▲車を手放せば節約につながる。それが生活の変化に見合うかどうかが判断のポイント ▲車を手放せば節約につながる。それが生活の変化に見合うかどうかが判断のポイント

後悔しない車の手放し方をガイド

もし車を手放したら、生活はどう変わるのだろうか? どのくらいの節約になる? 車を手放すメリットやデメリットを考えるとともに、最もオトクに手放す方法や手続きを明らかにする。

車を手放すかどうかは、金銭面と生活の質を比べて判断する

車は便利で楽しい道具だ。しかし、当然それなりのコストもかかる。車を手放した後の生活がどう変わるか、代わりに得られるメリットがデメリットに見合うか検証してみる。


■車を手放すメリット

・節約になる

車を手放す最大のメリットは、やはり節約。経済的な理由で車を手放す人は、少なくないだろう。

車を維持し利用するためには、車両の購入代だけでなく税金や保険、燃料代、車検代など様々なコストがかかる。普段、それらを支払っているだけによく分かっているだろうが、実際のコストを知るために改めて見直してみる。

下は、車の年間維持費を「軽自動車」「コンパクトカー」「セダン」の3タイプごとに計算した一例。車両本体価格は頭金なし、ボーナス払いなしの48回払いで支払い、地方都市で暮らしている場合を想定して計算した。ローンの利息については簡略化するため考慮していない。

▲燃料代は年間走行距離5,000km・ガソリン単価135円/Lで想定。任意保険料は「車対車のみ・31歳・本人家族のみ・30歳以上限定」で算定している▲燃料代は年間走行距離5,000km・ガソリン単価135円/Lで想定。任意保険料は「車対車のみ・31歳・本人家族のみ・30歳以上限定」で算定している

上記の表では、車両代の分割払いは48回払いとし、一年間12回分の支払い額に設定。ホンダ フィットなどのコンパクトカーでも年間30万円近い出費となる。これだけの金額が浮くなら、家計も大きく助かるだろう。

ただし、これはあくまで試算。走行距離によって燃料代も任意保険の料率も変わるし、任意保険もオプションを加えればさらに高額になる。故障が発生すれば整備代もかかるので、実際はもっと高コストな可能性が高い。それでも改めて見ると、なかなかの出費だろう。

▲燃料代は維持費の中でもかなりの割合を占める。カーシェアだと利用料金に燃料代も含まれているのが魅力だ▲燃料代は維持費の中でもかなりの割合を占める。カーシェアだと利用料金に燃料代も含まれているのが魅力だ

これらの費用も、車を手放せば当然かからなくなる。代わり公共交通機関を利用する費用がかかるだろうが、車のコストよりは圧倒的に少ないはずだ。金額が浮いた分だけ家計の助けになるし、趣味などに使えるお金増えるだろう。

ただ、車を手放した後でも、車を使いたいシーンはあるかもしれない。その場合、流行りのカーシェアを利用するのはどうか? 週に1回6時間利用する場合で試算してみると……。

▲タイムズ・カープラスの料金でシミュレート。1回6時間までのパック利用なら走行距離料金はかからない。利用料金には燃料費も含まれている。▲タイムズ・カープラスの料金でシミュレート。1回6時間までのパック利用なら走行距離料金はかからない。利用料金には燃料費も含まれている。

車両本体代はもちろん、税金や保険代、燃料代などもかからないのがカーシェアの利点だが、年間だと約20万円のコストがかかる。これは、ローンの支払い分を除いた軽自動車の維持費よりも高い。さらに週に2回(6時間×2回=12時間)利用した場合、コンパクトカーやセダンの維持費より高くつく。

つまり、金銭面が理由で車を手放すなら、カーシェアやレンタカーの利用頻度を抑えなければ意味がないのだ。それが難しいなら、今乗っている車が壊れて走れなくなるまで使い倒す方が経済的かもしれない。

・事故のリスクを減らせる
自動車に乗れば事故を起こすリスクがつきまとう。交通事故総合分析センターおよび警察庁によると、2018年は3,532人が交通事故で命を落としている。これは電車や船、飛行機での事故と比べるとかなり多い数字だ。そうしたリスクから解放されるのもメリットの1つだろう。

・移動時間を有効に使えるようになる
電車やバスなら移動時間に勉強したり、休んだりすることも可能。テレワークできる環境なら仕事もできる。自分で車を運転する時には、できない芸当だ。

・歩くことが増えて健康になる
自家用車の代わりに電車やバスを使えば、徒歩で移動する機会も増えることだろう。日常的に体を動かすことは健康的だ。

■車を手放すデメリット
・移動に時間がかかる

生活圏によるが、都心部を除くと移動にかかる時間は車よりも「公共機関+徒歩の方」が長くなりやすい。時間をコストとして捉えると大きなマイナスだ。

・人や荷物を運べない
子供や家族の送迎、家具など大きな荷物の運搬には、やっぱり車があると便利。前述のように、頻繁にカーシェアやレンタカーを利用するようなら、車を手放しても節約できない。

▲大自然の中でのキャンプなど、車があるからこそ体験できる世界があるのも確かだ▲大自然の中でのキャンプなど、車があるからこそ体験できる世界があるのも確かだ

・カーシェアやレンタカーを借りる手間がかかる
カーシェアやレンタカーを手軽に利用できる環境が整っているのは、都市部での話。地方ではまだまだステーションが少なく、そこまで移動するのにも時間がかかる。

・荷物の置き場所が減る
燃費や防犯面を考えると好ましくないが、車内を荷物の置き場所として利用している人は少なくないだろう。車を手放す時には、そうした荷物をどうするかも考えなくてはならない。

車を手放すのにベストなタイミング

手放すと決めたなら、オトクなタイミングがいつなのか気になるところだろう。

次の車購入を前提とせず、レンタカーやカーシェアも使わずに済む場合、一刻も早く手放すのが最もオトク。時間が経つほど車の価値は下がり続け、税金や保険料の還付分も減っているからだ。

車を頻繁に使う生活を送っているなら「○年先まで」と期限を決めて手放した方が損をしないケースもある。手放すキッカケとなりそうな出来事ごとに、いつ売るのが経済的か検証してみよう。

・車検は受ける前! 修理はする前が鉄則
車検や修理など費用がかかるタイミングは、その前に手放すのが原則。実際に支払う車検費用や修理費の方は高額で、車の売却額を上回ることがほとんどだ。

さらに「車検が残っている間は、もったいないから車を持っておこう」という判断もNG。月極の駐車場代、税金、保険料などは乗らなくても持っているだけで発生し続ける。

▲高額な修理代がかかりそうなら…修理前に買い替えを検討するのも一案▲高額な修理代がかかりそうなら…修理前に買い替えを検討するのも一案

・「需要期前を狙え」は本当?
3月は車が一年の中で最も売れる時期。「車を売るならその時期を狙え……」とよく言われるが、実際にはタイミングを待つことでロスする価値の方が大きい。売ろうと思った時期が、たまたま3月直前だったならラッキー程度に考えておこう。

・ローンの支払いがまだ残っていたら?
ローンが残っていても、所有権が自分にあれば車を売ること自体は可能。残債の返済に売却金額を充てて早く返してしまった方が、結果的にはトクだ。所有権が信販会社や販売店になっている場合も、交渉次第で残債分の一括返済を条件に所有権を解除してもらえる。いずれにしてもローンの完済を待たずに早いタイミングで売った方が最終的な出費を抑えられる。

車を手放す時の手段

車を手放す手段は「売る」「廃車にする」の二通りが考えられる。だが、事故車や故障車でも専門の買取店が存在するので、売却先を限定しなければ、ほぼ間違いなく売れる。もし買い取り金額ゼロでも、廃車費用を払って処分してもらうよりはマシ。つまり相当な理由がない限り、売った方が良い。

そして車を売るなら「一括査定」がオススメ。これはインターネットで申込みすると複数の買取専門業者に同時に査定依頼を申し込めるサービスだ。複数の買取店から売却先を選べるため、最初から一社に絞るより高く売れる可能性が高い。

他に個人売買やオークション代行業者を使う選択肢もある。ただ、前述のように時間が経つほど車の価値は下がってしまうため、いつ売れるか分からない個人売買やオークション代行を損するリスクがある。

車を手放す時の手続き

一括査定で買取店に売ることを前提に、車を手放す時の手順をまとめてみた。以下の5STEPだ。

■STEP1 一括査定を依頼する
一括査定サイトから査定を依頼。直後にメールや電話で複数の買取店から連絡がある。一社ずつ出張査定日を決定。多くの場合は査定当日に買い取り金額を提示してくれる。一社ずつ対応するのが手間なら、査定日を同日同時刻にまとめるのもアリ。その場合、買取店にバッティングすることを事前に伝えておくこと。

▲カーセンサーの一括査定なら連絡希望手段や連絡希望時間帯を伝えることも可能。ただ、あくまで希望であり、絶対ではないことに注意▲カーセンサーの一括査定なら連絡希望手段や連絡希望時間帯を伝えることも可能。ただ、あくまで希望であり、絶対ではないことに注意。

■STEP2 売却先を決める
どの買取店に売却するか決める。金額だけでなく、契約条件も納得できる店舗を選ぼう。ちなみに、買取店が車を廃車(抹消登録)する場合、処分後に自動車税の還付金(3月までの残り月数に応じた返金)が発生する。査定額に還付分が含まれているのか、後日直接還付されるのか確認しておこう。

■STEP3 売却の手続きをする
売却契約するための手続きを行う。必要な書類は後述。

■STEP4 車を引き渡す
買取店に車と必要書類を引き渡す。

■STEP5 入金を確認する
見積書通りの金額が振り込まれているか確認。任意保険の契約解除手続きを行うことも忘れずに。自賠責の名義変更は買取店が行ってくれる。

手放す時に必要な書類

車を手放す時の必要書類は、買い替えの時と同じ。書類は普通自動車と軽自動車で異なる。

■所有者が用意するもの

・自動車検査証(車検証)

手放す時に限らず、車両運行時には携行することが義務づけられている書類。
多くの人はグローブボックスなど車内に保管しているだろう。車検証に記載されている内容と氏名や住所が正しいかがチェックポイント。自動車検査証と印鑑登録証明書の住所が異なる場合は、以下も必要となる。

・住所変更が一度あった場合:住民票
(法人の場合は登記簿謄本)

・住所変更を複数回経た場合:戸籍の附票または住民票の除票

・結婚などで姓が変わっている場合:戸籍謄本
(履歴事項全部証明書)


紛失してしまった場合、管轄する陸運支局で理由書と手数料納付書、第3号様式という申請書(陸運支局にOCR用紙がある)を提出すれば即日再発行できる。委任状を書けば代行してもらうことも可能。

・印鑑登録証明書(軽自動車は不要)
市区町村(法人の場合は法務局)が発行する実印の登録証書。普通自動車を売却する際に必要となる。有効期限は発行日から3ヵ月以内。買取店が抹消登録する際に2通必要になるため、売却時も2通の提出が求められる。

・自賠責保険証明書
強制保険とも呼ばれる自賠責保険の加入証明書。期限が切れていると次の車検を受けられない。書類自体がなくても名義変更は可能だし、次の所有者が新たに加入すれば済む話だが、売却時には提出を求められることが多い。紛失した場合、加入した保険会社に申請すれば再発行できる。

また、廃車にする場合は、保険会社に連絡することで残り期間分が還付される。買取店に売る場合、引き継がれる分の費用は次の所有者から回収され、売却額に上乗せして計上されるケースが多い。廃車時の還付金も同様。個人売買の場合には自分で保険会社に連絡し、名義変更の手続きが必要だ。

・自動車納税証明書
自動車税を収めたことを証明する書類。納付書と一体になっており、納付すると収納印が押されて証明書のみ手元に残る(ネットバンキングで支払った場合は例外)。自動車税が未納だと次の所有者が車検を受けられないため、車の売却も認められないことが多い。売却時には、最新の納税証明書が必要。

紛失しても納税されていれば名義変更、車検を受けられるので、売却先に相談してみよう。証明書が必要な場合には、普通自動車は自動車税事務所で、軽自動車は市区町村役場で即日再発行できる。

・実印 (軽自動車は認印可)
市区町村で登録した「実印」が普通自動車の売却には必要。買取店が用紙を用意する委任状や譲渡証明書、自賠責保険の名義変更に必要な書類などに捺印する。軽自動車の場合、認印でもOKだがスタンプ印は不可。

・振込口座情報
お金を買取店などに振り込んでもらう際に金融機関名、支店名、口座番号、口座名義が必要となる。

・リサイクル券
自動車リサイクル料金が支払われていることを証明する書類。紛失したら再発行できないが「リサイクル料金検索」から「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷することで代用可能。

■自動車買取店に用紙があり、記入するもの
・譲渡証明書(普通自動車のみ)
・自動車検査証記入申請書(軽自動車のみ)
・委任状


上記のうち、わざわざ取り寄せる必要があるのは、普通自動車を売る際の「印鑑登録証明書」のみ(住所や姓の変更があった場合を除く)。他は既に持っているはず。売却する段階で探すのは手間なので、普段から管理しておくべし。

▲必要書類は紛失していても再発行や代用が可能だが、なくさないように管理する子が大事だ▲必要書類は紛失していても再発行や代用が可能だが、なくさないように管理する子が大事だ

手放すと決めたらスピーディに売却すべし

車を手放すと、ライフスタイルがガラッと替わることも。車がない生活が自分に合っているか事前に確認しておくこと。そして売却すると決めたなら、車を売る手段や手続きをきちんと把握し、スピーディに対応することが重要だ。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、Adobe Stock