事故車は買い取ってくれる? 事故車の定義と査定額への影響
2019/03/27
事故車を高く、良い条件で買い取ってもらおう
「修復歴なし」の車はカーセンサー掲載台数421,565台のうち381,290台(2019年3月12日現在)。残りの4万台強、全体の約10分の1程度は「修復歴あり」ということ。事故車は決して珍しい存在ではない。
事故歴のある車はどこに売ったらいいのか、査定額はどのくらい下がるのか? そもそも事故歴と修復歴の違いって何? そうした事故車についての疑問を明らかにしてみよう。
適切な売却先を選ぶことが事故車売却のポイント
事故を起こした車を売る時の迷いどころは「どこに売るべきか」だろう。そこで、改めて事故車の処分方法を考えてみる。選択肢は以下の通り。
・一般的な買取店や中古車販売店への売却
実は事故歴のない車と同様、大手の買取店では事故車の売却相談にも応じている。例えば、買取大手であるアップルは「事故車は売却においては不利になる可能性があるものの(中略)まずは査定に出してみることが大切です」、ガリバーでも「修理済みであれば、いつでも査定買取にご利用ください」とサイト内で明言している。
▲アップルやガリバーのような大手買取店でも、自走可能な状態なら買い取りに対応してくれる場合が多い ※出典:アップル「事故車を売りたい! 査定額はどのくらい下がるもの?」
積極的とまでは言えないが、車の状態によっては買い取ってもらえる。一度の申込みで複数業者に査定を依頼できる一括査定でも、多くは「事故歴の有無」「修理済みか未修理か」「走行可能か不可能か」を入力する項目があり、その情報に基づいて買取店がリストアップされる。まずは試してみる価値があるだろう。
・正規ディーラーに下取りに出す
乗り替えを前提とするなら、正規ディーラーに下取りに出すのも選択肢のひとつ。購入と売却の手間が一度で済み、売り先に悩まなくていいのが魅力だ。ただし、一般的にディーラーでは事故車や改造車などの買い取りには慎重な傾向がある。ディーラーの査定額に納得できなかったら、買取店を訪ねたり、一括査定に申し込んだりするのも手だ。
・個人間オークション、オークション代行への出品
個人間のオークションや業者が利用するオートオークションへの代行出品では、事故車に思いのほか高値がつくことがある。しかし売り切り金額や最低落札金額の設定によっては、安く競り落とされてしまったり、誰も落札者がつかず流れてしまったりすることも。また、個人間売買は契約後のトラブルに発展することもあるので、あまりオススメできない。
・事故車専門買取店への売却
買取店の中には、事故車専門の店舗がある。安く修理できる提携工場と、独自の流通ルートを持ち、どんな車でも買い取ることを謳っていることが多い。店によって流通ルートは異なるが多くの場合、買い取った車は抹消登録され、海外に輸出される。通常の査定で買取不可だった事故車なら利用を検討する価値があるだろう。
・廃車専門買取店への売却・廃車依頼
廃車を前提に、事故車や不動車などを扱う業者もいる。通常、廃車にかかる解体費用や手続き代行費用を無料とし、場合によっては買取額をつけてくれることもある。他で断られた時の処分先として検討すべきだろう。
・解体業者への廃車依頼
解体費用、手続き代行費用などを支払って廃車してもらう方法。どうしても売り先が見つからなかった場合の最終手段となる。
上記のように、事故の損傷具合や愛車の状況(修理or未修理)によって、適切な売却先は異なる。どこが最も高値で買い取ってくれるかは、実際に査定してもらわないと分からない。ひとつの選択肢に絞らず、大手買取店と事故車専門の買取店、両方に査定を依頼するなど複数の手段を試してみるべきだ。
どこを損傷したかで事故車の価値は変わる
実は「修復歴あり」になるかどうかは、事故でどこを損傷したかによって決まる。JAAI(日本査定協会)が定める、修復歴ありになる箇所は以下の通りだ。
■修復歴にあたる部位
・クロスメンバー
・サイドメンバー(フレーム)
・インサイドパネル
・ダッシュパネル
・ピラー
・ルーフパネル
・センターフロアパネル
・リアフロアパネル(セダンの場合はトランクフロアパネル)
つまり車の骨格に相当する部位を損傷、もしくは交換済みの場合、修復歴車として扱われて価値が大きく下がる。減額の基準についても、明確に決められている。
上記は乗用車を対象にした図で、修復歴に当たらない外板を交換した場合と、修復歴に当たる骨格を修復した場合の基準を示している。部位ごとに減点数が記されており、フロントパネルなど外板の交換よりも骨格の修復は減点数が多いのがわかる。
減点数はこの表を元に算出される。計算式は下記の通り。
√(基本価格×修理概算額)÷4.8×クラスごとに定められた係数=減点数
修理概算額とは、JAAIが損傷箇所と程度ごとに定めた修理費の目安金額。なかなか複雑な計算式となっている。
そして減点数を1点=1000円で換算すれば、車の減額を計算できる。例えば、車両の基本価格が80万円、修理概算額が65万円(フロントサイドメンバーなどを交換)とする。その場合、√(800 ×650)÷4.8×1.3(コンパクトクラスの係数)で195点=19万5000円となる。これは修理済みの場合だから、未修ならさらに修理費が引かれる。
大きな事故の場合、修復歴に当たる複数箇所を損傷していることが多い。完璧に直しても数十万円は査定額が下がることを覚悟すべきだ。一方、損傷が外板だけで済んだ場合は、修復歴に比べるとマイナス分は少ない。より詳しく知りたいなら、上記の表が掲載されているJAAIの「中古自動車査定基準および細則」 をチェック。試算してみるのも良いだろう。
ただ実際には、必ずしもこの表で一つひとつ査定する訳ではない。オートオークションの実績から近い状態の同車種を見つけ、参考にするケースが多いようだ。
事故車の売却フローを解説
事故の程度によっては、買い取り先を見つけるのに通常より時間がかかるかもしれない。売却までのスケジュールには余裕をもって臨み、少しでも高く買い取ってくれるところを見つけたい。
今回は最も工程が長い「事故後&未修理」のケースを想定して売却フローを記してみた。既に修理済みの場合はSTEP4から始めることになる。
STEP1 工場で修理費見積を出してもらう
事故後は整備工場などで修理費見積を早めに出してもらう。いくらかかるのか分からないと、保険会社や事故相手への請求といった手続きが遅れ、余計な損失になりかねない。この段階では修理はまだ依頼せず、見積を出してもらうのみでOK。
STEP2 他損の場合は念のため減価を査定してもらう
追突など他損事故の場合、自車の修理見積費用を相手に伝える。その際、できればJAAIの「事故減価証明」もあると◎。修復歴車になったことによる車の価値減を補償できないか交渉してみよう。対応してくれるのはレアケースだが、可能性はゼロではない。事故減価証明書はJAAIの支所に査定を依頼することで発行できる(ただし、修復歴車になる場合のみ)。
STEP3 修理するか、そのまま売却するか判断
過失割合による自己負担額が決まったら、修理するかどうかを判断する。自己負担額が高い場合は、修理せずにそのまま売ることを検討すべき。
STEP4 売却手段を決める
買取店や、事故車専門買取店などの中から、損傷の度合いに応じて売却先を選び、複数車に査定してもらう。
STEP5 売却先を選ぶ
査定額が高く、納得できる条件を提示してくれた店舗に売却する。この段階で正式な見積書を出してもらう。
STEP6 必要書類を用意する
売却に必要な書類を用意する。必要書類は以下の通り。
STEP7 車両を引き渡す
必要書類と車両を引き渡す。未修理の場合は積載車やレッカー車で運ばれることになるだろう。多くの場合、車両と必要書類を引き渡した段階で契約成立と見なされる。
STEP8 入金を確認する
見積書どおりの金額が入金されているかを確認する。買取店などの場合は、通常2~5営業日以内だ。
事故車を売る時はスピーディに
事故車の売却はスピード感が大事。車は時間が経てば経つほど価値が落ちる“資産”だ。ただでさえ事故によって値落ちしているのに、時間を空ければ車の価値がさらに下がりかねない。
売却手段を吟味しつつもスムーズに段取りを組むことが、事故車を賢く売るコツだ。