エコドライブ

1991年にデビューし、1996年まで製造販売された軽オープンスポーツカー、ホンダ ビート。

同時期に発売されたマツダ AZ-1、スズキ カプチーノと頭文字を合わせ、「平成のABCトリオ」とも呼ばれるビートは、バブル期生まれならではの趣味性の高さから、愛車にしてドライブを楽しみたいと思わせるモデルです。

とはいえ、今からおよそ30年前の車。しかも、高回転型のスポーティカーということで、物件選びはちょっと難しそう。

そこで千葉県白井市のビート専門店「オートクラブ」の中村店長に、ビート選びのポイントを教えてもらいました。
 

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ホンダ ビート(初代)×全国
 

ホンダ ビートとは?

まずは改めて、ビートがどんな車かという概要を、ご自身もビートを愛車にする中村店長のコメントとともにおさらいしていきましょう。

かわいいスタイリングのビートは、軽自動車として初となるエンジンをシート後方に置くミッドシップエンジンレイアウトを採用。搭載される直列3気筒SOHCエンジンはトゥデイやアクティにも搭載される汎用エンジンですが、これをベースにF1マシンばりの1気筒ごとにスロットルバルブを設けてエンジンレスポンスを高める「MTREC」システムを搭載するなど、専用部品でチューンナップされています。
 

エコドライブ

加えて特筆すべきは、「平成のABCトリオ」の中でも唯一ターボではなく、アクセルレスポンスの良さで秀でる自然吸気(NA)ということ。「NAで軽自動車の自主規制枠いっぱいの64馬力を発生するのはビートだけ」と中村店長も胸を張ります。

組み合わせられるトランスミッションは5MTだけで、運転にはMT免許が必須。そのシフトストロークは、ビートの前年にデビューしたスーパースポーツ、NSXと同じ40mmに設定され、小気味よいシフトが可能です。
 

エコドライブ

「いたるところでNSXの軽自動車版を作りたかったんだろうなというのは感じますね。ルームミラーがNSXと共通なのも、開発者がどうしてもNSXと同じ部品を使いたかったからだという逸話もあります」

センタートンネルを左にオフセットして、助手席の幅をやや狭めることで運転席の広さを確保し、ゼブラ柄のシートやオートバイ風のメーターまわりなどインテリアもユニークです。

一体感のあるドライブフィールできびきびとした身のこなしを楽しむための運動性能と、見るだけで楽しい気分になれるルックスを兼ね備えた、まさに「ミッドシップ・アミューズメント」というキャッチコピーどおりの1台です。
 

 

購入時チェックポイント1:タイミングベルトの交換時期

―ビートの弱点というか、チェックすべきポイントを教えていただけますか。

中村店長 もう30年を超える車ですから、ビートに限ったことではないんですが、タイミングベルト交換は当たり前にやらなきゃいけないですね。

―タイミングベルトは一般的に10万kmが交換目安といわれますよね。

中村店長 メンテナンス次第ではありますが、早いと5万~6万kmくらいで切れちゃう個体もありますから確認した方がいいと思います。

 

エコドライブ▲直近のタイミングベルト交換記録を確認しておきたい

―タイミングベルトの交換にかかる費用は?

中村店長 純正品を使ってだいたい10万円前後ですね。

―まだ純正パーツの供給があるんですか?

中村店長 まだ純正品があるんですよ。しかも、純正のベルトは途中から強化されてるようです。中古でしか手に入らない部品もありますが、部品取り車もあるので当面困ることはないと思います。

―これほど趣味性の高い車なのに約3万4000台の生産台数を誇るだけありますね。トゥデイにもMTRECエンジン搭載モデルがありましたしね。

中村店長 それがびっくりなんですけど、互換性が少ないんです。デスビ(ディストリビューター)の形状も全く違います。

―今どきの車にはなくなった、そのデスビも弱点だという噂も聞きますが?

中村店長 はい、実はビートのデスビは、初期ロットがサービスキャンペーン対象だったんでが、放熱効率の悪さもあってか通常のデスビ搭載車よりも弱い印象があります。熱ということでいうと、ECUっていうエンジンを制御するコンピューターもそうです。助手席の後ろのエンジン隔壁にじかに付いてるもんですから、熱の影響などでコンデンサーから液漏れを起こすんです。
 

エコドライブ▲軽規格のミッドシップレイアウトのため、エンジンルームのスペースが少ない

―なるほど。サイズに制約の多い軽規格のミッドシップならではの悩みですね。不具合が出た場合の費用はどれくらいでしょうか?

中村店長 デスビは5万~6万円、ECUは液漏れの状態にもよりますが3~5万円くらいでしょう。うちではレンタル用のECUを用意しているので、エンジンチェックランプがついて持ち込まれたお客様にはその場でレンタル品に交換してお帰りいただいて、お預かりしたECUを修理して、出来上がったらまた元に戻すようにしています。

―そんなことができるんですね!

中村店長 さすがにこういう対応は専門店だからできることだろうと思います。

―レブリミット8500回転という高回転型エンジンならではの注意点はありますか?

中村店長 ピストンリング等が摩耗してオイル食いを始めるビートは多いです。これはなかなか見極めが難しいですけど、オイルメンテナンスがされている個体はその症状が出にくい傾向があるように思います。

―オイル交換の目安はどれくらいが適切なんでしょう?

中村店長 うちでは3000kmもしくは半年のどちらか早い方を推奨しています。ただ、オイル食いの症状があるかどうかは1000~2000km走ってみないとわからないです。
 

 

購入時チェックポイント2:シャシーやボディのサビ

―先ほど部品供給については、純正品も含めて心配ないということでしたが、経年劣化が避けられない幌の流通もありますか?

中村店長 幌も純正品があります。2024年3月末現在だと、部品代は幌だけなら3万6500円、リアのスクリーンも入ったセットで5万7600円です。新車時から1000円しか値上げしてないんですよ。ウェザーストリップもあるのである程度雨漏りにも対応できます。

―それはすごい。

中村店長 オープンカーならではということでは、ボディ剛性を上げるためにサイドシルの中のフレームが二重構造になってるんですが、そこの水抜きが砂ぼこりなどで詰まって、内側からサビて腐るということがあります。私は自分の車はあえて水抜きの穴を大きくして、洗車時にそこからホースで水入れて砂ぼこりを洗い流しちゃいます。

―荒療治ですね(笑)。

中村店長 まあサイドシルのサビはよくあります。30年も前の車ですから、完璧を求めてもしょうがないですけど、知らずに買ってしまうのはよくないと思います。
 

エコドライブ▲こちらがサビの出やすい部分

―そうですね。きちんとチェックして納得したうえで購入を決めた方が幸せですね。

中村店長 失敗したと思いながらイヤイヤ乗ったって意味がないですから。

 

 

購入時チェックポイント3:エアコンランプの不点灯はラジエーターファン不動の合図

中村店長 あと、購入時だけでなく、ビート購入後も注意してチェックしていただきたいポイントがエアコン搭載車にあります。

―エアコンがある車に限ってのリスクですか?

中村店長 はい。コンプレッサーの中のフィールドコイルが劣化して、ある日ヒューズが飛ぶんです。

―となると、エアコンが効かなくなっちゃいますね。

中村店長 それだけならいいんですけど、その回路はラジエータファンと共有化されてるんです。

―それだと、ラジエーターファンが回わらなくなってオーバーヒートしちゃうじゃないですか!

中村店長 でも、ヒューズが切れてるかどうか簡単に確認する方法があるんです。インパネのエアコンの吹き出し口を選ぶとグリーンのランプがつくようになってるんですが、ヒューズが飛ぶとそのランプが消えるんです。

 

エコドライブ▲ヒューズが飛ぶと緑に光るエアコンのランプが点灯しない

―そんな確認の仕方があるんですね。もし走行中に消えてしまったらたら?

中村店長 予備のヒューズに差し替えて、エアコンをオフにして走ってくれば大丈夫です。うちでは納車時に、エアコンを使うときはその緑のランプに注意するようにお伝えしていますし、エアコンとラジエターファンを別回路にするキットを販売してる業者さんもあるようです。

―そんなキットもあるんですね! 購入時だけでなく、納車後にも気を付けておきたいポイントまで詳しい解説ありがとうございました。
 

▼検索条件

ホンダ ビート(初代)×全国
文/竹井あきら、写真/篠原晃一、ホンダ
竹井あきら

ライター

竹井あきら

自動車専門誌『NAVI』編集記者を経て独立。雑誌や広告などの編集・執筆・企画を手がける。プジョー 306カブリオレを手放してから次期愛車を物色しつつ、近年は1馬力(乗馬)に夢中。

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