BMW 635CSi

■これから価値が上がる、ネオクラシックカーの魅力に迫る【名車への道】
クラシックカーになる直前の80、90年代の車たちにも、これから価値が上がる車、クラシックカー予備軍は多数存在する。そんな車たちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく企画「名車への道」。

松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。

BMWは乗り手のスキルが問われる 一本筋の通ったモデルが多いよね

――今回の「名車への道」は総集編の第2弾です。BMWをテーマにしたいと思います。

松本 かなり個性派モデルを取り上げてるよね。

――M1と635CSiを名車として、840CiとM5、Z4 Mは名車予備軍として紹介しましたからね。なかなかの顔ぶれです。

松本 そうだね。一番印象に残っているのはやっぱり635CSiかな。

――自分もそうですね。

松本 小学生の頃、新しい6シリーズを雑誌で見たんだよ。正直言ってボディと同色の新しいキドニーグリルが好きになれなくてさ。僕には無縁と思っていたんだよね。

――ずいぶん生意気な子供ですね(笑)

松本 今考えるとそうだよね(笑)。でも日本で開催された国際インターテックのレースで上位を走っている635CSiを見てさ、あんなに大きいのにめちゃくちゃ速いのが印象的だったんだ。で、その後1986年に日本で放映された「こちらブルームーン探偵社」というTVドラマに出ててね。これが格好よかったんだよ。マディという一流モデルが探偵社のオーナーという設定なんだけど、普段の足がゴールドの635CSiなんだ。

――同じクーペの8シリーズもまたエンジン屋のBMWっぽくて僕は好きですね。

松本 高級路線を突き進んだ、男気のあるモデルだよね。最新の8シリーズも確かにカッコイイけど初代の心意気は大変なものだったと思うよ。しかもMTモデルのみの販売だったからね。なんかBMWの勢いみたいなものを感じる車だよ。時代背景が色濃く反映されているよね。
 

BMW 635CSi▲1976年から89年まで製造された6シリーズ(E24型)は、そのスタイリングにより「世界で最も美しいクーペ」と賞賛を受けた傑作車である。635CSiは78年に追加されたハイパフォーマンスモデルで、専用の3.5Lエンジンやエクステリアが与えられ、世界中から高い評価を得た。他にM1と同じエンジンを積んだM635CSiも存在する

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BMW 6シリーズ(E24型) × 全国

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BMW 840Ci▲BMW 840Ci。1990年から99年まで製造されたBMWのフラッグシップGT。まずV12エンジンを積んだ850iを発売し、94年にV8エンジンを搭載した840Ciを追加。最高出力は300psの850iに対し286psとされていた。その後、850iも4ATから6ATを積んだ381psの850Ciに進化する。この8シリーズをベースにしたM8も計画されていた

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BMW 8シリーズ(E31型) × 全国

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――BMWってコンサバティブなイメージですけど、一台一台見ていくと特に古い車は個性的なデザインが多いですしね。

松本 そうだね。初代8シリーズは保守的だったBMWが、デザインにCADを導入して最先端の思想を詰め込まれたモデルなんだよ。フロントは1978年に登場した伝説のスーパーカーBMW M1のデザインを踏襲しているのは有名な話だよね。

――そのM1も探し出して撮影しましたね。

松本 あれは本当に貴重な撮影だったと思うよ。なんたって作られた453台のうち400台近くはモータースポーツに使われたから実質50台程度しかロードゴーイングカーは現存しないんじゃないかな。ジウジアーロのデザインにレーシングシャシーで有名なダラーラのチューブラフレームを使っていた、スゴい車だよ。もうレーシングカーの領域なんだよ、M1は。とても採算が取れるような車じゃないけど、BMWの歴史に名を残したよね。これこそ金額では測れない素晴らしい歴史なんじゃないかな。

BMW M1▲BMW M1。グループ5でポルシェに対抗すべく生み出されたM1。ミッドシップレイアウトの知識がなかったBMWはランボルギーニと共同で開発を進めていたが、頓挫。最終的には組み立てをバウア社、調整はBMWという複雑な工程で作ることに。結果、それが販売価格を上げてしまい、性能は高いものの販売台数を伸ばすことはできなかった

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BMW M1(E26型) × 全国

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――メルセデス・ベンツだとW124とかR129の時代が印象的ですけど、BMWはこの時代の印象が強いですよね?

松本 でも僕は2000年代になってからのBMWも素敵だと思うよ。

――確かにZ4 MやE60のM5は松本さんの強い要望で探した記憶がありますね。

松本 その2台はまさに名車予備軍だよ。特にM5のエンジンはBMWのF1テクノロジーを目いっぱい導入して作られているからね。見た目は乗用車なのに音が最高にいい!

――それが新車時の半額から3分の1で買えるんだから……すごい話ですよね。

松本 本当にそう思うよ。あとはZ4 Mもそうだね。個人的には大好きだよ。往年の名車BMW 507ロードスターのようなクラシカルなフォルムと最新のデザインの融合。他のブランドにはないアプローチだと思うよ。

――そこにMのエンジン載せてるんだから……松本さん好みですよね。

松本 そうだね。Mの6気筒エンジンはとてもレスポンスが良くて、MTに不慣れな人がドライブするととにかくぎくしゃくしちゃうんだよ。しかしそれは車が悪いんじゃない。ドライバーの問題なんだ。

――運転スキルが低い僕には不向きなブランドですよ、ほんとBMWは。

松本 そういう一本筋の通ったブランドだからね。2000年代や2010年代のモデルの中にも「名車予備軍」はまだまだあるから、今後はそれらを探して紹介していきたいよね。

BMW Z4M▲BMW Z4 M。クーペとロードスターが用意されたZ4の最上位モデル。様々なモデルに採用され、名エンジンと称される3.2Lの直6ユニットを搭載し、Z4では唯一のMTモデルの設定となっていた。2006年から09年まで生産され、09年にフルモデルチェンジされるが、進化したZ4の2世代目モデルにはMモデルの設定はなかった

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BMW Z4 Mクーペ(E86型)、BMW Z4 Mロードスター(E85型) × 全国

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BMW M5▲BMW M5。2003年から10年まで製造された5世代目の5シリーズに用意されたMモデル。4代目ではV8だったエンジンを、F1で培われた技術をフィードバックして開発した5LのV10エンジンに進化させ、セダンとは思えない圧倒的な走行性能が与えられた。本国ではツーリングも設定されていたが、日本ではセダンのみの販売

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BMW 5シリーズ(E60型) × 全国

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※カーセンサーEDGE 2020年8月号(2020年6月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています。

文/松本英雄、写真/岡村昌宏