▲車検が切れていても車は問題なく売却できる。売却前に車検を通しておく必要はない ▲車検が切れていても車は問題なく売却できる。売却前に車検を通しておく必要はない

車検切れでも売れる!

「車検が切れた車は安くしか買い取ってもらえない?」とウワサされることもあるが、それらは全てウソ。車検が切れていても問題なく売ることができるし、車検が切れていても損になることはない。その理由と、車検切れの車を売却する際のポイントを解説していこう。

車検が切れている車を売却する場合はそのままでOK

前提として、査定は「車検が残ってない状態」を基準としている。だから車検が切れていても車は売却できるし、車検の残り期間が長いほど査定額は高くなるが、査定で“不利”になることはないのだ。

そして売却したい車の車検が切れていても、わざわざ車検を受ける必要はない。測定・検査手数料や法定費用など車検には大きな費用がかかる。車検が残っていることによるプラス査定額では、それを補えないからだ。

JAAI(日本自動車査定協会)では、以下のように査定基準を定めている。プラスされる金額は期間の長さだけでなく車種によっても異なる。

▲車検の残期間による基準加点点数はクラスごとに分かれる。1点=1,000円であり、クラスIの車で12ヵ月車検が残っている場合は20点=2万円の査定アップとなる▲車検の残期間による基準加点点数はクラスごとに分かれる。1点=1,000円であり、クラスIの車で12ヵ月車検が残っている場合は20点=2万円の査定アップとなる

例を挙げるとクラスIV(コンパクトカー)で車検が24ヵ月残っているなら4万4000円がプラス査定の目安となる。

これは車検にかかる検査手数料、手続き代行費用などだけでなく、重量税の残期間分も含まれた金額だ。なお、自賠責保険料の残期間分については、別途反映される。

一方、このクラスで車検を通す場合、重量税が2万4600円(24ヵ月・1000~1500kg・13年未満)、自賠責保険2万5830円(24ヵ月)、印紙代1,200円と法定費用分だけで5万1630円。

さらに検査手数料(1万円程度)、24ヵ月定期点検整備料(2万円強)その他部品交換代などもかかり、少なくとも10万円程度は必要となるだろう。

このように売却直前に車検を通すと、かけたコストが全く回収できない。

JAAIが定めた加算額は基準にすぎないが、車検の残期間が長いことで大幅な査定アップとなったり、逆に車検が切れているから大幅な査定ダウンとなることはまずないのだ。

車検切れの車を売るときの注意点

車検が切れていると、当然ながら公道を走ることができない。車検で切れている状態で公道を走ると道路運送車両法の「無車検運転」にあたる。

6点の違反点数、一発免許停止、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる。もちろん、ごく短い距離でもNGだ。

だから車検切れの車を売る場合、必然的に出張査定になる。ほとんどの買取店は出張査定無料なので、ここまでは問題ないだろう(なおディーラーに下取ってもらう場合、査定は有料。出張費も別途かかることが多い)。

では売却した後、買取店に引き取ってもらうには、どうしたら良いのか? その場合も心配無用。

買取店は車検が切れていても一時的に移動するためのディーラーナンバーで自走、もしくは積載車で移動できるからだ。

▲車検切れ車の引き取りは積載車を使う場合がほとんど。費用は売却額から差し引かれるが、多くは2万円程度だ▲車検切れ車の引き取りは積載車を使う場合がほとんど。費用は売却額から差し引かれるが、多くは2万円程度だ

ただ「売却額から陸送代が差し引かれるのがもったいない」というなら、自身で買取店まで自走しよう。

その場合はちょっとした手間が必要で、所轄の市区町村役場か、その出張所で仮ナンバーを借りなければならない。費用は750円程度。下記の書類を持参すれば、即時貸し出してくれる。

・印鑑(認印可。スタンプ印は不可)
・自賠責保険証明書
・自動車検査証(切れていてもOK)や自動車検査証返納証明書など、自動車の確認書類をいずれか一つ
・本人確認書類(運転免許証など)


注意したいのは、車検切れだと自賠責保険の有効期間も切れていることが多いため、仮ナンバーを借りるのに新たに加入しなければならないこと。

その場合、査定時に「車検は切れているが自賠責保険は有効」であることを買取店に伝えて、査定額に反映してもらおう。

ただし、これも支払った費用全額、査定額がアップするわけではない。仮に陸送代が有料でも、自賠責保険の加入料を考えると数千円の差しかなくなってしまう。引き取りは買取店に頼んだ方が手間が少ないだろう。

長期間放置している車検切れの車でも買い取りがオトク

同じ車検切れでも、長期間放置されていた場合は例外だ。例え塗装や機関の状態が悪くなくても、査定額は下がってしまう。

JAAIでは「長期放置車の減額基準を10%まで」と定めている。ただ、これは通常の査定基準に入らないビンテージカー、希少車などの場合は該当しない。

「それならいっそ廃車にしてしまおうか」と考えるのは早計。廃車にすると売却金が得られないだけでなく、解体費用(1~2万円が目安)+運搬費用(5000~1万円が目安)、さらに業者への手数料も加わり、3万円程度の費用がかかる。

長期放置車でもほとんどの場合は値段がつくので、売る方が確実にオトク。まずは査定に出してみるべきだ。

▲どんな状態の車でも、まずは買い取ってもらえないか査定依頼してみること▲どんな状態の車でも、まずは買い取ってもらえないか査定依頼してみること

車検切れの車を売る時の必要書類

車検切れの車でも、売却時に必要となるものは通常と同じ。特別な書類や手続きは無用だ。ただ、普通自動車と軽自動車で内容が異なるので注意だ。


■所有者が用意するもの

・現所有車の自動車検査証(車検証)

有効期間が切れているはずだが、その状態で問題ない。引っ越しなどで住所が印鑑登録証明書記載の内容と違っている場合、結婚で氏名が変わった場合には、以下の書類も必要となる。

・住所変更が一度あった場合:住民票
(法人の場合は登記簿謄本)

・住所変更を複数回経た場合:戸籍の附票または住民票の除票

・結婚などで姓が変わっている場合:戸籍謄本
(履歴事項全部証明書)


紛失している場合もあるだろう。その場合、管轄する陸運支局で理由書と手数料納付書、第3号様式という申請書(陸運支局にOCR用紙がある)を提出すればOK。

即日再発行できる。委任状を書けば買取店に代行してもらえる。

・印鑑登録証明書(軽自動車は不要)
実印を印影で証明する書類。所轄の市区町村役場(法人の場合は法務局)で発行できる。発行日から3ヵ月以内のみ有効なので、売却時に発行しなければならない。必要となるのは普通自動車の場合のみ。軽自動車は不要だ。

・自賠責保険証明書
車検とともに期限が切れているケースが多いだろうが、その場合は買取店側で新たに加入する。わざわざ期限切れの書類を用意したり、加入したりする必要はない。車検と自賠責保険の加入時期がずれて有効期間が残っている場合は、そのことを買取店に伝えて査定額に反映してもらおう。

有効期限内でも証明書を紛失してしまった場合は、加入した保険会社に申請し、再発行してもらう必要がある。

・自動車納税証明書
名義変更や抹消登録の手続きには不要な書類だが、トラブルを防ぐ目的で売却時に最新の納税証明書提出を求められることが多い。

ちなみに、車検が切れていても抹消登録していなければ自動車税の納税義務は生じ続けている。滞納している場合は、売却前に都道府県税事務所で納付しよう。なお、車検が切れている期間の課税を保留する「自動車税課税保留制度」を導入している都道府県もごく一部あるので確認しておこう。

紛失してしまった場合には、そのことを買取店に伝える。納税されていれば名義変更できるので、ほとんどの場合は問題ないはず。どうしても証明書が必要な場合には、普通自動車は自動車税事務所で、軽自動車は市区町村役場で即日再発行できる。

・実印 (軽自動車は認印可)
委任状や譲渡証明書、自賠責保険の名義変更といった書類に捺印するのに必要。もし紛失してしまった場合は所轄の市区町村で再登録する。その場合、印鑑登録証明書も同時に発行しておこう。軽自動車は認印で問題ないが、スタンプ印は不可だ。

・振込口座情報
金融機関名、支店名、口座番号、口座名義は、買取店などに伝える必要がある。

・リサイクル券
自動車リサイクル料金が支払われていることを証明する書類。車を購入した時に受け取っているはず。売却時には次の所有者に引き継ぎ、売った側はリサイクル料金から資金管理料を差し引いた金額分を受け取れる。

紛失してしまった場合は、「リサイクル料金検索」で「自動車リサイクル料金の預託状況」を調べてみよう。預託状況を印刷することで、リサイクル券の代わりになる。

▲車検が切れていても問題ないが、車検証などの書類がないと車を売却することはできない。その場合は再発行することになる▲車検が切れていても問題ないが、車検証などの書類がないと車を売却することはできない。その場合は再発行することになる

■自動車買取店に用紙があり、記入するもの
・譲渡証明書(普通自動車のみ)
・自動車検査証記入申請書(軽自動車のみ)
・委任状


譲渡証明書や委任状などの用紙は店舗が用意してくれるので、その場で記載、捺印すればOKだ。

車検切れ車両の放置はNG! すみやかに売却を

車検が切れている車でも、売却先の方法は通常と同じ。ディーラーでも下取ってくれるが、オトクに売却したいなら一括査定サイト経由で買取店に売るのが良いだろう。

車検が切れてしまったからといって車を放置しておくと、塗装は傷み、エンジンなどの状態もどんどん悪くなる。車としての価値は下がっていく一方だが、早めに売れば損失を最小限に抑えることが可能だ。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、photoAC、Adobe Stock