走行距離で車の買取額は変わる? 仕組みを知って多走行車を高く売る
2019/03/27
走行距離と買取価格の関係を調べる
車の目的は走ることだが、いざ手放す場面になると走行距離が売却額にどれほどの影響を及ぼすのか気になるところ。走行距離と査定額の秘密を解き明かし、多走行車を高く売る方法を解説する。
実は走行距離にはプラス査定もある
査定額と走行距離の関係を知るには、査定基準を見てみるのが早い。「JAAI」(日本自動車査定協会)では、走行距離による加減点の基準を明確に定めている。
▲使用過程月数ごとに走行距離(千km)の加減率を定めたJAAIの査定基準。グレーのエリアは加率も減率もされない標準走行kmを表している ※出典:JAAI「中古自動車査定基準及び細則」
これはコンパクト~ミドルクラスの普通乗用車に対する「走行距離×使用経過月数別の加減率」を示した表。傷などの評価基準と違い、加減点ではなく加減“率”となっている。
加減額はJAAIが車種と年式、グレードごとに定めた基本価格に、このパーセンテージを掛けた数字で算出される。例えば初度登録から5年(60ヵ月)、走行距離6万kmの場合はその交点にある数字を見ると「-9」とある。基本価格が仮に100万円の車だとすると、減額は100万円×-9%=-9万円となり、100万円-9万円=91万円が査定額のベースになる。
この基準からわかること3つある。一つ目は、「使用月数に応じた割合で連続的に評価が落ちていく」ということ。走行距離○万kmという単位で車の価値が落ちるワケではないので、焦る必要などない。
2つ目は、走行距離単体で評価されるのでなく「使用年数との対比で加減点される」こと。走行距離が長いとマイナス評価されるが、走行距離が短ければ同じくらいの割合でプラス評価される。つまり、年式の割りに走行距離が少なめなら車の価値は高まる。
そして3つ目は「走行距離ごとの加減率は車のカテゴリーによって変わる」ということだ。例えば、クラウンなどビッグセダンクラスの加減率表は以下となる。
▲クラウンなどビッグセダンが該当するクラスの走行距離加減率表。10年10万km時の減率がコンパクトクラスは-9%なのに対して、こちらは-6%もある ※出典:同上
先ほどのコンパクト~ミドルクラスの表と比べると、使用経過月数ごとに設定された標準走行距離が長い。つまり、同じ走行距離、年式でも大きくて高級な車ほど走行距離によるマイナスは少なくなる。「車格が大きいと車の耐久性が高く、長持ちする」と想定したy点数付けなのだろう。
なお、買取店などによる実際の査定現場では、必ずしもこの基準通りに評価されるわけではない。業者によるオートオークションでの落札実績を元に査定されるケースが多い。取引額が低い車では○万km単位で大まかに判定されることもあれば、取引額が大きい車では車種ごとの要素も加味されてシビア査定されることもある。JAAIの基準のように法則的には語れない。
ただ、全般的な傾向は買取店の独自基準もJAAIの査定基準も共通だと思って良い。
中古車の販売価格と走行距離の関係も確認
実際に販売されている中古車の価格と走行距離の関係でも同様のことが言えるだろうか? 中古車相場と買取価格は密接に連動している。そのため、走行距離ごとの相場が分かれば買取価格も同様の傾向があると推測できる。さっそく検証してみよう。
カーセンサーでは「中古車相場」として直近掲載車両の台数分布表を公開している。パソコンでトップ画面から「メーカー車名を選択する」から車種一つだけ選択して中古車を検索。掲載車両一覧に遷移するが、検索パネル上にある「価格相場情報」の欄内の「詳しく見る」をクリックする。
「本体価格と年式」「本体価格と走行距離」「年式と走行距離」と3つのパターンでカーセンサー掲載車両の分布を表示する。この図を使って、走行距離と販売価格の関係を確認する。
まずは前述したトヨタ アクアの「本体価格と走行距離」の分布表(2019年3月19日時点)で見てみる。濃いオレンジ色で塗られているのがボリュームゾーンだが、走行距離が多いほど価格帯と反比例して直線的に下がっていることが分かる。
続いて、より車格の大きいトヨタ エクスクァイアで確認してみる。
アクアよりも掲載台数が少ないのでバラつきが目立つが、走行距離による価格帯の下降はほぼ直線的だ。そして走行距離ごとの価格落ち幅はアクアよりも小さいように見える。「高級車や大型車の方が多走行であっても価値が残る」という傾向は間違っていないようだ。
多走行車で査定が安くなる理由とは?
走行距離が多くても買取価格はガクンと下がらないが、ひとつ例外がある。車は走行距離10万km程度でベルト類やオルタネーターなどエンジン補機類が寿命を迎えることが多く、交換前のタイミングで車を売ると買取価格が一気に下がる。ほとんどの場合、買い取り直後に整備されるため、その費用が査定額から差し引かれてしまうからだ。
売却前に整備すれば多少は加味した値段にしてくれるが、その整備費に見合うことは少ない。さらに言うと、走行距離10万kmを超えて消耗部品未交換となると、査定額に期待できない。つまり、10万km付近での売却は安くなってしまうことが多い。走行距離が7~8万kmを超えて「そろそろ売ろうかな」と思っているなら、早めに売却を決断するのもアリだ。
多走行でも高く売れるケース
「走行距離が増えるほど、買取価格が下がる」というのは一般論でしかない。10万kmを超える多走行車でも売却額100万円を超えるような車種、ケースは実際にたくさんある。
・本格四駆、商用車などタフな作りの車
トヨタ ランドクルーザーやスズキ ジムニーといった本格四駆は悪路走行を前提としたタフな作りであり、ライフサイクルが圧倒的に長い。そのため、多走行や過年式でも高値で買い取りされることが多い。
トヨタ ハイエースなど積載を前提とした貨客兼用商用車も同様だ。国内だけでなく海外でも高い需要があり、買い取り後の販路が広いので、高額査定につながりやすい。
・台数限定販売などの希少車
台数や期間を限定して販売された希少車は、走行距離が多くても高く売れる可能性が高い。台数そのものが少ないため、コンディションが多少悪かったとしても「ぜひ手に入れたい」というファンが存在するからだ。
・年式が新しい、塗装状態が良いなど他の状態が良い車
走行距離はあくまで査定項目のひとつでしかない。「年式が新しい」「装備が充実している」「塗装のコンディションが良い」など、他に好条件があれば高額査定につながるケースがある。
ただ、そうした個々の車の価値は、オーナー自身では判断が難しい。また、買い取り先によっても評価が異なる。まずは一括査定に出して幅広い買取店に査定してもらい、愛車を高く評価してくれる相手を見つけるのが得策だ。
一括査定なら多走行車を高く売れる可能性が!?
実際の中古車売買では時として予想不可能なことが起こる。例えば、本格四駆でも希少車でもない普通の車種で走行距離10万kmを超えているにも関わらず、高値で取り引きされることもまれにある。その車種限定で探している人の依頼で買取店や販売店が条件に見合った車を探している場合などに起こるケースだ。
そうした偶発的なレアケースに出会うには、数多くの買取店に査定してもらい、確率を上げることがポイント。その場合も複数店にまとめて査定依頼できる一括査定は有利と言える。