▲買取相場が上がる時期が分かっていれば、そのタイミングを狙うのみ。でも、そんな時期が本当にある? ▲買取相場が上がる時期が分かっていれば、そのタイミングを狙うのみ。でも、そんな時期が本当にある?
 

車を買い替えるのに最適な月ってあるの?

「車を売るなら新生活が始まる直前の3月がオトク」と昔から中古車関係のウェブサイトや雑誌で言われてきた。だが、果たしてそれは本当か? 真偽を検証するとともに、他に高く売れる時期やタイミングはあるのか? について考えたい。

 

3月に売るのが一年で一番オトクか検証

「3月が高く売れる」という説のほとんどは、4月の新生活が始まる前に車を買い替える人が増えること、つまり需要が増えることを論拠にしている。本当に中古車を買い求める人は3月に多いのか、日本自動車販売協会連合会(以下、自販連)が公開する「中古車登録車合計台数」のデータを見てみよう。

出典:日本自動車販売協会連合会「中古車・登録車合計」(2019年3月24日現在)

▲新規登録(一時抹消登録からの復活)、移転登録(名義変更)、変更登録(使用本拠の変更)を行った中古車の台数を月別にまとめた表 ※出典:日本自動車販売協会連合会「中古車・登録車合計」(2019年3月24日現在)

確かに毎年3月は登録数が多い。2018年の月間平均登録台数が31万9790台なのに対し、3月は47万9675台と突出している。3月オトク説の信憑性が高まってきたが、今度は中古車の相場推移を見てみたい。

買取相場の推移をまとめたデータはないので、車種別の販売相場から推測する。買取相場は販売相場と連動しているため、販売相場が推移していれば買取相場も同様の動きをしている可能性が高いからだ。

カーセンサーの一括査定サイトでは、メーカーと車種を入力すると「価格と年式」「価格と走行距離」「年式と走行距離」の3パターンで掲載車両の台数分布が見られる「中古車相場表」を公開している(PCのみ)。

そこから表の右下にある「○○(車種名)の買取情報を見る」をクリック。今度は一定期間内(直近までの約半年間)における当該車種の推移を「価格×台数」「走行距離×台数」「価格×走行距離」という3パターンの折れ線グラフで見られる。

▲トヨタ アクアを例に価格×台数を表したグラフ。オレンジの線が価格の推移で2018年9月18日から2019年3月11日までのデータとなっている▲トヨタ アクアを例に価格×台数を表したグラフ。オレンジの線が価格の推移で2018年9月18日から2019年3月11日までのデータとなっている

このページでランダムにいくつかの車種を入力し、価格の推移を見てみると……3月が特に高くなっているわけではないことが判明。正確には、3月に向けて価格が高くなった車種もあれば同確率で低くなった車種もあり、全体での傾向は見られなかった。

実はこれ、理に適っている。中古車の価格は、そもそも需要だけで決まるわけではない。需要と供給のバランスで決まるのだ。3月は確かに車を買う人が増えるが、同じように売る人も増える。買うだけ、売るだけの人よりも、乗り替える人が圧倒的に多いためだ。

また、3月に登録台数が増えるのは中古車だけでなく新車も同様。3月に登録された新車は車検のタイミングで手放されることが多く、中古車になっても3月に売り買いされる台数が多いのだ。

 

適切な売り先なら3月がトクになる可能性も

3月だけ中古車相場がアップするわけではないことが推測できた。ただ、これは全体的な相場動向の話。個々のケースを考えると話が変わってくる。よく売れる月なのだから買い取る側も仕入れに力を入れ、「一台あたりの利幅を減らしてでも多くの台数を買い取りたい。普段より査定額を高く提示しよう」と思っても不思議ではない。

▲3月は買取店が一年で一番忙しくなる時期。買い取り強化キャンペーンとして、高価買い取りを明言する店舗もある▲3月は買取店が一年で一番忙しくなる時期。買い取り強化キャンペーンとして、高価買い取りを明言する店舗もある

そんな気合いの入った店舗や店員を運良く見つけられれば、普段よりも高く売れる可能性がある。そうなると有効なのが一括査定。一回の申込みで複数の買取店に査定依頼できるから、高額査定を出してくれる店舗に出会える確率も一気に高まる。3月オトク説は一概に「間違っている」とは言えなそうだ。

 

税金の負担は何月に売却しても実は同じ

「でも自動車税の納付書が来るのは4月だから、支払ってから車を売ったらソンでしょ。その前の3月に売るべきでは?」と思う人もいるかもしれない。だが、それは間違い。自動車税を納めた直後に車を売っても、その翌月から来年3月まで月割計算され、税金が元の所有者に戻ってくるのだ。

といっても廃車の場合以外は税務署が還付してくれるわけではない。「買い取る店舗が相当分を買取価格に上乗せする」ルールになっている。複数の買取店で査定額を見比べる際は、車本体の売却額と自動車税の払い戻し分をきちんと確認しておこう。なお、軽自動車は元々の軽自動車税額が少ないため、払い戻しは通常行われない。

ただ、自動車税の月割りは翌月からの計算となるため、月初に売買契約を結ぶと一ヵ月弱分はソンをする。大排気量の車では数千円の違いになるので、そのあたりのタイミングは気にした方が良い。月末に売って月初に買うのが、オトクな買い替えの鉄則だ。

 

車検は受ける前のタイミングが吉

月だけでなく、その他の要素で高く売れるタイミングについても考えてみよう。

例えば車検についてはどうだろうか? 車を手放すきっかけとして車検前を選ぶ人は多いが、これは正解だ。なぜなら、査定額には車検残期間の長さが加味されるが、車検に掛けた費用は回収できないからだ。

逆に買う時は車検がたっぷり残っている車の方がオトクなことは、言うまでもない。売る時と理屈は同じだ。

▲一般的に車検に要する費用は個人が整備工場などに依頼するより、提携工場や自社工場を持つ買取店が依頼した場合の方が安く済む。査定額は、買取店の車検費用を差し引いて計算するため、車検に掛けた費用を回収できないのだ▲一般的に車検に要する費用は個人が整備工場などに依頼するより、提携工場や自社工場を持つ買取店が依頼した場合の方が安く済む。査定額は、買取店の車検費用を差し引いて計算するため、車検に掛けた費用を回収できないのだ
 

キャンペーン期間などを賢く利用すべし

買取店によっては毎月「買取強化車種」を発表し、その車種その月なら高く買い取ってくれる店舗がある。自分の車が強化車種になったタイミングは高く売れるチャンスだ。

また、不定期に開催されるキャンペーンも見逃せない。大手買取店では、抽選で豪華賞品が当たるプレゼントキャンペーンを展開することも多い。査定をお願いする前に、買取各社のWEBサイトはチェックしておこう。

 

高く売れるタイミングは確実にある

オトクに売れるかもしれないタイミングやきっかけをまとめてみよう。

・絶対ではないが、3月に売ればトクする可能性あり
・自動車税の負担は何月に売っても変わらない
・ただし、月初より月末に売った方が少しオトク
・車検は切れる前がオトク。売る直前に通すのはもったいない
・買取強化車種やキャンペーンのタイミングにも注目


クルマを乗り替える頻度は、少なければ少ないほどコスト的には有利。その中で適切な売り時を見つけられれば、オトク度はさらに増すはず。複数買取店への査定依頼をスピーディにできる一括査定を利用すれば、売るべきタイミングを逃さずに済むだろう。

text/田端邦彦
photo/田端邦彦、photoAC