、どのモデルを選ぶかによって予算は大きく変わる。

1.2Lモデルでもパワーに不足は感じないが、より積極的に走りを楽しみたい、かつ燃費は抑えたいという人にオススメなのは1.4Lモデルの「Rライン」だ。燃費の良さは18.3km/Lとザ・ビートル随一。それでいてアクセルレスポンスは小気味よく、日本の道路事情にもよく合っている。

生産が終了していて後継となるモデルが存在しないことから、低走行や高年式であることを重視するなら、それらの選択肢がある今のうちに動くのが得策だろう。

走行距離1万km以下の低走行車は、1割に満たない約30台。270万~300万円が最低価格帯となっている。

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ザ・ビートル・カブリオレの特徴と中古車相場

■ザ・ビートル・カブリオレ DATA
生産期間:2013年3月~2016年9月
中古車流通量:約10台
中古車価格帯:190万~380万円

フォルクスワーゲン ザ・ビートル・カブリオレ ▲電動ソフトトップの開閉速度や快適性は、ザ・ビートルになってさらに進化。幌色がカラードとなる特別仕様車もあった

■ザ・ビートル・カブリオレの特徴
ハードトップのザ・ビートル発売から約1年後に、オープンモデルである、ザ・ビートル・カブリオレは誕生した。

電動ソフトトップの性能はさらに進化し、約10秒での開閉が可能になり、素材も6層構造となって静粛性、防水性、断熱性ともにアップしている。

さらに、走行中でも50km/h以内であれば開閉可能に。キセノンヘッドライト、ナビゲーションなども装備され、先代同様に高級グレードとしての位置付けとなっている。

パワートレインは1.2L 直列4気筒SOHCインタークーラー付きターボ・ガソリン&7速DSGで、ザ・ビートルと共通。

日本で販売されたのは2016年9月までとごく短い期間だったが、「50’S」「60’S」「70’S」「エクスクルーシブ」などの特別仕様車も用意された。

フォルクスワーゲン ザ・ビートル・カブリオレ ▲衝撃を感知すると飛び出すロールバーを採用するなど、安全性にも十分に配慮された

■ザ・ビートル・カブリオレの中古車相場
販売期間が3年半ほどと短かったこともあり、流通量は20台弱と極端に少ない。安いものでは総額250万円ほどから探すことができるが、高いものでは新車時とほとんど変わらない価格のものもある。

台数が少ないと、相場が形成されにくい。希望に近いコンディション、装備内容、ボディカラーの物件が見つかるまで気長に待ち、見つけたら即アクションという作戦がが吉だろう。
 

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※記事内の情報は2021年6月21日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/フォルクスワーゲン
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。