Q.イモビライザー装着車だから購入したのに盗まれた。
   セールスポイントにした店に責任はないの?

販売店の「イモビライザーが付いている車は盗難されにくい」とのうたい文句が決め手になって購入を決意しました。が、購入後たった半年で盗難の被害に…。これって、販売店が言った装備が役に立たなかったってことですよね? 販売店に対して損害賠償はできないのでしょうか!?

A.他車と比べての優位性をセールスポイントにすることに
 問題はありません。

まずはイモビライザーとはなにかを簡単に説明しておきます。イモビライザーとは『鍵側に設定されたIDコードと車側のIDコードが一致しなければ、エンジンが始動しない盗難防止装置』です。以前は、イモビライザーが装着されている車の盗難に関しては保険会社に『オーナーが鍵を貸した』などと判断され、保険金が下りないケースもありました。それくらい、盗難するのが困難な装置であるということです。

さて、今回のご相談にある「販売店への損害賠償請求」ですが、あくまで商品の優位性をセールスポイントにしているだけなので、現実的には難しいでしょう。

ただし、絶対に盗まれないという断定的な表現をした場合(消費者契約法違反)は、裁判をすればある程度は損害を賠償してもらうことは可能かもしれません。また、盗まれたケースなどを伝えず、絶対に盗難されない車と思いこませた(不実告知による誤認)というような悪質なケースも同様です。しかし、現実的には盗難保険に加入しておいて、そこで補償してもらうほうがいいでしょう。

ちなみに、冒頭では保険金が下りないケースもあると書きましたが、以前は盗まれないことを前提に「支払いをする必要がない」という判決が多かったのは事実です。しかし、最近では「レッカー車で車両ごと持ち去った可能性は捨てきれない」といった判断から、保険金の支払いを認める判決も出ています。

実際、イモビライザー装着車でも、プロの窃盗団にレッカー車で持ち去られたり、ちょっとコンビニなどに寄るときに、鍵をつけっぱなしにしてしまい盗まれるなどのケースも見られます。イモビライザーは比較的盗難されづらいといった認識をもっておきつつも、たとえ装着車でも、ハンドルロックや盗難防止装置などを装着して、普段から盗難に備えておくことが大切です。
第62回:イモビライザーを装着している車を購入したのに盗まれた!!|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

消費者契約法(しょうひしゃけいやくほう)
消費者と事業者の間で結ぶすべての契約が対象。一定の場合に消費者に契約の取消権を与え、消費者の利益を守ろうとする法律
不利益事実の不告知(ふりえきじじつのふこくち)
事業者が消費者にとって利益となる旨を告げ、デメリットとなる部分を故意に消費者に説明しないこと。それによって誤認して結んだ契約は取り消すことができる