Q.購入をせかすセールストークは問題じゃないの?

「今日買わないと売れちゃう」「ほかにも欲しいという人がいる」などのセールストークってありますよね。僕もある販売店でそれを言われたのですが、実際のところその車はいつまでたっても売れる気配がありません。嘘をついてまであおって購入させようとするのは問題ではないのでしょうか?

A.事実にないことを理由に購入を急がせると問題です

「今日買わないと売れちゃう」「ほかにも欲しいという人がいる」というのが全くの嘘で、事実でないにもかかわらずセールストークの材料にしているなら問題でしょう。例えば「人気がある」程度なら一般的なセールストークの範疇だと思われますが、「3日前から検討中のお客様がいるが、まだ返事がない。もう3日もたつので、今日契約してくれるならその客には売ったと答える」など具体的に嘘をついた場合はNGということです。

ただし、損害賠償の請求などの話になると、それが嘘だと証明する必要があります。これは簡単なことではありません。例えば、その車を検討している客が本当にいるかどうかを調べなければなりませんが、一般的にそれを調べるなんてほぼ不可能な話です。また今日買わないと売れるといっても、たまたま売れなかったと言われればどうしようもありません。しかも、もしせかされて車を買ったとしても、車自体に欠陥などがなければ、損害は発生していないことになります。損害がなければ不法行為などに基づく損害賠償は請求できません

ただし、早く売りたい理由が「修復歴があるなどのわけあり車」で、それを隠したまま、ほかに欲しいという人がいるとあおったり、価格の安さだけを伝えるなどした場合は話は別です。この場合は、「不利益事実の不告知」となり「消費者契約法」に違反します

今回の相談のような、客の都合を無視して契約を急がせる店に限らず、中古車を購入する際には販売店に言われるがままにするのではなく、自分の目で確認して、納得をした上で契約書に印を押す必要があります。どんなセールストークがあったとしても、最終的に決断をするのは自分だということを忘れずに
第81回:購入を煽るセールストークは違法じゃないの!?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

消費者契約法(しょうひしゃけいやくほう)
消費者と事業者の間で結ぶすべての契約が対象。消費者に契約の取消権を与え、消費者の利益を守ろうとする法律

不利益事実の不告知(ふりえきじじつのふこくち)
事業者が消費者にとって利益となる旨を告げ、デメリットとなる部分を故意に消費者に説明しないこと。その誤認にもとづいた契約は取り消すことができる