▲認可された業者しか利用できないはずのオークションだが、出品を代行してくれる「オークション代行」というサービスがある。そのメリット&デメリットとは? ▲認可された業者しか利用できないはずのオークションだが、出品を代行してくれる「オークション代行」というサービスがある。そのメリット&デメリットとは?

ウワサのオークション代行を調査

誰しも存在は知っていても、詳しくは知らない「オートオークション」。参加できるのは条件を満たした業者のみだが、オークション代行業者を利用することで一般のユーザーも車を出品できるという。

オークションの仕組みを紐解くとともに、オークション代行のメリットやデメリット、利用方法などを明らかにする。

そもそもオートオークションって何?

まずはオートオークションの仕組み。ヤフオクなど個人売買オークションもあって紛らわしいが、ここで解説するのは実際の会場で行われる業者間のオークションだ。

買取店やディーラーなどが仕入れた車は、ほとんどが全国約200ヵ所にあるオートオークションに出品される。オークションに参加できるのは、一定の条件を満たし、審査を経て登録された業者のみ。一般人は参加することはもちろん、競りの様子を見ることもできない。

中古車販売店がユーザーから買い取った車の一部は、オートオークションを経由せずに直接店頭で販売されることもある。ただ、それは店が欲しい車の条件と、買い取った車が合致したケースのみ。現在の中古車販売業では、ほとんどの車をオートオークションから仕入れる。販売業者にとってオートオークションは、欲しい車を手に入れられる「仕入れの場」なのだ。

中古車が販売されるまでの流れをまとめてみよう。まずユーザーが車を買取店に売却。買店店がオートオークションに出品し、会場で所属の検査士が車のコンディションを綿密にチェック。公開された出品票の情報や、実際の車両を見て中古車販売店などが落札し、仕入れた車を店舗で販売する。そうやって、中古車は次のユーザーの元にやってくるのだ。

▲売却した車が中古車店の店頭に並び、次にユーザーに渡るまでには多くの業者が介在する▲売却した車が中古車店の店頭に並び、次にユーザーに渡るまでには多くの業者が介在する

オークション代行の仕組みを解説

中古車は販売されるまでに多くの業者を経由するため、必然的に中間マージンが発生する。車の買い取り価格は、販売価格の7~8割程度が一般的だ。

「だったら買取店やディーラーを省略し、ユーザーが直接オートオークションに出品したら、より高く買い取ってもらえるのでは?」と発想する人もいるだろう。そんなニーズに応えたサービスが、オークション代行だ。

▲オートオークションへの参加資格をもった業者が、ユーザーの車を直接出品。ユーザーは代行業者に手数料を支払う▲オートオークションへの参加資格をもった業者が、ユーザーの車を直接出品。ユーザーは代行業者に手数料を支払う

オークション代行業者が買取店と違うのは「オートオークションに代理出品するだけで、ユーザーの車を引き取らない」点だ。そのため、買取店よりも手間が少なく、個人への売却額支払いは落札金額が充てられるので、大きな資金も必要としない。そうしたハードルの低さもあって、最近ではオークション代行業者が増えてきている。

オークション代行の主なサービス内容は「出品するのに必要なフォームへの入力」「オートオークションに出品するための名義貸し」「落札した業者との連絡」「落札された金額での入金」の4つ。

まず「出品するのに必要なフォームへの入力」。オートオークションに出品するには独特の作法で車両情報を記入する必要があり、未経験の一般人にはできない。そのため、プロが代行するのだ。また、「最低落札価格」や、それ以上の金額になったら自動的に落札される「売り切り価格」の設定も、依頼者の希望を元にプロがアドバイスしてくれる。

「オートオークションに出品するための名義貸し」とは、前述のように個人の名前では出品できないため、登録業者が名前を貸してくれること。オートオークションの運営側としては「登録業者がきちんとした車両チェックなどを行っていればOK」というスタンスらしい。現実的にも登録業者が買い取った場合と判別できない。

「落札した業者との連絡」「落札された金額での入金」については読んで字のごとくだ。個人では落札した業者と直接連絡を取ったり、落札金額をやり取りしたりできないため、必ず代行業者を経由する。

オークション代行の費用はどのくらい?

利用する際の費用は業者によって異なるが、主に以下のような項目となる。

・代行手数料
ユーザーに代わってオートオークションに出品する手数料。金額は業者によって差があるが、概ね3~5万円のところが多い。一律ではなく車種によって異なる業者や、「落札金額の○%」とする業者もある。

・出品料
オートオークション会場に支払う経費を根拠としたもので、1万円前後が相場。

・成約料
無事に落札された時のみ発生する費用で、1万円弱~2万円強が相場。

・陸送費
車をオートオークション会場に運ぶ費用。売却の場合は最寄りのオートオークション会場に出品する場合がほとんどなので、概ね1万円程度。業者までは自分で運ぶのが前提だが、自宅まで引き取りに来てくれるサービスを提供する業者もある。ユーザーがオートオークション会場に車を持ち込む場合には発生しない。

・その他経費
車を綺麗に見せるための洗車、仕上げなどをオプションとして用意している業者も多い。

オークション代行サービスの利用料金はこれらの合計額となるが、実際は業者によって大きく異なる。ほとんどのところは5~10万円で、高めの価格に設定している業者は最低補償金額(後述)を設定するなど安心感を高めて、付加価値をもたせているようだ。オートオークション代行という業態自体が新しいためか、費用もサービス内容も画一化されておらず、会社の規模も様々だ。

オークション代行で車を売るメリット&デメリット

一見するとメリットばかりのように思えるオークション代行。「買取店に売却するよりオトクなのでは……」と思ってしまうが、もちろんデメリットもある。一括査定や買取業者を利用する場合と何が違うのか、メリットとデメリットを見比べてみよう。

■オークション代行のメリット
・高額で売却できる可能性が高まる

オークション代行を利用する最大にして唯一のメリットは、車を高く売れる可能性が高まること。実際、買取店やディーラーでの査定額を上回る落札額となるケースは少なくない。なぜなら出品者である買取店などの利益を踏まえて、落札相場はできているからだ。

一方で買取店に売る場合、買取店の中間マージン分、オークション代行に比べて売却額が低くなりがち。ただ、オークション代行のサイトでは「一括査定より○十万円高く売れました」という事例が載っているが、そこまで金額に差は出ない。中古車売買のプロのみが参加するオークションで、相場を大きく上回る金額(店頭販売価格を超えるほど)で入札されることはまずない。差が出ても、売却額の1~2割アップ程度だろう。

▲オークションに出すとき、事前に売り切り価格の目安を持つと良いだろう▲オークションに出すとき、事前に売り切り価格の目安を持つと良いだろう

■オークション代行のデメリット
・かえって損をしてしまう可能性もある

オークションでは落札が「失敗」するケースがある。当然だが、期待より低い金額で落札されることも。出品者は最低落札金額を指定できるが、高く設定しすぎると落札されずに流れかねない。

また、落札されなくてもオークション代行業者に成約料以外の手数料を支払わなければならない。落札されなかった場合は「再出品」か「車両を引き上げる」ことになる。出品料1万円程度で再出品してくれたり、最低補償金額で買い取ってくれたりする業者も中にはいるが、基本的には再度出品料がかかる。

そして、落札されない確率は意外に高い。オートオークションを運営する大手会社USSのサイトによると、成約率は60%前後。つまり40%近くは流れてしまう。オークションでの落札金額は時の運に左右され、高く売却できる可能性もあれば、低い可能性もある。再出品ともなれば大きな損失につながりかねない。

「いくらで売れるか」のは不安を感じるだろうし、リスクもデカい。自分の車がいくらで売れるのか査定当日に分かる一括査定とは、この点が大きく異なる。

・ローン残債があると利用できない
所有者が信販会社など自分以外でローンが残っている場合、オークション代行を利用できない。オートオークションに出品するには、残債を現金一括返済して所有権解除する必要がある。一方、買取店に売るなら「買い取り価格+補填(買い取り価格が残債額より大きければ必要なし)」で一括返済を条件に所有権解除をしてもらえ、売却できるケースが多い。

・いつ売れるか分からない
一回の出品で落札されたなら問題ないが、流れてしまうと、いつ車を手放せるのかが読めなくなる。買い替える場合は「落札されるまで次の車を買うべきタイミングが読めない」ことに。逆に買い取りなら査定額同様、査定当日に車の引き渡し日が決まる。次の車に乗り替えるまでのスケジュールが組みやすい。

・トラブルも少なくない
オークション代行を提供する企業は小規模な中古車販売店から、比較的大きい会社まで様々。新しいサービスなので成熟しておらず、トラブルも発生しやすい。例えば「オートオークション会場での落札金額と、ユーザーに報告された額面が違っていた」「見積にはなかった追加費用を請求された」といった声を耳にする。

問題なのは、信用できそうな業者を選ぶしかない対策がないこと。しかし、サイトを見ても実績や費用体系が細かく案内されているのは大規模な業者に限られており、判断材料が少ない。

対する車の買い取りは既に業界が成熟し、サービスを提供するのも大きい企業が多い。信用度は店舗次第だが、提携業者を優良企業(JADRI認定業者など)に限定している一括査定サイトもあるので、オークション代行に比べて安心感が高い。

▲いつ現金化できるか定かでないのは、オークションを利用する大きなデメリット▲いつ現金化できるか定かでないのは、オークションを利用する大きなデメリット

一括査定型のインターネット・オークションも登場

ここまで実際のオートオークション会場で行われるオークション代行の話をしてきたが、それとは別にインターネット・オークションを独自に開催するサービスがある。

これは、申込みをすると1回だけ査定を行って出品票を作り、それを提携業者に公開してインターネット上でのオークションを開催するもの。従来の一括査定サービスにあった「複数の買取店に対応するのが面倒」というウィークポイントを解決するサービスだ。

メリットは査定への対応や交渉の手間を省けること。一方で、売却先を自分で選べないのがデメリット。また、売却額も通常の一括査定よりも、業者と直接交渉できないため、若干低めとなる傾向がある。

安心を求めるならオークション代行よりも一括査定

オークション代行は車を高く売れる可能性があることは確か。だが、逆に売却額が低くなってしまう可能性もあり、さらに落札されなければ再出品の費用もかかる。売却時期の予想が立たず、現段階ではトラブルのリスクも否定できない。

「車を高く売りたいが、手間を掛けずに取り引きしたい」という人には、やはり一括査定がオススメだ。

text/田端邦彦