ローンが残っていても車を買い替え可能! ケースごとの手続きも説明
2019/03/27
残債があっても車を売れる方法を紹介
ローンを払い終えていない車は売却できるのか? 答えは「可能」だ。ただし、クリアしなければいけない条件がいくつかあり、所有者が誰になっているかなどによって対応策は異なる。そのわかりづらい車の売却方法について、一つひとつ解説する。
なお、ローンには個人の信用を元に貸し付ける「消費者信用」と、購入する商品を担保に貸し付ける「販売信用(クレジット)」がある。前者は銀行などの金融機関が、後者はクレジット会社などが提供する融資だが、この記事では便宜上、すべてローンで統一させてもらう。
まずは所有権とローンの種類を確認
ローンが残っていても売却できるが、すぐに売れるケースと、残債を全て返してからでないと売れないケースがある。自分がどちらかを確認するため、まずは車検証で「所有者の氏名又は名称」を確認すること。この欄が自分の名前になっていれば、第一条件クリアとなる。
だが、安心するのはまだ早い。銀行系の「自動車ローン」「オートローン」など融資の使用用途が車に限定されている場合、名義が自分になっていても返済期間中は車を売れない。他人名義の場合と同様、まず完済することが車を売るための条件となる。
「フリーローン」など、使用用途を限定していないタイプのローンなら問題ない。支払っているローンがどちらのタイプか分からない時には、契約条件を記した約款で確認しよう。
調べるのが面倒な場合は、借りた金融機関や信販会社に直接問い合わせてもOK。使用用途が限定されていないタイプだったなら、第二条件もクリア。問題なく車を売れる。
返済方法別に所有権解除の仕方を解説
車検証に書かれた「所有者の氏名又は名称」が自分以外になっている場合は、自分に所有権がなく、名前を記載されている会社などが車を「所有権留保」している。ローンを組んだ人の支払いが滞ったりした場合、車の差し押さえが可能。車を担保に、お金を借りている状態なのだ。
このケースでは、所有権を解除してもらわないと、車を売却できない。そのため、ローンを完済することが絶対条件となる。完済は、現金で一括払いするか、車の売却金額を返済に充てるかで方法が異なる。その手順は、以下の通り。
■残債を現金一括で支払う場合
・貯金から返済する
当然だが、完済してしまえば問題なく車を売れる。ただし契約当初の返済予定と異なる一括返済や繰り上げ返済をする場合、別途手数料を請求されるのが一般的。しかし手数料を払っても、以降に支払うはずだった利息全額より低い金額であるため、一括返済してしまった方がトクだ。
・残債分をフリーローンなどで借り換える
ローン残額分をフリーローンやクレジットカードのキャッシング枠などで借り換え、返済できれば所有権を解除してもらえる。ただ、一般的にフリーローンや借り換えローンは自動車ローンに比べて金利が高い。月々の支払い額が増えてしまうこともあるので、返済計画をよく考えた上で判断しよう。
上記ふたつのうち、どちらかの方法で返せるなら、所有者への所有権解除申請を自分で行える(手順については後述)。
■車の売却金額を返済に充てる場合
・車の売却金を残債に充てることを条件に所有権を解除してもらう
車を売却したお金で残債を支払うことを前提に、所有権を解除してもらえる可能性がある。ただし、個人が信販会社などと交渉して承諾してもらうのは難しい。認められる可能性があるのは、大きな事故を起こして廃車にする場合など特殊なケースのみだ。
そのため、通常は車を買う側である会社に依頼する。買取店などに「残債がある」ことを伝えた上で車を査定してもらい、所有権解除の交渉をしてくれないか相談するのがオススメだ。
大手の買取店では所有権解除の交渉から買い取り、名義変更の手続きまでを一括で請け負う「ローン返済サービス」「完済サービス」などを提供しているところも多い。見積金額が残債を上回っていれば問題ないが、もし残債に満たない場合には残りを現金一括返済することが条件となる。
・残債分を買い替える車のローンに上乗せする
自動車ローンの中には、買い替えを前提として車の売却金を残債に充て、それで足りない分を新しい車のローンに上乗せできるタイプがある。ディーラーに下取りしてもらう際などに、よく使われてきた方法だ。
ただし、2台分のローンを合算で支払うことになるので、月々の支払い額が確実に増える。残債が多いと審査に通らないことも多いが、今の車と次の車の所有者が同じ会社なら所有権を解除しなくても済む。
▲ガリバー「プラスローン」の例。軽自動車は名義変更の申請に必要な自動車検査証記入申請書に認印を捺印する ※出典:ガリバー「買い替え専用・おまとめローン」
ローンが残っている車を売る時の手順
ローン残債がある状態から、車を売るまでの工程をまとめた。現金で一括返済して自分で所有権解除の手続きをする場合と、車の売却金額を返済に充てる「ローン返済サービス」を利用する場合では、流れや用意する書類が違う。それぞれの場合を見ていこう。
【現金で一括返済し、自分で名義変更する場合】
■STEP1 ローン残額を確認する
ローンの支払いが残りいくらあるのかをチェック。銀行や信販会社から届く残高証明書などで確認しておこう。
■STEP2 ローンの完済方法を決める
残債を現金で一括返済するか、車を売却したお金を残債返済に充てるかを決断。このケースでは当然、前者となる。
■STEP3 完済して借り入れ先に完済証明書を発行してもらう
完済すると、借り入れ先から「完済証明書」が発行されるので取り寄せる。自分で借り入れ先に連絡し、対応してもらおう。
■STEP4 所有者に所有権解除を申請する
完済証明書が届いたら所有者に連絡し、必要書類を郵送して所有権解除を申請する。必要書類は会社によって異なるが、概ね以下の通り。
・所有権解除書類交付申込書
書類の名称は会社によって異なる。車の所有者に連絡して用紙を取り寄せ、必要事項を記入。印鑑は実印となる。
・完済証明書
借り入れ先に発行してもらう書類。原本が必要なので、自分用の控えとしてコピーを取っておく。
・車検証(コピー)
原本を送ってしまうと車を移動できないため、コピーでOK。
・自動車納税証明書(コピー)
通知書と一体になっている自動車納税証明書。所有権留保されている車の場合、自動車税の納税通知書は所有者でなく使用者に来ていたはず。こちらもコピーを送る。納税してあれば収納印が押されているはず(ネット振込の場合は収納印なしでOK)。
・印鑑登録証明書
申込書に捺印した実印の証明書。所轄の市区町村役場で発行する。こちらは原本でなくてはNG。発行から3ヵ月以内のものが有効だ。後の売却手続きでも必要になるので2通用意しておこう。
■STEP5 名義変更の手続きを行う
所轄の陸運支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)に行き、以下の書類を提出して名義変更(移転登録)を行う。引っ越しなどで使用者の住所と印鑑登録証明書の住所が異なる場合、他に車庫証明書も必要だ。
陸運支局に用紙があるもの
・申請書(OCRシート1号様式)
・手数料納付書(用紙販売所でもらえる)
自分で用意するもの
・自動車検査証
・旧所有者(金融機関や信販会社など)の譲渡証明書 ※実印を押印
・新旧所有者の印鑑登録証明書 ※発行から3ヵ月以内
・旧所有者の委任状 ※実印を押印
・新所有者(自分)の委任状 ※代理人申請する場合
・新所有者の実印 ※代理人申請する場合
買取店によっては所有権解除の申請から名義変更までを有料で代行してくれるサービスもある。自分ですべて手続きするのは面倒なので、買取店に相談してみるのが良いだろう。
■STEP6 売却先を選んで査定に出す
複数の買取店を回って条件の良いところを探すのが良いだろう。一度の申込みで複数の買取店に査定依頼できる一括査定も便利だ。
■STEP7 必要書類を用意する
売却するのに必要となる書類は通常の流れと一緒で以下の通り。
なお、自動車検査証と印鑑登録証明書の住所が違う場合は、以下も必要になる。
・住所変更が一度あった場合:住民票
・住所変更を複数回経た場合:戸籍の附票または住民票の除票
・ご結婚などで姓が変わっている場合:戸籍謄本
■STEP8 車を引き渡す
必要書類とともに車を買取先に引き渡す。
■STEP9 入金を確認する
車の売却金が残債を上回っている場合は、余ったお金が手元に返ってくる。
【ローン返済サービスを利用する場合】
■STEP1 売却先を選んで査定に出す
ローン返済サービスを行っている買取店を選び、査定を依頼するのがファーストステップ。所有者との交渉など面倒な手続きはすべて買取店で行ってくれる。
■STEP2 必要書類を用意する
ローン返済サービスを利用して売却金を残債返済に充てる場合、通常は所有者である信販会社や販売店から買取店または次の所有者に名義が移転される。今の使用者を経由しないケースが多いので、用意すべき書類は車検証や自賠責保険証明書、自動車納税証明書など少なくて済む。しかし、ケースによって必要書類は異なるので、買取店に詳しく聞いておくこと。
■STEP3 車を引き渡す
車を売却先に引き渡して、作業はほぼ終わり。
■STEP4 入金を確認する
車の売却金が残債を上回っている場合は、余ったお金が手元に返ってくる。
ローンは計画的に返済すべし!
自分で所有権を解除するのは面倒だが、ローン返済サービスを利用すれば手間は通常の売却とほとんど変わらない。月々の支払いが厳しくなってしまった場合などは、ローン完済前に車を売却するのも一案だろう。
残債のある車から新しい車に乗り替える場合、必然的にかなりの金銭的負担となる。「今の車をできるだけ高く買い取ってもらう」「安い車に乗り換える」などの対策を考えてから決断しよう。